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ROTTENGRAFFTYは世界遺産をライブハウスに変えて

京都出身のバンドが東寺でライブをするということ

 令和1年12月14日、ROTTENGRAFFTYのツアー「20th Anniversary Beginning of the Story」の追加公演が行われた。

 この日は世界遺産として京都に鎮座する「東寺」でのライブ。いつも凄まじい熱量のライブを魅せてくれるロットンだけど、より目の離せないライブとなった。

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 令和の年に20周年を迎えたROTTENGRAFFTY。20周年イヤーということもあり、毎月、毎週のように何かが起こる、ファンから見ても目まぐるしい1年だった。

 1月6日、新春から地元・京都のライブハウスで行われた「20th Anniversary
Beginning of the Story in 響都」を皮切りに、3月から6月まで細かく全国を回るツアー「20th Anniversary Beginning of the Story」を敢行。

 10月からはZeepなどを中心とした秋ツアーとして「20th Anniversary Beginning of the Story〜We are ROTTENGRAFFTY〜」を走り切った。7月から9月のツアーをストップしている期間も、全国のフェスやイベントに出演し続けるというハードスケジュール。

 さらに、シングル『ハレルヤ』やトリビュートアルバムの『MOUSE TRAP』の発売や、来年の春に発売予定のベストアルバムの発表など、こんなに良いニュースばかりでどうしようと慌てふためいてしまうくらいの濃い20周年が続く。

 とはいえ年の瀬もそろそろ近づいてきた時期。もうこれ以上の吉報は続かず落ち着くのでは、と思っていた11月16日に、東寺でのライブ開催のニュースが入った。

 正直に言えばその一報を目にした途端小さなパニック状態になった。ライブ当日より1か月前という急な告知だったし、そもそも寺院でのライブという、予想だにしていなかった角度からのニュースだ。そもそも、お寺ということはどこでライブをするのか、キャパシティは何人ほどのなのか。というか行く気満々ではいるけど、チケットは取れるのか。

 新たなライブ情報に単純に喜ぶと共に、様々な疑問と驚きが浮かび上がり、Googleで「東寺 ライブ」や「東寺 キャパ」などというワードで検索し、めぼしい情報が出てこないことにまた驚く。つまり12月14日は、ネットで検索するだけでは分からないライブが待ち受けているということだ。

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 12月14日当日、物販に並ぶ時点でその人数の多さに慄く。比較的日にちが迫った告知にも関わらずチケットは完売、やっぱり「世界遺産」でのライブは何としてでも参加したいという人が多かったのだと思う。

 一般の参拝客も多く見かける境内を見渡すと、当然だけどどう見ても立派な「お寺」でしかない東寺。この場所でどうライブをするのだろう、何かがあったらどうしようという勝手な心配も沸々と胸に浮かぶ。

 日も暮れはじめ、開場時間が近づき再び東寺へと戻る。境内に足を踏み入れ、はっと息を飲んだ。ライトアップされた五重の塔と紅葉。昼間に見た姿とはまた異なる、一段と美しくなった東寺がそこにあった。

 その時、ようやく「ロットンは美しい場所でライブをするんだ」という実感が沸き、これからはじまるライブへの期待が怖いくらいに高まった。

 冬の京都で行う野外のライブ。人生の中でも5本の指に入るくらいの極寒の環境でロットンを待つ。
 
 頬を刺すような寒さに痛いくらいの風が吹く待機時間の中、それでもこれから始まる時間が楽しみで、もうテンションもおかしな状態になっていたと思う。夕方まで静かに降っていた雨は、その時には止まっていた。

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 19:00、SEである610行進曲が鳴り響いた。これまでの寒さなんてどこかへ行くのでは、というくらい頭が沸騰する。凍りきった手を頭上に掲げ、必死に手を叩いた。

 1人ずつ登場するメンバーは、スーツを身にまとっていた。ロットンの昔の衣装だったというスーツは、秋ツアーの間ずっと着用していたもので、ああいよいよこのツアーも終わるのかという切なさもよぎる。

 寺院を背にした上手ボーカルのN∀OKIさんが、マイクを握りしめ「1200年の歴史に一石を投じに来た!」と叫んだ途端、鳥肌が立った。こんなシャウトは、この場所だから、それにロットンのライブだからこそ聞けるものだと思った。

1曲目は『金色グラフティー』。フェスや普段のライブなら、ラストで歌われることが多い 鉄板曲が初っ端から来たものだから、もう興奮するしかない。合唱から始まる金色のフレーズを、喉がちぎれるくらいに歌う。

 この日のライブまで、なんとか持ちこたえてくれた紅葉と、ステージから見えているであろうライトアップされた東寺にぴったりな1曲目だと思った。

 続く『This World』は、メンバーの熱意もより凄まじいものがあり、猛った勢いのままフロアに降りてくる曲だ。

 東寺でのライブは、やはり普段よりもより厳しく、ダイブや激しいモッシュ類への注意がアナウンスされていたライブだった。ダイブ・モッシュについては、今回のライブに限らずさまざまな議論が生まれる行為だろう。

 そんな中、下手ボーカルのNOBUYAさんは「世界一カッコいいヘッドバンギング見せてくれよ!」と煽る。つまり、これはロットンからの「その場でできる最大限の暴れ方を見せてくれ」というメッセージなんだな、と感じた。

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 のちのMCで「お前らならルールの中であっても楽しめると思ったから、東寺でのライブを決めた」というように語るNOBUYAさんの姿を見て、誇らしいような気持ちになったのを覚えている。

 続く『STAY REAL』や『世界の終わり』も、ゴリゴリに体力を削る、ライブハウスではお馴染みのアツい曲ばかりだ。普段は閉じ切ったライブハウスで輝く照明は、その日歴史が深く刻まれた金堂を染めた。

 中でも『STAY REAL』のラストを飾る「僕らは今ここに立つ」というフレーズ。京都出身であり京都で生まれ育った彼らが、東寺という場所において口にするそのフレーズは、痛いほど刺さるものがあった。

 カバー曲である『今夜はブギー・バック』が始まったときには「ここでこの曲が!」という変化球具合に驚いた。だけど、ライブで『今夜はブギー・バック』をするときには定番となりつつある「光を発するものを掲げろ」という煽りを耳にした瞬間、驚きはすぐに喜びに変わる。

 照明は消え、お客さんによってフロアに灯る光に照られされたメンバーの表情は、少年のようだった。それはフロア側からは見えない、ステージ側だから見える美しい光景なんだろう。

 ブギー・バックの歌詞をもじり「五重の塔めっちゃ綺麗!」と叫ぶNOBUYAさん。普段はクールにフロアを煽って見せるNOBUYAさんとは思えない率直な言葉で、思わず暖かな気持ちになった。

 ロットンのライブにおいて『今夜はブギー・バック』は「暴れる、サークル、モッシュだけがライブじゃない」というN∀OKIさんの言葉が印象深い。「激しい・ハードなライブ」というイメージが強いロットンだけど、ロットンのライブの本質はそれだけじゃない。世界遺産という貴重な建物でライブを行うにあたって、この上なくぴったりな曲だと思った。

 さらにこの12月18日に発売されたばかりの『ハレルヤ』が続く。秋ツアーにおいて既に何度もセトリに入っていた『ハレルヤ』だが、個人的にこの日の一曲が一番込み上げるというか、刺さるものがあった。

 『ハレルヤ』の歌詞には「アジアの片隅のパーティタイム」という一節がある。シングル発売日を控えた12月14日、歌詞カードも手にしていなかったけど、日本を1200年見守ってきた東寺でそのフレーズを聞きながら「まさに今、この瞬間を指しているようだな」と震えるように思った。

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 『ハレルヤ』で十分に身体が熱くなったのにも関わらず、赤い照明が危険信号のように光り『零戦SOUNDSYSTEM』が始まる。正直言って物騒ともいえるようなギラギラとした曲だ、寺院で行うライブでセトリに入るとは思っていなかった。

 加えてギターのKAZUOMIさんが「この場所が世界遺産なんてことは、関係ない!」などと叫んでみせるものだから、もう堪えられるはずもなく、身体が動くしかない。

 そして、東寺という場所においてこれ以上ないくらいぴったりな『響く都』。ステージに設置されていた和太鼓が高々と鳴り響き、スタートする。

 京都の、真冬の夜空の下で大きく鳴り響く「響く都!」というコールに、「お前ら、ROTTENGRAFFTYが好きか!」というN∀OKIさんの問いかけに、それに対するうなるようなレスポンス。

 この場所でライブをするのなら絶対に欠かせないだろう、と発表当時から期待していたけど、予想していた以上のハマりっぷりに美しさすら感じた。

 さらに、静かなのに激しさを秘めた『e for 20』や、東寺をプリズムに満ちたダンスホールに変えてみせた『D.A.N.C.E.』、ラスト曲とは思えないような明るさをみせる『切り札』など、1時間の持ち時間とは思えないくらい濃密なライブだった。
 
 
 20周年という記念すべきメモリアルイヤーに行われた世界遺産・東寺でのライブ。厳格で美しい寺院を汗臭い人間臭いライブハウスに変えて、ROTTENGRAFFTYの音が響いた一夜だった。
 
 
 

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