3894 件掲載中 月間賞毎月10日発表
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

ユニコーン 祝・100周年!

100点満点なおじさんバンドから学ぶこと

 「ユニコーン 祝・100周年!」
 事情を知らない人が聞くと「100周年?なんじゃそりゃ」となるかもしれない。だが実に簡単な計算である。
【メンバー最年長の川西幸一60歳+ユニコーンが現体制になってリリースしたアルバム“服部”から30年+再結成して10年=100年】
 ほら、単純明快。むしろよく見つけてきたなって感じ。

 2019年は100周年だ!と手島いさむが考えつきメンバー間に広まったという。とにかく100にちなみまくって、今年元日に発表された全国ツアータイトルは“百が如く”だし、3月・10月にリリースしたアルバムはそれぞれ“UC100V”・“UC100W”だった。1年に2枚のフルアルバムを出すこと自体驚異的なのだが、収録曲を聴いているとすべてが必ずしも本気(と書いてマジ)な感じがしない。どこか“真剣に遊んじゃってる感”がたまらなく心地いいし、オトナの余裕を感じるのである。それはおそらく、後述するスローガンの力も相まっていて、UC100Wオフィシャルサイトに掲載されているインタビューでABEDONが語る、「時間があると変な欲が出るけど、今回はやることで精一杯だっていうのがあるから、(中略)あんまり欲がないところが、気に入ってます」というところに集約できる。要するにメリハリ。アルバム制作期間が短かったということもあるが、限界まで追い込んだり突き詰めたりはしないという潔さ。だから聴く側の人間も気を張らずに楽しめるし、耳にすっと入ってくるのだ。
 【働き方改楽 なぜ俺たちは楽しいんだろう】 ユニコーンが今年掲げたスローガンだ。働き方改楽…どこかの国のお偉いさんが打ち出した改革の名前に似ている。その改革の恩恵受けているのは一部の人たちだ。ユニコーンのことを見習ってほしい、本当に。

 政府批判はさておき、春から始まった百が如くツアーは9月を境に前半後半に分かれ、セットリストもがらりと変わった。その中で変わらなかったのは「公演時間が100分」ということ(そこも100にちなんじゃってる)。しかも、公演終了の時間が来るとアルバム“服部”に収録されている“ハッタリ”が流れ強制的に終わるという徹底ぶり。私がツアーで最初に赴いたのは6月のなら100年会館公演だったが(会場の名前まで100!)、奥田民生から「100周年なのでそれにちなみまして、100分で終わります」と聞いた時の客席のざわつきったらなかった。通常2時間を超えアンコールで伸びていくのが主なのだが、100分となるとかなりコンパクトな印象だ。そんな次第で今ツアーではMCやおふざけも少なく、凝縮された時間となった。それには「働き方改楽」が大いに関係していて、「飽きないように、間延びしないように」という思いもあるらしい。なにせメリハリなのだ。

 12月17日。ユニコーンは大阪・フェスティバルホールでツアーのファイナルを迎えた。これは全公演そうだったと思われるが、客入れのBGMはない。ステージ上のネオンや工場のようなパイプ管を模したセットが怪しく瞬き、バチバチと機械音を鳴らしているだけだ。私は奈良、大阪含め4公演に足を運んだが、「もう終わってしまうのか」という名残惜しさは意外と感じられなかった。この日は生中継も入っていた。「たくさんの人と一緒に楽しもう」。それだけだった。

 1曲目は“M&W”。薄暗い照明の中、前奏に乗せてメンバーが登場した。
<消えない愛はどこにある? 衰えない体はどこにある?>
 ボーカルのABEDONがしっとりと歌い上げていく。まるでメンバーの願いのように。
<消えない愛がここにある 衰えない体がここにある>
 はじめの問いに説得力のある答えがEBIのハーモニーによって更に格上げされていく。スローでメロウな声色、音色。あらゆる感情が宙を舞った。人はいつか終わりが来る。それを諦めるわけでなく抗うわけでもなく、今を楽しく優しく生きること。それを目の前にいるユニコーンは体現しているのだ。うっとりするほどの幻想的な空間を漂った私の魂は、手の中に収まるようにすとんと腑に落ちた。
 そこから解散前の名曲“すばらしい日々”やUC100Wからの楽曲が続く。ファイナルでもしっかりと「100周年100分」を目指し、流れるように、それでいて確実に私たちを楽しませてくれた。

 中盤。アルバム服部の楽曲をメドレーにした1曲はユニコーンならではの遊び心が満載だ。30年前の曲だが、今もなお盛り上がること間違いなしの曲・服部を、あえて歌わない。いや正確に言うと前奏は演奏して、冒頭の12文字だけ歌って終わった。ファイナルだから歌うのではなかろうかとも思ったが、歌わなかった。「家帰ったら聞いてください」と奥田。いけずだなあ。
 終盤になると川西がボーカルを務める“BLUES”や“半世紀少年”でお祝いムードが高まった。BLUESは特に味わい深く、メンバーの間をビートに合わせて行き来する川西はお茶目で、その上格好良くて「ほんまに60歳ですか?」と疑いたくなるほどだった。UC100Vからも“55”、“ZERO”もセトリに名を連ね、それぞれ奥田、ABEDONが熱唱。会場はツアーグッズで発売されていた光る指輪をはめたお客さんが多かったため余計に美しく見えた。
 時間が決められているので、メンバーは退場しないままアンコールが行われた。最後の曲は“HELLO”。再結成後、1作目のアルバム“シャンブル”のラストを飾る曲である。

 ステージのスクリーンに、過去この曲を演奏した時のメンバーの姿が映し出されていく。私は10年前ユニコーンをほとんど知らなかった。HELLOは私よりもユニコーンを知っているし、この10年を見続けてきている。当たり前の話だがスクリーンに映る五人より、今の方が確実に年老いている。M&Wで<衰えない体がここにある>と謳った人の運命はHELLOの
<流れゆく 光たちよ 消えてゆく 命たちよ 舞い上がれ 燃え上がれ 時を越え 突き進め>
から繋がってきたのではないかと感じ、鳥肌が止まらなかった。

 憎い演出のフィナーレにきっと泣いていた人もいたはずだ。が、お辞儀もそこそこに舞台袖へと消えたABEDONはギラギラしたジャケットをまとい、犬の風船やそのほか動物の風船を大量に引き連れて再登場。「100分まで時間があるんで時間つぶしでーす(※声はボイスチェンジャーで変えてある)」と告げると会場は一気に笑いで包まれた。やはり普通には終わらない。茶番を3分ほどしたら100分を知らせるハッタリが鳴り響き、メンバーは手を振ってステージから去って行った。会場に残ったのは涙や切なさではなく、笑顔だった。
 スタッフのエンドロールがスクリーンに流れ、最後には【完結】と締めくくられた。ファイナルだからもしかしたら何かあるかもとアンコールをし続ける私たちであったが、五人が姿を見せることはなかった。あっさりと、すっきりと終止符は打たれた。

 かくしてユニコーンは100周年を無事完走した。ゆるいバンドだと思われがちだが、決してサボっているわけではなく一生懸命遊んでいる。ユニコーンから学ぶべきことは多い。手島は奥田についてこう表現する。「苦労は絶対見せない男」だと。私からすれば全員そうだと思うし、そこが美学なのだろう。五人ともさりげなくも正確な演奏をする一方で、人間臭いところもあり愛らしい。何事もへっちゃらそうに見えるところが魅力でもある。一度解散したことで見えてきたものもあるに違いない。そんなバンドを好きになれた自分を褒めてやりたい。いや、褒める。すごいぞ私。
 100年のその先へ。「働き方改楽」で、これからも前人未到の記録を更新し続けてほしい。
(※ちなみにこの文章は100分では書けませんでした)

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい