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[ALEXANDROS]を追いかけるということ

また会おう、私のロックスター。

[ALEXANDROS]と出会う少し前から、私は“アレキサンドロス”というバンド名を認識し始めていた。
その時は知らなかったが、その時期はドロスのメジャー1stアルバム「ALXD」の発売直前だった。
そのため、プロモーションの関係でよくバンド名を耳にしたり目にしたりしていたらしい。
その数日後、書店の音楽雑誌コーナーでまたそのバンド名を目にした。
表紙の彼らと目が合ったから、その雑誌を手に取り、インタビューのページを開いた。

なんというか、ビッグマウスだった。
まだ彼らの音楽の情報を何も持ち得ず、メンバーの顔と名前も一致しない状態で、誰がどのコメントをしているのかもわからない。
だが、彼らは4人が4人とも、ビッグマウスだった。
もうその時のインタビューの内容は覚えていないが、ザ・日本人の私にとって、それはなかなかのカルチャーショックであった。

またその数日後、今度はCDショップで彼らを見つけた。
発売されたばかりの「ALXD」が並んでいる。
つい数日前に強烈な印象を残してきた彼らに、心の中で “ああ、噂には聞いてるよ” と皮肉めいて、1枚を手に取った。
そして、その手に取った1枚をどうするか悩んだ。

私はこのバンドが気になっている。
だが正直、数日前のインタビューで彼らに好意を感じたのかといえば、そうではない。
なのに、気になっている。

悩んだ末に、手に取った一枚を試聴もせずにレジに持っていった。
しかもどうせ買うならと、ライブ映像が収録されたDVD付きの限定盤を買った。

「ALXD」を聴いた率直な感想は、「あーくそ悔しいな」だった。
キャッチーなイントロから始まる「ワタリドリ」、早口の英語と日本語が交わって加速していく内に火花が散りそうな「Boo!」、どこか焦りを滲ませているような「ワンテンポ遅れたMonster ain’t dead」、ボーカルは歌がうまいしギターはかっこいいフレーズが多いしベースはなんだか色っぽいし何よりドラムがめちゃくちゃ気持ち良かった。

悔しかったからまたCDショップに行って、[Champagne]時代のアルバム3枚とライブDVD3枚とスペシャのレギュラー番組のDVD1枚をレジに持って行った。
店員さんの驚いた顔を覚えている。
ハマったのではない。
「ALXD」の1枚だけで、「このバンドかっこいい!」と思っていいのかわからないのだと心の中で誰かに言い訳した。
何日かに分けて見て、聴いた。
完敗だった。
私の好きなバンドに、(当時の表記は)[Alexandros]が仲間入りした。
 

ところでその頃、テレビ等でドロスが紹介される時によく使われるセールスポイント(という表現で合っているのかわからないが)があった。
メンバー全員が、デビューするまでサラリーマンであったこと。
そしてメンバーのうち2人が青山学院大学卒という高学歴であること。
またその2人が、帰国子女で英語が堪能であること。

だがいつからかこの話題はあまり聞かなくなった。
今のドロスにはこのセールスポイントでは弱くなった。
だってボーカルの川上洋平いわくデビューまで3年程サラリーマンをしたと言うが、いや私はそれ以上の期間会社勤めしてるぜ、という感じだし、メンバーが大学を卒業してからもう10年以上経っている。
帰国子女でないギターの白井眞輝も英語の勉強を始めて話せるようになり、それどころか2019年のアジアツアーでは中国語のMCを披露している。
ドラムの庄村聡泰は英語を勉強したとは言っていないが、「相手が(英語でも)何て言っているかはわかる」と発言しているし、ニューヨークに滞在していたレコーディングの時はメンバー同士の会話も英語でしていたというから、全く話せないというわけではないのだろう。
メンバー全員が英語が堪能というのもすごいことだけども、「世界一のバンドである」と公言し、海外でもライブを行うようになったドロスがメンバー全員英語話せます、というのは、なんというか意外性がない。
 

『追いかけて 届くよう
  僕等 一心に 羽ばたいて
  問いかけて 嘆いた夜
  故郷は 一層 輝いて

  ワタリドリの様に今 旅に発つよ
  ありもしないストーリーを 描いてみせるよ』

今やドロスの代表曲ともいえる「ワタリドリ」の一節だ。
彼らはワタリドリだ、と最近よく思う。
一心に羽ばたいているうちに、自分たちのセールスポイントを自分たちで大きく塗りつぶしてしまった。
彼らにとって、そもそも音楽以外のセールスポイントにこだわりはなかったんじゃないかと勝手に推測しているが。
 

川上洋平はライブの最後によくこう叫ぶ。

俺たちが[ALEXANDROS]だ 覚えとけ
 

なんて説得力のある言葉だろう。
きっと私はドロスをよく知らない人に「アレキサンドロスってどんなバンド?」と聞かれたら、彼らの楽曲を再生する。
それで答えが成立するほど、彼らの楽曲は、素人の私にもよくわかるほど高いレベルを更新し続けているように思う。
私はそんな彼らに、いつからかこう思っていた。
まだここにいてくれよ、と。
高く高く飛び続ける彼らに対し、私には羽がない。
いつか、彼らの姿が見えなくなる気がし始めていた。
 

2018年某日、彼らのSNSの公式アカウントが更新された。
「ニューヨークにレコーディングに行ってきます」でもなく、「レコーディングに来てます」でもなく、もうそこでメンバーは暮らしていた。
ああ、本当に海の向こうに行ってしまったと思った。

自分勝手極まりないが私は不貞腐れていた。
どうしてそこまで高く高く飛び続けようとするんだろう。
お気に入りの店で大好きだったメニューをリニューアルされてしまった気分だった。
次に出てくる時は改良された、素材も盛り付けも器も何もかも洗練された味になっているのだろう。
私はその味に馴染める自信が無かった。

店頭にニューアルバム「Sleepless in Brooklyn」が並んだ。
心の中で “ああ、噂には聞いてるよ” と皮肉めいて、1枚を手に取った。
色々と種類はあったが、CDだけの通常盤を買った。

「Sleepless in Brooklyn」を聴いた率直な感想は、「あーくそ悔しいな」だった。
新しいことが詰まっているし、想像どおり洗練されているし、世界一のバンドだということが本当に証明され始めていると思った。
でも歌詞や音の端々に、焦りや悔しさや自分に言い聞かせているような強引さが滲み出ていた。
川上洋平はインタビューで、ニューヨークのミュージシャンのレベルの高さに当初は自分と比較してヘコんだと話している。
私はきっと彼らの音楽の根底には、自分が持つ強い軸と、それが揺らいだ時の焦りと悔しさがあるのだと思っている。
そして私はやっぱり、そこから生まれる彼らの音楽が好きだった。
 

2019年6月16日。
私はさいたまスーパーアリーナで[ALEXANDROS]のツアーファイナルを見届けた。
終盤のMCで、ベースの磯部寛之が10年前をこう語った。

デビューが決まり、先輩のライブツアーにオープニングアクトとしてついて回った。
それまでは自分たちで車を運転して機材を運んでいたのに、その時は先輩バンドのスタッフがいて手伝ってくれ、「手伝ってもらえる」ということに感激したこと。
当時の物販は今みたいにTシャツなんてなく、デモCDだけだったこと。
1枚売れればいい方だったそのCDが、その日は70枚売れた。
自分たちの音楽に価値を見出してくれる人がいるとわかったことからバンドのヒストリーは始まった。
そういう経験が全部今につながっていると思っている。
あれから10年経ち、この会場でこれだけのお客さんの前でライブがやれている。
本当にみんなのおかげだと思っているし、またどこかで会いたい。
 

ぽつぽつと語られた彼の言葉に、私は「ワタリドリ」のこの歌詞を重ねて聞いた。

『 All this time we come and we grow
 Now it’s time that we should go
 But we both know that this is for sure 
 It’s not the end of the world

 Well, see you one day

( 我々はここまでやってきた
 そして別れの時がやってきた
 でもお互いこれだけはわかっているはず
 これで終わりじゃないって事は

 だからいつかまた会おう ) 』
 

その後も彼らは勢力的にライブを続けている。
にもかかわらず、この日以降、私はドロスのライブに行けていない。
一度申し込んだチケットは落選した。
他のライブはそもそも日程が合わないから申し込むことすらしなかった。
ドロスのライブは少し遠いものになった。
でも私はわかっている。
あの日で終わりじゃないって事は。
 

だからいつかまた会おう。

必ず、また会おう。

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