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天使なんかじゃなくて

フジロック2017で小沢健二をみたときのこと

印象深いライブがいくつかある。
人によってはアイドルだったり、演歌歌手だったり。はたまたクラシックコンサートだという人までいたりする。音楽やってる人よりライブの方が多いだろうし、どれに行くべきかで僕は一喜一憂する。結果何にも行けなかったりするが。

印象深いライブとは何だろうか。自分のバックグラウンド、シチュエーション、セットリスト、に加えてアーティストの熱量、調子、サプライズ。面白いのが、こういうライブは自身のみならず、他者も揃えて口にするところだろう。

2017年、フジロックに行った。あの時何でか僕はムシャクシャしていた。学生の時に2回行った苗場が、急に恋しくなってしまったのだ。もち豚くいてえし、新潟の地酒浴びるほど飲みてえ。

あの年のフジロックは、ゴリラズやQOTSAが来る来ないや来たぞと、話題が沢山あったが、一番注目を浴びた人は洋楽ではなく邦楽のある方だった。
ある方とは、90年代の渋谷系を引っ張り、お茶の間から王子様と呼ばれ、さっさと表舞台から消えた人。
平成生まれでは凄さがあんまりわからない人。それが小沢健二。
ブギー・バックくらいしかみんな知らない。けれども大人は騒いでいる。
当たり前だ。2016年にいきなりライブ活動(しかも半分近く未発表の新曲)を再開して、年が明けたら突然シングル発表。音楽番組に出たと思いきや、サプライズでフジロック出演と勝手に発表する。
大人たちがどんどん盛り上がり、若者は知らん顔。

僕は2016年に彼のライブを目撃した。
何かあんまり知らないけど、貴重らしいから行っとくかと、大した気持ちも抱かず、Zeppなんばへ行った。

「私たちは、彼を理解しきっていない」と、開演前にどこからか聞こえてきた。そんなライブあまりない。というか、ステージは幕張ってるし、オーディエンスは小洒落た紳士淑女ばかり。
小沢健二とは、想像力を膨らませる天才で、聞き手のそれもどんどんと向上させる、不思議なアーティストであることが、あのライブで分かった。とても楽しかった。
特に、最後の「日常に帰ろう」の一言。どの曲よりも、最後の一言が印象深かったのが面白い。小沢健二は言葉の人である。
そんな彼がフジロックに出る。絶対に観たい。観てやると決めた。

そうしたら、Corneliusも出演が決まり、もう騒ぎがてんやわんやと、大変なことになるぞ。人の数も含めて。

話は本題のフジロック2017に移る。

土曜日。
雨が降っていた。夕方、私ははしゃぎすぎて憔悴しきっていた。グリーンステージでCorneliusを待つ。後ろでは小沢健二目当ての人が列をなしてホワイトステージへ向かっている。
とんでもない人、人、人!
確かにめちゃくちゃ観たい。ブギー・バックやるって話だし、絶対にスチャダラパーもゲスト参加する。でも、人が多すぎるし、最早まともに観られまい。意を決して向かったとしても入場規制でステージに入れず、エイフェックス・ツインもLCDも見られない。
僕は選択を強いられていた。
小沢健二を諦めてエイフェックス・ツインか、タイミングを見計らいLCDか。
あるいは、深夜のピラミッドガーデンで行われる小沢健二第2部か。

僕は深夜のピラミッドガーデンまで待つことにした。理由は、天使たちのシーンをそこでやると彼が予告していたからだ。あと、もしかしたら朗読もあるかもしれないと思った。

ヘッドライナーを諦めるのは辛かったけど、あの年のフジロックは、小沢健二を観なければならない気がしたのだ。

ピラミッドガーデン に着くと、誰もいなかった。だって今まさに、ホワイトでは僕が待つ人の第1部が行われているし、何よりあと約4時間、どう時間を潰そうか。
とりあえず寒い。雨に打たれすぎて、震えが止まらない。近くの店で焼酎のお湯割を買い、ちびちび飲む。雨の勢いは強くなり、焼酎なのか水なのかわからない液体を無心に飲みながら待った。体力はとっくに限界を迎えていた。
そして腹痛。寒すぎてお腹が冷えたのだ。その頃にはもうピラミッドガーデンは人で埋め尽くされていて、抜け出せない状況だった。
もうこれはフェスではない。自分を追い込む場だ。
死ぬかと思った。実際かなり意識が朦朧として、よくわからなかった。
小沢健二が出てきた時、何の感情も抱けなかった。それより早くこの苦行を!
最初に何を言ったような気がするが、覚えていない。とりあえず、一曲目がはじまると同時に、意識がハッキリした。

天使たちのシーン

彼はインディアンみたいなメイクをして、この生きる美しさを説いた曲を歌う。先程も述べたが、小沢健二は言葉の人である。
言葉の人は、ビジュアル云々抜きに、言葉のみで世界を作れる。谷川俊太郎然り、糸井重里然り。
もっとわかりやすく言うなら、あそこに居た全員が圧倒されていたはずだ。何の仕掛けもない歌の力に。
すっかり目が覚めた。と、同時に幻覚を見ている感覚に陥った。あの時僕は、小沢健二を神様のようだと感じた。
神様が天使たちの歌を歌っている。
なんだか変だな、と思った。
 
 

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