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音楽家:星野源進化論

「恋ダンスの人」から「Gen Hoshino」まで

POP VIRUS ワールドツアー日本公演の1日目に行き、「星野源は確実に変化している」と感じました。そこで、私論「音楽家:星野源進化論」をまとめました。

【1】「恋ダンスの人」時代
2015年にマネージメント事務所を移した星野源は、「YELLOW DANCER」というダンスナンバー満載のアルバムを出して高評価な賞をもらい、翌年始めのツアーも盛況でした。しかしなんと言っても2016年10月に出したシングル「恋」で一躍時の人となりました。モダンなMVにキレッキレのダンス。タイアップしたドラマのエンディング映像には振り付けもついていて、老若男女がパラパラ的なダンスを一心不乱に踊る様子が社会現象となりました。あまりのヒートアップぶりに、次はどんな曲を出すんだろう?と不安と期待が半々になりましたが、メロウな「Family Song」を聴いたとき、動に対する静は、生と死をモチーフに好む彼らしいなぁと安心しました。

【2】「Yellow Music 伝道者」時代
2017年のツアー「Continues」では、現代の様々なカルチャーや、昔から続く音楽の流れと「つながる」ことがテーマでした。星野源自身の中でも、これまでの活動全てと今の音楽はつながっていると話し、ブラックミュージックでも歌謡曲でもない、両者が融合したイエローミュージックを提唱して、つながりながら進んでいこうというメッセージが込もっていました。みんなで踊る恋ダンスもよし、ばらばらに気持ちよく踊るのもよし、という両方を取り込んで新しいダンスミュージックを作っていこうという意欲がありました。

【3】「おげんさん」時代
2017年にはNHKで冠番組「おげんさんといっしょ」が放送されます。Family Song のMVがモチーフとなったセットで、星野源は「おげんさん」(女性…の衣装)という設定です。内容は一応音楽番組。おげんさんを始め登場する人は全員のんびりとマイペースで過ごし、大好きな音楽を紹介したり、おしゃべりしたりコメントしたり、目玉はスタジオでの生演奏。超豪華メンバーからなるいつものバンドは、全員制服着用でキッチンにぎゅうぎゅう詰めで、それでもはしゃいでいるという無茶振り。MCのネズミは歌うますぎるし。このゆるくて不思議な音楽番組は大好評で、続けて2018年,2019年と3回制作されています。とにかくリラックスして自分の好きな音楽をみんなとゆるっと楽しもうよ、と言う人はいたけれど、ここまで徹底的に具現化してNHKで全国生放送しちゃった人は彼が初めてです、間違いなく。

【4】「星野源」時代
いくつかの大型タイアップや待ちに待ったアルバム「POP VIRUS」で、日本中の誰もがその音楽と名前を知るようになった「星野源」。5大ドームツアーを即完大入り満員で行いました。これまでの過剰とも呼べるエンターテイメント精神の頂点に君臨していた「ニセ明」さん(星野源の一人二役;アンコールに登場)が、ついに星野源と分離してその設定を覆します。これはきっと何かに対する決別宣言の象徴だったのだと今ではわかります。

【5】「Gen Hoshino」時代
2019年には、全曲ストリーミング配信解禁、インスタグラムのアーチストアカウントの開設と、それまで保留にされていたことが始まります。配信シングル「Same Thing」は、これまでなかったコラボレーションによる楽曲でした。初のワールドツアーの開催も決まります。もちろん日本公演もあって、昨年と同じように、マーク・ロンソンとのダブルヘッドライナーです。海外公演はオペレーションなどで海外仕様ではなかった部分もあったと聞きますがおおむね盛況で、英語でMCもしたという意欲的なものだったようです。

そして、ツアー半ばの日本公演の1日目に行ってきました。マーク・ロンソンは、DJセットにストリングスを加えた新しい試みで、ボーカルを招いたり、自らピアノパートを奏でたり、録音+生の新しい形のライブを見せてくれました。いろんなジャンルからの選曲も、どれも人々が快適になって踊り出したくなるリズムを持っていて、まるで音楽が最もまぶしかった80年代のダンスフロアを現代の音楽で見事に再現してみせたような華やかさでした。たくさんの人が気持ちよさそうに踊っていました。後半の星野源のパフォーマンスも濃密で力強かった。昔の曲をやっても、歌の表現力が格段にきめ細かくなっていて、あぁそういう解釈の曲だったんだという新しい発見がありました。たぶん英語と歌の練習をがんばっているんだろうなとわかりました。ワールドツアーと聞いたときから、彼は「世界のGen Hoshino」に向けて進んでいくんだろうと思っていたのでそれは納得しました。

じゃ、あの、「Same Thing」はなんなんだろう。

その違和感を全身で浴びながら(シングアロングは笑ってごまかしました)ふと、彼は外の世界を見ているんじゃなくて、こちらの私たちに対してメッセージを送っているんだ、とひらめきました。クソみたいなことにはクソと言おうぜ、そして素晴らしいものを素晴らしいと讃えようよ、というような正直なメッセージ。活動を拡大して大人の事情その他で辛かったこともたくさんあったと思う。彼はこれまでいろんなことを乗り越えてきた。いろいろあったけどここで一区切りつけて、自分のタガを緩めてなんでも受け入れてみよう。そしてまた素晴らしいものだけを両手にいっぱい抱えて、それをみんなと共有したいんだ、というような気持ち。彼が見ているのは、この会場に来た人、来られなかった人、これから出会う人、全ての「みんな」なんだ。

おなじみの豪華すぎるハウスバンドは相変わらず絶好調で、ガチなパーカッション対決に加え、長岡さんのギターは鳴きまくるし、ハマくんのMCはいつもよりキレッキレだし、あぁ上手に他の人に任せて楽しむことができるようになったんだな、って頼もしく思いました。時間短め、つなぎ映像なし、ニセさんなしのシンプルで直球なライブでしたが、その分音楽って楽しい!というバイブスが濃密に伝わってきて、これからの星野源も楽しみだなってうれしくなりました。これからも素敵な音楽をたくさん集めて腕いっぱいに抱えて私たちに紹介してください、いつでも、どんな形でも、待っています。

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