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2017年7月18日

鹿苑寺と慈照寺 (26歳)
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plentyと僕

ラストツアー「蒼き日々」を通じて感じた幸福と余韻

思えば、辛いときに自分の側にはplentyがいた。

plentyを知ったのはたまたま聴き始めたFMラジオがきっかけだった。当時、僕は大学受験に失敗し、浪人をしていた。センター試験も終わり、受験もラストスパートを迎えていた。約2年間、勉強に明け暮れた日々だった。息抜きもできず、その方法もわからず、ただただ苦しかった。そんな苦しいときに、僕はなぜか「ラジオを聴こう」と思った。未だにあのときの心境はわからない。

流れてきたのが”人との距離のはかりかた”だった。正直、高校時代も辛いことがあり、人を信用することができなかった。そんな僕にplentyは励ますでもなく、背中を押すでもなく、ただ側にいてくれた。ラジオから流れてくる江沼さんの歌声は美しかった。ただただそんな感情に襲われた記憶がある。それからplentyをむさぼるように聴き始めた。

月日は流れて、2017年4月13日。

残業中に偶然見た携帯には「plenty、解散を発表」の知らせが届いていた。この日は僕の誕生日の日で、何事もなく平穏に過ぎ去っていくと思っていただけに、言葉を失った。どんなものにも終わりが来るということは至極当たり前のことなのに、「永遠に続く」と思い込んでいた。その日はどうやって家に帰り着いたのかわからない。ため息が漏れる、そんな夜だった。

解散を発表しても日々は続いていく。plentyの解散発表もさることながら、特に4月から5月にかけて仕事で悩みに悩む日々を送っていた。自分で自分が情けなくて、あまりにも多くの人に迷惑をかけてしまっていて、「もう辞めようかな」とまで考えた。

「空がこんなに奇麗だったことを忘れていた俯いてたから
所在なくなんとなく生きてる僕はいったい君に何を贈るんだろう
なにしてんだろう」

「くよくよ めそめそ 立ち直るのもめんどくさいけれど
楽など疑って生きていこう これからは」

たまたまイヤホンから流れてきた”イキルサイノウ”。このときもやはりplentyは励ますでもなく、背中を押すでもなく、ただ側にいてくれた。ほんの少しだけ前を向くことができた。

本当に辛くてしんどかったけれど、周りの方々に助けられ、自分自身も何とか持ちこたえることができて、仕事の山場を乗り切ることができた。

6月に入り、ラストツアー「蒼き日々」が始まった。

当初は大阪のなんばHatch公演のみ参加する予定だったが、「後々後悔するのでは?」と思い、急遽福岡のDRUM LOGOS公演にも参加した。そして、僕にとって最後のワンマンライブとなる大阪公演の日を迎えた。

その日、大阪は梅雨を忘れさせるほどの晴れに見舞われ、とにかく暑かった。ただ、時折涼しい風が吹き抜けた。そんな日だった。

なんばHatchに大勢の人が集まった。みんなplentyが大好きな人たちだ。それだけで嬉しくなった。

“拝啓。皆様”から始まる今回のツアーはplentyからファンに捧げる手紙のようだった。一曲一曲を大切に感謝を込めて歌う江沼さん、それを必死に支えるように演奏する新田さんと中村さん。その一挙一動をじっと見守る、会場一杯に集まったplentyが本当に大好きな人たち。

「乾ききった日常。わずかばかりの水をたす。」

“その叙情に”で江沼さんはこう歌った。そのフレーズが僕の耳に突き刺さった。そうじゃない。わずかばかりなんかではない。僕にとっては「溢れんばかり」だった。

思えば高校時代から目に見えぬ「何か」や「誰か」に悪態をついていた。些細なことにイライラし、やり場のない不満や憤りが溜まりに溜まっていた。毎日、夜遅くに帰宅し、「なんなんだよ!」という思いから抜け出せなかった。

ライブの後、曲を演奏するでもなくMCをするでもないあの無音の時間や”蒼き日々”で終わるライブの高揚感ももう味わえないのかと思うと寂しさが込み上げてきた。でも、それと同じくらいに幸せだった。あのなんとも言えない多幸感を誰かに伝えたいけれど、言葉にするのが難しい。

あの日から2週間が経ち、日常に戻ったのだけれど、たぶん今も余韻に浸っているんだと思う。自分でも驚くほど穏やかな気持ちに包まれている。こんな気持ちになったのは初めてかもしれない。

日々は続いていく。嫌なことの方が多いかもしれない。でも、plentyは何も言わずに側っていてくれる。それだけでなんとか生きていけそうだ。

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