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TURTLE ISLANDとの出会いと衝撃を

世に広めたいTURTLE ISLANDというバンドと橋の下世界音楽祭という新しいかたちのフェス

 いまから5年前、高校3年生の僕はMOROHAのライブを見るために今はなき十三ファンダンゴにいた。MOROHA目当てで行ったライブだから、対バン相手のことはよく知らず、特に興味もなかった。その対バン相手に数年後熱中するなんて心にも思っていなかった。その対バン相手とはTURTLE ISLAND。やたらと人数が多く、メンバーも若くはない。和太鼓やラッパの他にも見たことのない楽器がいくつかあり、第一感よくわからないバンドだなと思った。しかし数分後にはステージに夢中の僕がいた。凄まじかった。当時からライブハウスに通い、色んなアーティストをみてきた。周りのどんな高校生よりも幅広いジャンルの音楽を聴いている自信も当時は持っていた。なのに目の前のステージでは聴いたことのない音が衝動とともに僕の体内に飛び込んできている。フロアには見たことのない案山子のようなものを振り上げてオーディエンスと共に踊るメンバー、様々な国や地域の伝統楽器が混ざり合い流れ出すロック。高校生の僕には、意味が分からず、目の前で何が起こっているのか理解できなかった。しかしやばいことだけはわかった。目当てでいったMOROHAのライブを忘れるほどの衝撃を家に持ち帰った僕は、さっそくYoutubeで検索した。が、ほとんど音源が出てこない。アルバムを聴きたいと思ってもどうやって入手したらよいかわからないという状態だった。この衝撃を周りに伝えても当然伝わるはずもなく、僕はこの決して忘れることのできない夜を心のどこかにしまっておこうと思い、日々をまた過ごしだした。僕がTURTLE ISLANDともう一度出会うのはその3年後だった。
 
 

 3年後の話をする前にTURTLE ISLANDというバンドの説明とレベルミュージックの話をしたい。
 TURTLE ISLANDは朝鮮にルーツを持つボーカル永山愛樹率いるバンドである。ジャンルとして、八百万ロックと評されるとおり様々な国や地域の伝統音楽を取り入れている。メンバーは総勢17人と言われるが、全員そろっていることはほとんどない。そしてレベルミュージックとしての側面も持っている。レベルミュージックとは、日本語で反抗の音楽と訳されるとおりに社会権力や現体制に対する反抗を音楽という表現方法を用いて表す音楽である。レゲエやヒップホップ、パンクなどのジャンルがレベルミュージックに当たるとよく言われるが、僕個人の定義としてはジャンル関係なく、「アーティストが自分の現状を変えるためではなく、社会を変えるために奏でる音楽」であると考えている。だからレゲエアーティストが自分の愛についてや、ラッパーが自分やばいだろみたいな歌を歌ってもそれはレベルミュージックではないと思う。日本の代表的なレベルミュージックを奏でるアーティストとして名前が挙がるのは、阪神淡路大震災を歌った満月の夕が有名なソウル・フラワー・ユニオンや選挙フェスの三宅洋平率いる犬式、レゲエではFIRE BALL、ヒップホップではSHINGO★西成などがいる。
 政治的表現を大っぴらにすることを嫌う日本では、彼らが表舞台に登場することは少ない。しかし3.11以降はGotchを代表する数多くのアーティストが政治的表現を行うようになってきており、社会も徐々にそれを受け入れつつある。このような現状を考えれば、彼らが表舞台に登場する機会も今後増えてくるのではないだろうか。
 

話を戻そう。
 

 大学生になった僕には好きな居酒屋ができた。そこにチラシが1枚貼ってあった。TURTLE ISLANDのライブフライヤーだった。開催日は翌日。もう2度とみることはないと思っていたTURTLE ISLANDと出会える機会が目の前にあった。心の片隅に追いやられていたあの夜の思い出が一気に甦った。すでにあった予定も無理を言って断り、京都木屋町のUrBANGUILDに向かった。ステージには変わらず彼らが立っていた。3年ぶりにその音と再会した僕は、高校生のときと変わらぬ衝撃をしっかりと受け取った。大学生になってお金もあったし、今回はちゃんとCDを買って帰った。そして高校生の時と一番違ったのは、TURTLE ISLANDがやばいという僕の話を理解してくれる人が周りにいたことだった。フライヤーの貼ってあった居酒屋で常連さんたちとたくさんTURTLE ISLANDの話をした。共有できることが嬉しかった。すると常連さんから6月に愛知でフェスをしてるから行くと良い、価値観が変わるよと言われた。フェスなんて今までたくさん行ってきたし、価値観が変わるようなフェスなんてもうないと思っていた。違った。やばかった。

 彼らが主催しているフェスは「橋の下世界音楽祭」という名のフェスだ。本当に愛知県豊田市のある橋の下で行う。完全なDIYフェスで、設計図なんてものはなく、参加者各々が勝手に作り上げる。出店する屋台が2階建ての櫓を作ったり、どこかの誰かが巨大な大仏の顔を作り置いていたり、ブランコを作ったりしていた。フェス開催中も会場作りは進んでおり、鳥居をフォークリフトで運んでいたり、藁で大きな船を作っていたり。出店もキセル屋や鍛冶屋、桶屋など普段のフェスではみないものばかりだった。会場についた僕が初めに思ったことは、「あーーちょっと待って、わからん、えっどうなってんの?」だった。YouTubeにフェスの様子が上がっているので詳しくは映像でチェックしてもらえればと思う。
 フェス内容も変わっており、ロックバンドのライブが終わったと思えば、阿波踊りの大行列が後方から現れ、その横では秋田民謡をおじいさんが歌っている。かと思っていれば盆踊りが始まり、獅子舞も踊り狂う。僕はロックやヒップホップをずっと聴いてきて、常識がなんだ、などと心の中では考えていた。でもちゃんとしなきゃ。ちゃんと生きなきゃという常識に縛られて生きてきた。ここは違った。常識なんてなかった。しかしこの空間を共有している人たちはみんな楽しそうだった。常連さんが言ったとおりだった。価値観が変わった。
 

まとめる前に話を少しわき道に。
 

 フェスの小さな思い出の1つとして、ライブ中にモッシュをしていてパッと横を見たらTHA BLUE HERBのBOSSがいたことがある(笑)。
 そして真面目にこの橋の下世界音楽祭を分析すれば、このフェスは現在飽和状態になっている日本のフェス産業の最先端をいくものである。DIYでしかもオーディエンス参加型というのは、最近いくつかの新しい生まれるフェスが差別化を図るために取り組んでいることだ。また数多くのワークショップもあり、音楽に興味のない人でも空間を楽しむことができる仕様になっている。これも音楽を楽しむ場から空間を楽しむ場に移行しつつある最近のフェスを現している。そして投げ銭方式を採用している。これはGEZAN主催の「全感覚祭」で行われ、現在注目を集めている方式だ。また地域振興としてのフェスという一面も持っている。愛知県豊田市にこだわりを持ち、地元企業の協賛も得ている。昨年チケットぴあと静岡県吉田町が協力し「ITADAKI」フェスのチケットをふるさと納税の返礼品とする事業の展開を始めた。他にも個人的に行った新潟県三条市で行われている「三条楽音祭」など行政が地域振興としてフェスを利用した形など、地域振興としてのフェスは近年のトレンドの1つである。このようにフェスとしても非常に様々な要素が詰め込まれたフェスなのだ。
 

話を戻し、まとめに入れば
 

 僕はこのTURTLE ISLANDというバンドに価値観を砕かれた。今までジャンルレスに多くの音楽を聴き、多くのイベントに足を運んでいると自身では思っているが、このような衝撃を与えてくれたバンドは他にいない。初めて出会い、3年後に再び偶然出会うことができた。この偶然に感謝しつつ、僕は今日もTURTLE ISLANDを再生する。このTURTLE ISLANDというバンドを少しでも多くの人に知ってもらえれば、僥倖だ。だらだらとわき道にそれながらの読みにくい文章を最後まで読んでいただきありがとうございました。

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