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2017年7月13日

タカハシナオキ (19歳)
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それでも、前を向く

The Cheseraseraが僕に教えてくれること

The Cheseraseraというアーティストは、僕らの世界との向き合い方を斜めの角度から少しだけ前に押し出してくれるような、そんなスパイスのような音楽である。
The Cheserasera-2009年に結成された男性3人組バンドは、ライブシーンで常に存在感を放ち続けている。

「ギセイにしたものをどこに隠しても
ああ その顔に書いてあるよ
大切なのは勇気 前を向くこと
乾いた道を蹴った」

東京タワーという名曲の一節である。
彼らは、それがたとえ音楽というある種の作り物の世界の中であっても、現実を美化せず、ありのまま歌詞に落とし込もうとする。
だからこそ、何か世の中に対して諦めのような思いを抱いていて、それでもどこかで光を探してしまう人間の心の一端をとても素直に、だけど否定する事なく包み込んでくれる。
犠牲を払うこと、誰かのためを思うことは、隠していた方がかっこいい。その苦労や、その勲章をぶら下げて生きることほどダサいものはない。でも、ギセイによって遠ざかった理想や夢に、目を背けることはできないのだ。

もしこの歌詞が、後半の「大切なのは勇気〜」しかなかったら、この歌詞は凡庸な大衆歌とかわりない。
彼らは涼しい顔で、
「ギセイにしたものをどこに隠してもああ その顔に書いてあるよ」
と僕たちに諭してくれる。

少し鬱屈した現実をそのまま肯定して、受け入れた上で、少しの光を与えてくれる。
リアリズムとロマンチズムが共存しているような、ある意味不思議な歌詞世界がそこには広がっていて、それこそがThe Cheseraseraの紛れもない魅力なのだと思う。

「さよなら 愛すべき喧騒に
乗る気はないけど悪くもない
皆好きにやればいい」
ファンファーレというこれまた名曲の一節である。

生きていると、いろんな考え方に巡り合う。それをいちいち否定したり、肯定したりしているときりがない。
どこまでいっても自分は自分、あなたはあなたなのだ。結局は「皆好きにやればいい」。
悟ったように、どこか呆れたように、彼らは世界に対して告げる。

彼らの、人生を正面から切り取るのではなく1周半くらいした地点から全てを悟ったように見極め、それでも希望を探してしまう人間の性のようなものが、自分の今と重なって、痛いほど胸に響く。

自分自身、曲がりなりにも歳を重ねて、様々な経験を経て、人並みに周りを見渡せるようになった。すると気づかなくてもいいことに気づくようになった。見えなくてもいいことも見えるようになった。誰かの心に先回りして、寄り添えることもできるようになったけど、周りが見通せるというのは、概して知らなくていいことを知ってしまうことの方が多い。僕は冷めていった。「どうせ」「ほら、やっぱり」と口にすることが多くなった。

でも、見えすぎた現実に目を、耳を塞がれてどうしようもなくなった時、今の僕にはThe Cheseraseraの音楽がある。

「朝の光 救世主は来ない
今日の天気は何? 晴れ間を待っている
すり減らしたソールで爪先立ち
かさつく手に明日の夢を宿して」

月と太陽の日々という曲の一節である。

現実に打ちひしがれるからこそ、見えてくる未来があるのだから、今の君は間違っていないのだと、彼らは音楽を通して、さりげなく、でも確かな熱量で僕たちに教えてくれる。

だから僕は、現実が全てを覆ってしまっても、それでも夢を見る。前を向く。誰のことも否定することも肯定することもなく、凛とただ1人で。
The Cheseraseraの音楽と出会った今の僕は、一味違う。

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