3162 件掲載中 月間賞発表 毎月10日 コメント機能終了のお知らせ
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

『真夏の夜の匂いがする』が嫌いな理由をあいみょんに教えられた日

横アリで誓った「天国か地獄か分からない道を振り切って進む覚悟」

私はあいみょんの楽曲が大好きだ、『真夏の夜の匂いがする』を除いては。

あいみょんを初めて知ったきっかけは『マリーゴールド』だ、そんな人も多いだろう。
かくいう私もその1人だった。
紅白歌合戦でこの曲を初めて聞いた時は「すごい人がいるなぁ」と思う程度だった。

2か月ほど経った頃、何となく入った駅前のラーメン屋で流れていたBGMのワンフレーズが耳に残った。
『走る 走る 遠くの方へこの脚振り上げて
回る回る 目が回るくらい この日々駆け抜けて
明日になって 朝が来た時 見えるものはなんだろう』
あいみょんが作った『夢追いベンガル』だった。
当時の私は2度目の就活真っ只中だったこともあってか、走り抜けた先で日の出が手を振って待っているように思え、背中を押されたように感じた。
気付けば面接前に必ず聞くようになっていた。

無事に就活を終え、時間もできたため『夢追いベンガル』以外のあいみょんの楽曲を一通り聞いてみようと思った。
当時最新曲だった『ハルノヒ』を聞いた瞬間「私はこの人の楽曲を聞き続けなければならない」という義務感に駆られた。
初めての感覚だった。
その理由を探し、彼女の楽曲を一通り聞き漁った。
世間体やモラルといった社会規範に迎合せず、自分の本能・直感に誠実だからこそ『あなたの両腕を切り落として』と歌詞の最初に書けるのだろうか。
音楽には滅法疎い私でもあいみょんという人間の力強さ・己を偽らない気高さが伝わってきた。
畏敬の念を感じるばかりだ。
気付いた時には彼女の曲の虜になっていた。

春の期末試験が終わったその日に初めて『真夏の夜の匂いがする』を聞いてみたが1分と経たないうちに聞くのを辞めてしまった。
骨の髄までずぶずぶと舐め回され、しゃぶりつくされるような強い不快感に襲われた。
虜になっていたアーティストの楽曲にここまでの不快感を覚えるものなのだろうか。
「あいみょんの楽曲が大好きだ」という錯覚に陥っていたのかと疑心暗鬼になった。
直前に聞いていた『鯉』を聞いても、プレイリストを最初からもう一度再生してもこの感覚は蘇らなかった。
やはり『真夏の夜の匂いがする』だけだった。

不快感の正体が全く分からないまま月日は過ぎ、横浜アリーナ公演の日を迎えた。
1曲目から彼女の力強さと、私たちを優しく包み込んでくれる空気感に圧倒され続けた。
聞き惚れている最中例のあのイントロが流れ始めた。
ギターの音が次第にあの不快感を強くしていく。
しかし同時に心地良ささえ感じ泣いている自分がそこにいた。
音楽を聴いて泣いたのは初めてのことだった。
それに気づいた時にどこかで聞き覚えのあるフレーズが頭をよぎった。

私は『真夏の夜の匂いがする』が嫌いだ、
この曲を聞くと自分は安全な道しか進もうとしていないと突きつけられるからだ。
私は『真夏の夜の匂いがする』が嫌いだ、
『もっと自由に グラスを片手に 人生を謳歌できたらなぁ』と考え、何も行動せずに時間を無駄にしていることに気づかされるからだ。
私は『真夏の夜の匂いがする』が嫌いだ、
天国か地獄か分からない道の先に自分のやりたいことがあるのに「失敗したらどうしよう」・「恥をかいたらどうしよう」・「周りの人間から後ろ指を指され馬鹿にされるのが怖い」と自分の本心を制止し、その道を封鎖し続けていたことを教えられるからだ。
私は『真夏の夜の匂いがする』が嫌いだ、
『快楽へと 極楽へと 吸い込まれていく』ことが心の底から大好きな自分が浮き彫りになるからだ。

強烈な不快感の正体は私自身だった。
私を蝕む私と私を守りたい私、前者が勝っている事実に目を向けるのが怖くて最後まで聞けなかったのだ。
『真夏の夜の匂いがする』には私が大嫌いな私が凝縮されていたことに気づいた時、また泣いてしまった。
横浜アリーナ公演2日目が終わった瞬間、全てのあいみょんの楽曲が大好きになった。
勿論一番大好きな曲は『真夏の夜の匂いがする』だ。
これからも変わることはないだろう。

私は今、真夏の夜の匂いを嗅ぎながらこの音楽文を書いている。
私を蝕む私がまき散らすその匂いを死ぬまで嗅ぎ、
天国が地獄か分からない道を進み、
完璧な答えが出ない愛の価値・人間とぶつかり、
簡単じゃない恋・金・人生にハマるのだろう。
私が守りたい私としての人生を生き、進んだ道の先であいみょんに会える日が来るならば伝えたい。
「『真夏の夜の匂いがする』が私をここに導いてくれました。日本に生まれて、歌手になって、『真夏の夜の匂いがする』を作ってくれて、本当にありがとうございました。」
そんな日が来ることを願いながら、私は今日も天国か地獄か分からない道を振り切って進む。

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい