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さようならプロフェッサー、ありがとう世界最高のロック・トリオ

ラッシュ ニール・パート 死去に寄せて

 2020年になって、突然ヤフーニュースで、ニール・パートの訃報を知った。訃報をみてパソコンの画面上で思わず叫んだのは今回とプリンスの時だけだ。ニールの引退報道は知ってはいても、心の隅っこでかすかに期待していた来日公演はもうこれで永遠にありえない。悲しい事に死去から1週間たってもロッキング・オンのニュースは彼の死に触れてもいない。1月14日になって、やっとコメントのまとめ記事が載った程度だ。

 昔からRushはどうして日本ではこうも扱いが小さいのだろう。ゲディー・リーの甲高い声が受け付けられないのか?ニール・パートの書く歌詞が難解過ぎるからか?それともアレックス・ライフソンの体重が増えたからか?海外では人気、評価共に高いものがあるにもかかわらず、日本では結局唯一となった1984年以降来日公演もなく、知る人ぞ知るバンドになってしまった。
 40年を超えるキャリアを通じ、音楽面にしても技術面にしてもRushはほかのどのバンドとは似つかない、独自の進化を遂げた。ポップでもなく、プログレでもなく、ヘビーメタルでもない。単純にカテゴライズしにくいその独自性は逆に不幸にも日本のマジョリティーにはあまりハマるものではなかったのだろうか。King Crimsonはあれだけ日本人に好かれているのに。

 1989年当時、YouTubeなんて便利なものはなかったので、映像モノはかなり貴重、かつ高価だった。プログレに関心を持ち始めた当時大学生になりたての私は、イエス、ELP、ジェネシス、ピンク・フロイド、ツェッペリンといった有名どころがオムニバスで収録された「ロック・エイド・アルメニア」というVHSビデオを、アルメニア地震のことなど知らぬまま買った。ロック界の巨匠(Deep Purple, David Gilmore, Brian May, Keith Emerson, Paul Rodgersなど)らが和気あいあいと演奏するSmoke on the waterが売りのその映像集の中に当時全く名も聞いたことがない、無茶苦茶うまいバンドがいた。それがRushで、曲はThe Spirit of Radioだった。トリオのはずなのに、音が分厚く、余裕で複雑かつヘンテコな曲を弾きこなし、甲高い声のボーカルは同時に複雑なベースラインはともかく、足でキーボードペダルも弾いている。ギターもよく見たらベースペダルも同時に弾いてるぞ。ドラムは360度セットが組まれてるけど、どう叩くんだ?それよりどうやって中に入るんだ?

 とりあえず、輸入盤のShow of Handsを同じくVHSで購入したが、とにかく音の密度と演奏の凄まじさに衝撃を受けた。特に曲中にボーカル・ベース・キーボードを巧みに切り替え、時に同時にこなすゲディー・リー。本当に3人だけの演奏なのか?当時は食い入るように何回も映像を見て、どの音をだれが出してるのか探したもんだ。そのあとは一つずつアルバムを購入していった。しばらくすればゲディーの声にも慣れたし、何しろラッシュはやたらタイトルがかっこよかった。Red Sector AやForce Ten、La Villa Strangiatoとか意味はよくわからんが、響きがむちゃかっこよかった。
 ニールが書いている歌詞も最初は難しいと思ったが、Farewell to kingsやCloser to the heartなどを聞くと比較的わかりやすいし、Tom Sawyerの歌詞に至ってはいまだに何のことかわかっていないが、まあ気にしなければよい。Tom Sawyerはエアドラムの曲なんだから。
 ニール・パートは要塞といわれる、360度全方位のドラムセットを駆使し、ドラムソロにしてもメロディーときちんとした起承転結がある、緻密でありながら、荒々しい、時に遊び心があるドラムはいつ見ても飽きないものだった。

 今回のニール・パートの死去によって、Rushの歴史も終わりを迎えるのだろう。今回ネット上では彼の死去に関する記事が数件見受けられたが、それに寄せられる多くのコメントが熱心なファンや彼の影響を多分に受けたアーティストによるものだった。ドリーム・シアターやフー・ファイターズを始め、今の多くのハードロック・バンドは彼らの影響を受けてきたはずだ。
 ありがたいことに彼らは多くのライブ映像作品を残している。今からでも多くの日本人にRushというカナダのバンドを知って、彼らの遺産を次の世代につないで欲しいと祈る。
 ゲディー・リー。アレックス・ライフソン、そしてニール・パートという3人の超人を擁するRushは本当に偉大なバンドだった。ロックの歴史上、世界最高のロック・トリオは誰かと聞かれたときに、様々な答えが出るだろう。しかし、Rushという答えに納得する人は多いはずだ。

さようなら、ニール・パート。安らかに。
そしてありがとう、世界最高のロック・トリオ、Rush。

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