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はじまれ、何度でも

LUNKHEAD「ALL TIME SUPER TOUR」新横浜公演 ライブレポ

 ギターのアルペジオがフロアに響く。ベースとドラムが重なり、一歩一歩ボルテージを高める。刻むリズムに押し上げられたその先で、ギターソロが唸りを上げて炸裂した。
 悲しいわけではない。けれども何故か無性に泣きたい気持ちをこらえながら、一曲目の『白い声』を聞いていた。
 ステージにいるメンバーの顔が、姿が、しっかり見えて、音に込められた情景が直接降りかかってくるようだった。その距離感に、十年以上も前に受けた衝撃がよみがえる。

 私が『ライブハウスのライブ』を知ったきっかけはLUNKHEADだった。たまたま買ったCDの特典で参加したインストアライブ。そこで知った世界に、学生だった頃の私は夢中になった。
 新譜が出ると聞けば買い、行動範囲内で開かれるライブのチケットを先行予約で押さえた。ステージの間近で、周りにもみくちゃにされながら音に合わせて腕を振り、体を揺らした。ライブが終わる頃にはクタクタになった。Tシャツは汗まみれで、大音量を受け止め続けた耳は痛みを訴えた。熱狂が去り、一人寂しさに取り残されるような余韻から、次のライブを心待ちにする気持ちがまた芽吹いた。
 その繰り返しだった。

 ここまでLUNKHEADのライブに夢中になった要因に、メッセージの近距離感と説得力をあげたい。
 例えば心の弱さを吐き出す曲がある。心の望む在り方を率直に歌う曲がある。生きる痛みを、輝きを、鮮やかに切りとる曲がある。互いの存在を認め、支えあう可能性を歌う曲では聴き手も当事者になる。
 心をさらし、聴く側の心も引き入れようとする曲に共感させる力が彼らのパフォーマンスにはある。録音媒体からも感じられるが、真骨頂はライブでこそ発揮される。
 速弾きを織り混ぜたギターが魅せる。ベースが自由自在に動き回る。中央でドンと構えるドラムが土台を支え、体全体から絞り出すような歌声が響く。
 真摯な熱に向き合うのは、私一人ではない。導かれるまま突き出した腕は新たな灯火となって、フロアの温度を上げる。
 LUNKHEADの奏でる音はむき出しの心を、その心が望む夢を、ありのまま表現する。そんな音を搾りたて生で、同じ夢を望む人たちと一緒に浴びれるのが、LUNKHEADのライブなのだ。

 これほど夢中になっておきながら、しかし私は夢を追うのを止めてしまった。馬力のない心身では、社会の荒波に揉まれるので精一杯だった。それまでに見続けた夢は大いに私を支えてくれた一方で、夢を支える力が私にはなかった。
 時折彼らはどうしているのだろう?と気になってネットを検索した。新譜が出ていると知れば買った。だけど、ライブからはすっかり足が遠のいてしまった。

 月日がたって、私は変わらず荒波に溺れかけている。十年も溺れていれば、もはや環境自体に慣れてくる。惰性で日々をやり過ごしていた2019年6月、例のブログ事変を知った。
 バンド結成20周年に出した新アルバムのレコ発ツアーが売れない。バンドの存続すら危ぶまれる状況。青天の霹靂だった。折よくツアーファイナル前に知れたので、即行でチケットを買った。

 ブログの公開からツアーファイナルまで何が起きたのか、私は追いきれていない。ただ一筋縄ではいかない騒動を経て、当日を迎えたことをぼんやりと知るのみだ。
 不安はあった。でもきっと奇跡は起きる、起こせるはずだと信じていた。うちのめされても立ち上がれ、『はじまれ』と彼らは歌い、私たちはそう在りたいと望み続けてきたのだから。
 はたして奇跡は現実となった。やっぱりLUNKHEADのライブは最高だった。

 しかし、奇跡が奇跡と呼ばれるのは、何度も起きるものではないからだ。
 MCでALL TIME SUPER BEST の発売と20本のツアーが発表された時、正直に言って本当に大博打だな?!と驚いた。一度ならず20度も奇跡を起こせるものなのか?疑う一方で、乗り越えた彼らを目にしたいとも強く思った。
 一助になれればと、新横浜公演を観に行った。その幕開けが冒頭のシーンだ。

 色んなことがあった。ステージの上にいるメンバーにも、下で眺めるオーディエンス一人ひとりにも、色んなことがあったはずだ。
 20周年企画で作られた曲、『アス』は、色々の結晶だと私は思っている。

 『あなたの明日が幸せであるように』と願われて、私もこの願いが続くよう力になりたいと思いを新たにした。
 たった一人、無力な身で出来ることなんてたかが知れている。ならば同志を増やせばいい。そのために私なりにできること、LUNKHEADから貰ったものを、言葉を尽くして世に表すことからはじめようと思う。
 何度でもはじまって明日へ、遠くへ続いて欲しい。そんな願いをこめて。

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