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与えられた居場所を疑った先にたどりついた景色

BUMP OF CHICKENと一緒に見たオーロラ

BUMP OF CHICKENの楽曲に救われたことは数あれど、このときほど、「この曲がそばにいてくれてよかった」と思ったことはなかった。

ある朝、スマートフォンを開いたら社長から「債務超過に陥っているので経営を株主にお願いすることにしました」というメッセージが届いていた。

どういうこと?と疑問に思いながら、オフィスを引き払い、会社名義のサービスを解約し、入社予定だった内定者に事情を説明した。経営を行ってくれることになった株主は「泥舟だから逃げたほうが良いかもしれない」と語った。来年の4月に入ってきてくれる予定だった学生は私が採用のきっかけを作った子だったので、「これからどうしていけばいいんですか」と聞かれて涙がでた。担当のお客さんには何事もなかったような顔をしてこれまでどおりの営業をした。

経営を請け負う株主の話では、販管費が嵩んだことが債務超過の主な要因で、具体的な使い道は公には言いづらいような、そんなみっともなくて情けない理由だった。そんなとき、社長が私のお客さんに私の悪口をあることないこと触れ回っていると聞いた。最初は「そんなことない」と信じていたけど、どうやらそれが確からしいとわかってしまった。

社長は前職の先輩で一緒に飲みに行ったり出張したりもして、それなりに信頼もされていると思っていたのでそれがわかってしまったときに会社を辞めよう、と心が決まった。

転職活動を進めなければならないとわかっていながらも、なかなか起き上がれない。明確な「やりたいこと」があるわけでも、なにか「やりきった」達成感があるわけでもない。なにから始めたらいいのか、どう考えたらいいのかわからなかった。夜寝ようとすると不安に苛まれて涙が止まらなかった。

そんなとき迎えたのがBUMP OF CHICKENのライブ、aurora arkだった。一曲め、彼らが入場する曲が流れると同時に正面の大きなスクリーンに彼らがカナダのイエローナイフを訪れたときの景色が順番に映し出される。美しい映像を背景に4人がステージに上がってくる。最後にギターボーカルで作詞作曲を務める藤くんが高く高くギターを掲げた姿が忘れられない。

楽しみにしていたはずだったけど、こんなときに遊んでていいのかな、本当に楽しめるのかな、という気持ちも同じくらい大きくてもやもやしながら迎えた9月21日。コンサート序盤、ベースのCHAMAちゃんがButterflyが始まる前に私の不安を吹き飛ばしてくれた。

「『サイコー!』って気分の人も『フゥ~!』って人も、『もう嫌だ死んじゃいたい』って人も『帰りたい』って人もいるかもしれない、それでいい。そのままの気持ちで聞いていってください!一緒に踊ろう!」

ハッとした。ライブもコンサートも、心の底から楽しい気持ちだけ純度100%で臨まなきゃいけない、そうしないと全力でプレイしてくれるアーティストに失礼だと思っていた。でもBUMPの4人は、そうなれない私のことさえ受け入れてくれる。どれだけ懐が広いんだ・・・!

藤くんは、今回のツアーに限らず、「君たち一人ひとりに向けて歌っているんだよ」と声をかけてくれる。「この会場に何万人いたとしても、俺はお前に歌っているんだ」って強く訴えてくれる。

私はこの日、ナゴヤドームで初めてその意味を心から理解した。

いままでBUMP OF CHICKENの曲を聴いてきたつもりでなんにも聴いていなかったんじゃないか、という気持ちにすらなった。それくらい、この日のライブで、藤くんの歌詞の一つひとつが私ひとりに寄り添ってくれている気がした。
 

“希望 絶望
どれだけ待ったって 誰も迎えにこないじゃない
いこう いこうよ

心はいつだって止まれないで歌ってる
死んだような今日だって死ねないで叫んでる

与えられた居場所が 苦しかったら そんなの疑ったって かまわないんだ”
―望遠のマーチ

黙ってたって幸せになれる、なんてことは言ってくれない。君なら絶対にできる!なんて手放しに保証してくれるわけでもない。

でも、つらいとき、しんどいときに、そっとそばにいてくれる。

死んだような今日に、死ねないで、それでもよくなりたいと願っている。自分でも気づいていなかったかもしれない気持ちを言い表してくれたような気がした。わたしの気持ちを、わかってくれている。そのことがこんなに嬉しい。

それから、私は転職活動をはじめて新しい会社で働くことが決まった。

今度BUMP OF CHICKENのライブに行くときには「サイコー!」って気分で臨めますように。次の職場で辛いことがあっても、ナゴヤドームで見たオーロラを胸に、BUMP OF CHICKENの曲がそばにいてくれるからもうきっとたぶん大丈夫なんだ。

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