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空白とMAR-Z

マカロニえんぴつの言葉は、私の虚無を埋める

 どうしようもなく無気力になるときがある。何の前触れもなく、朝起きた瞬間からなにもしたくなくてだらだらとベッドで時間を潰す。そうしているとなんだか悲観的になってくる。無音が嫌になってCDをプレイヤーにセットした。マカロニえんぴつの『CHOSYOKU』である。
 
〈生き抜くまで散るなよ “それとなく”を愛せる日まで あらゆる理屈でコジツケてよ〉
「MAR-Z」
 
 この歌詞が、私は大好きだ。まず言葉選びが素敵だと思う。「生きろ」「死ぬな」のような直接的なものではなく、「生き抜くまで散るなよ」というワードセンス。そして「“それとなく”を愛せる日まで」の部分。私はあまり自分のことが好きではなく、なにも特別な部分がないことに苦しさを感じるときもある。きっと私だけではなく多くの人たちが、周りと違う自分や非日常に憧れを抱いたり、理想と違う自分にちょっとガッカリしたりしている。この歌詞の“それとなくを愛せる”という言葉には、価値のみに左右されずありふれた毎日のことも大切にする、というようなニュアンスを感じて少し自分を肯定できる。とても好きな歌詞だ。“生きること”をこんなに肯定してくれる歌に初めて出会った気がする。
 マカロニえんぴつをはじめて聴いたのはつい最近のことだ。私は彼らのバックグラウンドについてまだ多くを知らない。それでもこんなにも心が動かされる。流行りのバンドだから売れているのではなく、純粋に彼らの音楽に惹かれて応援している方が多いのだろう。それは、音大卒と聞いて「なるほど」と何度も頷いてしまうほどの音楽の完成度の高さはもちろんのこと、お洒落できれいな歌詞の中にある等身大の人間らしさに共感し安心するからなのかもしれない。
 同じ曲の歌詞で好きなものがもうひとつある。
 
〈息する真似するなよ 君をまだ終わるなよ〉
「MAR-Z」

 大人になるにつれて、こなすように生きる癖がついてしまった。夢を持つこともなくなったし、あっても「どうせ」という言葉で片付けてしまう。個性や自分らしさにも固執しなくなった。就職活動をしている中で「いつまでも夢を語ってはいけない」と念を押されるうちに、将来に特別な何かを期待しなくなった。こうして様々なことへの貪欲さを欠きながら生活をしてきた私にこの歌詞はひどく鋭利に刺さり、それと同時に背中を押されている気がした。
 「君をまだ終わるなよ」なんて歌われたら、まだまだ自分らしさにしがみついていたくなってしまう。安牌を求めすぎて流されやすくなっていたが、何かに挑んで不安になったり一喜一憂したりすることも必要なのかもしれない。そうしているうちに自然と自分のことを好きになれるかもしれない。的確に私たちの心を動かす言葉を拾い上げて歌にしてくれるマカロニえんぴつが、今この時代に誕生してくれたことを嬉しく思う。

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