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いつでも微笑みを

岡崎律子さんを偲んで

もう過ぎてしまったけれど、2019年12月29日は故・岡崎律子さんの生誕60年となる誕生日だった。そしてアルバム「for RITZ」の発売から15年という日でもあった。 

私が岡崎律子さんに出逢ったのは3年前の冬、アニメ「フルーツバスケット」の主題歌を聴いたことがきっかけだった。
漫画自体は前から所持しており何度も読み返すくらい好きだったのだが、ある日偶然インターネットのビデオサービスでアニメの存在を知って1話から視聴し始めた。その時流れたオープニングで初めて岡崎さんの音楽に触れた。曲名は’’For フルーツバスケット’’。
 
『とてもうれしかったよ 君が笑いかけてた
すべてを溶かす微笑みで
 
春はまだ遠くて つめたい土の中で
芽吹く瞬間(とき)を待ってたんだ
 
たとえば苦しい今日だとしても
昨日の傷を残していても
信じたい 心ほどいてゆけると
 
生まれ変わることはできないよ
だけど変わってはいけるから
Let’s stay together いつも』
(岡崎律子 / For フルーツバスケット より引用)

アニメのオープニングとは思えないほどゆったりした曲調。作品の内容を捉えた歌詞。そして何より印象的だった心の奥に優しく語りかけてくるような歌声。
たった1曲。たった1分で岡崎さんに魅了された。あっという間に好きになってしまった。
 
アニメを見終えた後、スマホで岡崎さんについて調べてみた。
「岡崎律子さんってどんなアーティストなんだろう?他にはどんな歌を歌っているんだろう?」
新しい出逢い、まだ見ぬ世界に私はワクワクしていた。
しかしそこには信じられない文字が映し出されていた。

「死亡:2004年5月5日」

岡崎さんは44歳という若さで既にこの世を去っていた。ショックで言葉が出てこなかった。
もうこの世界にいない。会いたくても会えない。
出逢いの遅さを後悔した。
虚しさに襲われひどく悲しい気持ちにもなった。でも岡崎さんに対する想いは失われなかった。岡崎さんの残した音楽に触れたかった。
そこでまず’’For フルーツバスケット’’が収録されているアルバム「for RITZ」を購入した。
 
病気と闘いながらこのアルバムを制作していたこと。その制作中に逝去してしまい発売が延期になったこと。
それでも「作りかけでもいいからリリースしてほしい」というファンの方達からの声があり、同じ年の岡崎さんの誕生日である2004年12月29日にリリースされたこと。
このアルバムが岡崎さんの遺作になってしまったこと。
 
こういう諸々の事情を知った上で最初聴いたときは感涙必至だった。
1曲目の’’空の向こうに’’から最後の11曲目の’’For フルーツバスケット’’までずっと泣きながら聴いていた。歌詞カードは涙でふやけた。

残された日々と向き合いながら紡いだであろう言葉とそこから生まれてきたメロディ。
頭で考える暇もなくボロボロむせび泣いた。音楽でこんなに泣いたのは生まれて初めてだった。
 
その中でも2曲目の’’I’m always close to you’’と4曲目の’’いつでも微笑みを’’を聴いたときの感動は凄かった。

『 ごめんね お別れが突然で
今は ちょっとね 寂しいけど
かなしみじゃないの
いつか ちゃんと 想い出になる
 
約束 お願いはひとつだけ
生きて 生きて
どんな時にも なげてはだめよ
それは なにより チャーミングなこと』
(岡崎律子 / I’m always close to you より引用)
  
 
『私は ねえ つよかった?
いいえ いつも揺れていたのよ
 
どうしても ひとりじゃだめな夜は 
記憶の箱を開けて
 
少しだけ そこで逢いましょう
どんなことも 一晩中だって 打ちあけてね
でも
 
涙で終えてはだめよ
きっと 笑って箱を閉じて
 
だって 時間と 人も流れてくの
素直に受けとめて
 
いつでも微笑みを』
(岡崎律子 / いつでも微笑みを より引用)
 
岡崎さんが自分自身に、そして聴いてくれる人に向けて送ったメッセージのような2曲。
最期を感じさせる重い歌詞には胸が締め付けられた。でも、聴いた人を暗い気持ちのままにさせない優しさと強さがそこには備わっていた。アルバムの中でも特に印象深い曲だった。

私は岡崎さんのライブに行ったこともないし、どんな想いで音楽活動をしていたのかもよく知らない。
それでも岡崎さんのまっすぐな、真摯で一生懸命な想いが痛いくらい伝わってきた。
自分の運命を呪ったり恨んだりせず、ただひたむきにその先にある光を信じて歌っていた。
だから聴き終えたときも決して悲しい気持ちになることはなかった。寂しさを感じつつもどこか晴れやかな気持ちだった。

どうしてこんな素敵な歌を歌えるのだろう。
このしなやかな強さはどこからやってくるのだろう。
どうして岡崎さんの音楽にこんなにも惹かれるのだろう。

それから私は岡崎さんのアルバムを一気に全部購入した。他にも日向めぐみさんとのユニット「メロキュア」のアルバムや他アーティストへ楽曲提供した作品も集めたりした。
岡崎さんは愛についてよく歌っていた。恋愛、友愛、隣人愛、無償の愛。岡崎さんの歌には愛が溢れていた。
そこから垣間見える岡崎さんはとても人間らしくて、可愛らしくて、美しかった。
そして、岡崎さんの生み出すメロディはとにかく魅力的だった。音楽の知識が無いから上手く言えないけど、懐かしいような新しいような不思議な心地良さがあった。シンプルなようでどこか独特で頭から全く離れない、そんな歌が何曲も何曲も何曲もあった。言ってしまえば全曲そうだった。

一時期は時間があればずっと岡崎さんの音楽を聴いていた。
イヤホンを通じて岡崎さんの音楽と出逢う、この時間が幸せだったから。
そんな風に聴き続けていく中で感じたこと。
それは、岡崎さんは自分と誠実に向き合っていたということ。そして明るく前向きに生きようとしていたということ。

『嘘でその場をうまくやりすごしても きっとくやむから
過去も未来ももちろん今も 全て背負うのは自分だもの 悩もう』
(岡崎律子 / A Happy Life より引用)

『心はね いつも思うよりも弱く そして強いものだから
時は時は動いている
笑っていても 嘆き続けても
そして いつも甦ると信じて生きていいのね
信じて生きていいのね』
(岡崎律子 / 青空 より引用)

「ときどき進めない もがくけど
なにか立ちはだかるけど
私を試すけど
幸せはどこにでも待ってる
どこへでも行ける 私
この道 その先へ』
(堀江由衣 / 心晴れて 夜も明けて より引用)

『迷う時がある 長い夜がある
だけど それは自分次第
どこへでも行ける どこまでも行こう
新しい日への螺旋』
(メロキュア / Pop Step Jump! より引用)

『でも 選んだことは みんな自分で決めてきたこと
信じよう すべてには意味があるはずだから』
(岡崎律子 / Nowadays より引用)

人生は自分の気持ち次第。自分次第で良いようにも悪いようにもなる。そんな自分自身に向けて歌ったようなメッセージが随所に見られた。
決して楽観的ではない現実的な視点から、時には厳しい言葉で、でもやっぱり優しく包み込むように歌い上げていた。

岡崎さんは私が想像していたような強い人ではなかった。強くあろうとする人だった。
そんな姿に私は何度も元気をもらい励まされた。
良いところも悪いところも好きなところも嫌いなところも強さも弱さも悩みも苦悩もその全部が全部「自分」なんだと次第に思えるようになっていった。
気が付けば、アーティストとしてもひとりの人間としても岡崎さんを大好きになっていた。

それからもずっと岡崎さんの音楽は私のそばにいた。どんなときも優しく温かく包んでくれた。
辛く苦しいとき、岡崎さんに何度も救われた。
「人生が変わった」と言えば大袈裟になってしまうけど、岡崎さんは間違いなく私の人生に大きく影響を与えたアーティストだった。それぐらい今の私にはかけがえのない大切な存在になっている。出逢ってまだ数年のような人間だけど本当に感謝に堪えない。
 

岡崎さんがお亡くなりになった今でも他アーティストの方が岡崎さんの楽曲をカバーしたりライブで歌ったりしたということを耳にする。
また、今年の3月には平成アニソン大賞という企画でメロキュアの’’Agapē’’が’’高橋洋子さんの’’残酷な天使のテーゼ’’と並んで平成アニソン大賞ベスト楽曲に選ばれたりもした。
岡崎さんの残した音楽は今も輝き続けているんだなとその偉大さを改めて感じる。
今も岡崎さんのことを想っている人がたくさんいる。それが自分のことのように嬉しい。

岡崎さんは本当に素敵なアーティストだと思う。シンガーとしても作曲家としても作詞家としても才能に溢れていた。素晴らしい方だった。
岡崎さんの音楽は未だ尽きることのないパワーに満ち満ちている。10年20年前の曲でもリアルタイムで歌ってくれているような響きがあって何度聴いても新鮮に感じられる。それは今もそうだしこれから先もずっとそうなのだと思う。

強くない自分はこれからも岡崎さんの音楽にお世話になってしまうかもしれない。
それでも前を向いて生きなくちゃいけない。自分らしく。少しずつ。

最後に。
岡崎律子さん、誕生日おめでとうございます。
これからもずっと大好きです。

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