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THE KEBABSが「録音」で魅せたロックの姿

予定調和じゃだりぃ、2020年の幕開け

2018年11月に突如襲来したロックバンド、THE KEBABS。イカした奴らの2020年初ライブは一風変わった名目で開催された。
2020年1月6日、下北沢GARDENで行われたライブのタイトルは「録音」。この日のライブは、2020年2月にリリースされるTHE KEBABSのファーストアルバム「THE KEBABS」に収録される音源を録音するために開かれた。

一日二部構成で開催された「THE KEBABS 録音」。
2月に発売されるアルバムに想いを馳せつつ、このライブの様子を記していく。
 

4名の手練れのアーティストが集まって結成されたTHE KEBABSの楽曲やライブは、どれも聞き応えのある骨太なロック、という印象があった。Vo.佐々木の熱のある歌唱と、(音も身体も)暴れ回る楽器隊の演奏につられて観客の拳が次々と天に向かって伸びていく。

そんなロックバンドのライブの幕開けはなんと、拍子抜けするほど可愛らしいものだった。

開演前のBGMが鳴り止み照明が暗転すると、舞台袖からスタッフがパンダのぬいぐるみをセンターマイクの前に配置した。
一身にピンスポットの光を浴びるパンダのぬいぐるみと相対する観客という図。これは、他のライブでは絶対に見られない。パンダに向けて観客からは笑い声と温かい拍手が送られた。
パンダのぬいぐるみが登場すると、会場には開演前の注意事項説明のアナウンスがなされた。なるほど、これはパンダが注意事項を説明するアナウンスをするという演出か、と思ったのも束の間、注意事項の喚起を行うアナウンサーの自己紹介がされたのでそういうことでもないらしい。まぁ、でも楽しいからいいか!と、そんなふうに思わせてしまうほどの明るさが、バンドメンバー登場前からライブハウス中を満たしていた。

「イカした奴らの登場だ!」

という声とともに、ついに舞台上に現れたTHE KEBABSのメンバー。
颯爽と現れるDr.鈴木に次いで、まるで恐竜のような足取りで登場するBa.田淵。Gt.新井がギターを手にすると、最後に佐々木が登場し、観客のボルテージも最高潮に達する。

今日の一曲目に披露される楽曲は、同時にファーストアルバムの一曲目に収録される楽曲だ。どんな骨太な強いロックが響くのかと胸を高鳴らせていた。

のだが、聴こえてきたイントロは思いの外ポップなメロディだった。
メロディアスでアップテンポなイントロから始まる一曲目は、新曲の『オーロラソース』。どう見ても無骨なロックを演奏しそうな4人から弾き出されるポップなメロディは、アンバランスなようでなんだか心地いい。
その心地よさを引き伸ばしながら、2曲目のイントロに続いていく。まるでswingかのような軽やかなイントロに、観客からは自然と軽快な手拍子が起る。そんな2曲目は『THE KEBABSがやってくる』だ。
佐々木が、「ケバブスがやってくる」というフレーズで観客にマイクを向けると盛大な大合唱が巻き起こる。気持ちよさそうに身体を横に揺らして音楽を聴く人、ぴょんぴょん飛び跳ねながら拳を突き上げる人。各々の楽しみ方で自由に音楽に身を委ねる姿が、そこら中に溢れていた。
心地よいビートが鳴り止むと、「ここからがロックバンドのライブだ!」とでも言うように、大音量で重低音が鳴り響いた。続く3曲目は『すごいやばい』。
2曲目まで聴いたところで、一瞬でも「あれ?ケバブス、ポップに転向した?」と思った私を一発殴りたくなるほど骨太なロックが、観客の全身に骨太なロックを響かせた。「すごくやばすぎる」という、フレーズで大合唱が起こると、アウトロが終わったときに観客から「ヤバーい!」「ヤバすぎる!」という歓声が次々と沸いてきた。
私の脳内も「すごくやばすぎる」なんて、物凄く観念的な感想で頭がいっぱいになったとき、佐々木がマイクを握って観客に向かって嬉しい言葉を投げ掛けた。

「ライブ音源がデビューアルバムとか、何十年前だよって感じだけどさぁ」
「2020年もロックバンドが一番カッコいいんだよ!」

佐々木の言葉に、観客のボルテージは急上昇。ロックスターのロックスターたる所以を肌で感じる瞬間だった。

そのままのテンションで始まる4曲目は先日MVが公開された『恐竜あらわる』。テンポの変化が激しいこの曲では、毒々しいピンク色と緑色の照明が印象的だった。その麻薬のようなコントラストに翻弄されることさえ楽しくてしょうがない。
サビでは「ガオガオガオ!」と、ただただ楽しいだけの大合唱が巻き起こる。ギターソロで新井がセンターマイクの前に立つと、荒々しさとテクニックをどこまでも磨き上げた音色が響き渡る。
彼ら自身はあくまで自身を「新人バンド」と言い張るが、その技術は明らかに玄人のものだ。
カッコ良すぎるギターソロに煽られたのも束の間、佐々木がセンターマイクに戻ると観客の注目はフロントマンの彼にすぐに惹きつけられるのだから、私は、ケバブスってやっぱりすごいやばいなぁ、なんて惚けてしまった。

5曲目は『ピアノのある部屋で』。
ピアノが編成に組み込まれているわけでも、同期の音源が流れているわけでもないのに、まるでピアノの音を聴いているときのように自然と姿勢を正してしまう印象のこの曲は、他の楽曲よりも音数が少ないからこそ、その『丁寧さ』が感じられる一曲だ。
アウトロの一音が鳴り響くと、歓声と共に拍手が巻き起こった。

その拍手が鳴り止むと、ライブハウスの中には、沈黙が生まれる。暗転したステージと沈黙するライブハウス。
その異様な雰囲気の中、まるで怪談のような佐々木の語りが特徴的な6曲目の『ホラー映画を観よう』が披露された。
これまでの楽曲とは、一味も二味も違う『ホラー映画を観よう』は、明確にTHE KEBABSの新たな一面だろう。イカした奴らの、一筋縄ではいかない性格が存分に溢れているように感じた。
暗転とピンスポットを繰り返して不気味な雰囲気を演出したまま、激しいアウトロに繋がっていく。

そのまま続くのは7曲目『メリージェーン知らない』だ。イントロのキメが演奏されると観客からは大きな歓声が沸いた。『ホラー映画を観よう』の恐怖から成る混沌が徐々に激しいビートになっていく様に、どこまでも翻弄されていく。新井が女性のような裏声で「I’m not Mery Jane.」というフレーズを歌う際の、田淵と佐々木が、新井の周りを取り巻くように立つ様子は、先ほどまでのホラー感を忘れてしまうほど楽しげだ。

佐々木が
「T B C!」
と告げ田淵の方を指差すと、田淵の攻撃的なベースのイントロが魅惑的に響く。
8曲目は、新曲『THE KEBABSは忙しい』だ。
佐々木と田淵のツインボーカルで構成されるこの曲は、マイナー調でアップテンポなメロディが印象的だ。ピンク色の照明が映える、ちょっとオトナなイメージのこの曲もTHE KEBABSの新たな一面だろう。
歌詞もメロディも、とても情報量の多い『THE KEBABSは忙しい』から続くのは、逆に情報量を最小限まで少なくした『猿でもできる』だ。「踊れるやついるか/猿でもできる」の二言のみで構成されるこの曲は、本当にタイトル通り、猿でも踊れる曲だ。佐々木が観客にマイクを向ければ、誰でも歌える。「猿でもできる」の大合唱の中、佐々木はとうとう前方の観客の上に立ち、身を乗り出して観客全体を煽る。その後ろでは、鈴木の前に集まった新井、田淵が向かい合って飛び跳ねながら演奏をする。
観客も観客で、各々のやり方で踊る様子はまさにカオス。

THE KEBABSにかき回され、頂点に達したボルテージはそのままに、『枕を変えたら眠れない』のイントロが鳴り響いた。THE KEBABSの楽曲で(ライブ開催時点で)唯一サブスクリプションが解禁されているこの曲のイントロが聴こえるや否や、観客のテンションは上限突破。THE KEBABSのキラーチューンと言っても過言ではないこの曲が、この日のライブの本編最後の曲となった。
「枕を変えたら眠れなくなるから」というサビのフレーズで合唱が起こると、「欲しいのはお前だけ」というフレーズで佐々木が観客を指差す。決して予定調和ではないのに、一斉に観客の拳が突き上げられる様子は、まさに『ロックバンドが一番カッコいい』という佐々木の言葉を再現しているようにも感じた。

「お前だけ」
という強いフレーズを残して、一度ステージを降りたTHE KEBABS。
観客からのアンコールに答えて再登場すると、会場は再び盛り上がりを取り戻した。

ステージに戻ってきた佐々木が一言、
「ビール持ってる奴、いる?」
と告げると観客からは笑い声と煽るような歓声が起こる。佐々木の言葉に、隣の田淵は佐々木を小突くような仕草を見せたが、その頬は緩んでいたように思う。
そんな、ある意味で緩んだ空気を一変させるイントロが大きな音で響いた。

アンコール一曲目は、お待ちかね『THE KEBABSのテーマ』だ。印象的なキメと共に観客の拳も大きく揺れる。
「いかしたやつら!」のコールも、「KEBABS!」のコールも、この日1番の声量で巻き起こった。
「予定調和じゃだりぃ」というフレーズにこれほど説得力のあるライブが存在するだろうか。予想していた何倍も様々なTHE KEBABSを見せつけられ、その全てに掻き回され、最終的に魅了されてしまう。
この曲で佐々木は、「猫は可愛がる」「この人たちも可愛がる」と、上手に集まって演奏する新井と田淵を指差しながら歌ったり、「出待ちに関わらない」という、簡潔にTHE KEBABSのあり方を提示したフレーズの後に「でもお前ら愛してるぜ!」とイカしたフレーズを繋ぐなど各所で遊んでは観客を盛り上げた。

『THE KEBABSのテーマ』のテンションを引き連れたまま、ラストの曲に続く。
アンコール2曲目は、なんと新井が所属していたロックバンド、serial TV dramaの名曲『まばゆい』だ。佐々木と田淵のツインボーカルで披露されたこの曲は、これまでの曲とはまた異なる爽やかさが印象的だ。自然と一体になる観客の拳が示す先には、白い照明を一身に受ける4人が立っていて、「2020年もロックバンドが一番カッコいいんだぜ!」と、今度はこちらが叫んでしまいたくなるくらい印象的な姿があった。
と、思えば間奏のキャッチーなフレーズやコーラスを聴けば、自然と笑みが溢れてしまう。

ラストの「見えるかい?」を観客と一斉に歌い、圧倒的な迫力で爆音を鳴らしてさっさと帰ってしまうと思いきや、帰り際に田淵が告げた
「あっ、今日の最後の曲、初回限定盤に収録されるよ」というついでにしては大きすぎる発表に、最後まで観客のボルテージは上がり続けた。「アンコールラストがヒトの曲って」と、彼らは笑っていたがその想定外まで魅力的に聴かせてしまうのはTHE KEBABSの力だろう。
 

「録音」と称した実質1時間弱のライブであっても、THE KEBABSが持つ様々な顔を披露するだけでなくドラムソロのパートまで用意された構成は、まさに『予定調和じゃだりぃ』と歌うTHE KEBABSだからこその魅力だろう。
どこまでも予定調和ではいかない、はみ出した部分まで魅せてしまう、最高にカッコいいロックバンドの姿がそこにはあった。
だって、ギターソロと、ギターソロ後のボーカルが被っても、どちらも負けずにカッコよく聴かせてくるロックバンドなんてそうそういない。

THE KEBABSは、2020年も『一番カッコいいロックバンド』を貫いていくのだろう。彼らの“すごいやばい”今後に、一瞬たりとも目を離すことはできない。
 

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