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MAGiC BOYZの話をしよう

永遠にカッコイイありのままでマジボ

MAGiC BOYZというヒップホップグループがいた。何故過去形かというと、メンバー全員2018年にMAGiC BOYZを卒業しているからだ。
恐らくほとんどの人がMAGiC BOYZの存在を知らないまま、彼らは活動を終えた。ファンである私が言うのは辛いことだが、どこの界隈においても認知度はあまりなかったと思う。有名アーティストから楽曲提供を受けていたり所属事務所が大きいことから、名前だけは聞いたことのある人はいるかもしれないが、曲まで聴きこんでいる人は一部であっただろう。広く深い音楽業界の中で見つけてもらえる音楽はほんの一握りであるが、彼らの音楽は多くの人に見つかるべきであったし、最高が更新されていく彼らの姿をもう見ることができない事実は残念だし無念だ。しかしだからこそ今、MAGiC BOYZの話がしたい。こんなに攻めていたカッコイイグループがいたことを1人でも多くの人に知ってもらいたい。

MAGiC BOYZはスターダストプロモーションのヒップホップグループである。略称マジボ。スターダストの音楽部門といえばももいろクローバーZが有名で、男性グループだと最近は超特急やDISH//を筆頭にボーイズグループが出始めている。ダンス&ボーカルグループやダンスロックバンドなどキャッチーな曲でファンを魅了するグループが事務所でも多い中、マジボはかなり異質だった。高校生の3MCと小学生の1DJスタイル。そう小学生。ここでどうしてもイロモノに見られてしまうかもしれない、そして実際私の第一印象はまさにそうだったので否定できない。マジボはあらゆる面で尖っていた。

スターダストの別のグループが好きだったため、名前と小学生がいるヒップホップグループという情報だけは元々知っていた。ただ、情報があまりに混沌としていたため、ボーイズグループってこんなことをしているグループもいるんだなぁ、と俯瞰的に見ていて正直に言うと興味は全くなかった。見た目だけで偏見を持っていたのだと思う。
そんななか、スターダストの男性グループが集まって演奏するライブ「EBiDAN THE LIVE 2016」の映像で初めてマジボのパフォーマンスを見た。衝撃的だった。音楽を通じてなにか感じた、とかラップのスキルがある、とかそういう言葉にできることではない。単純にライブが見ていて本当に楽しい。画面越しに見ているだけでも大興奮した半面、この場に自分がいなかったことが猛烈に悔しくなった。先輩グループがいる中で初めての大舞台だったみたいで、ダンスグループが好きなファンばかりいる、どアウェーな環境の中で半ズボンを履いた姿でラップしながら笛を吹いて客を煽る。ただただ楽しい。MAGiC BOYZの魔法にすぐにかけられてしまった。
 

後から調べて分かったのだが、このとき披露されていた曲は「Do The D-D-T‼」。
小学生がいるグループに歌わせるには意味深すぎる歌詞だが、私がマジボを知って好きになっていくうちに、ハマった原因として一番に挙げるのはこの“違和感”かもしれない。

先に挙げたようにマジボは有名アーティストからの楽曲提供が多い。PES(RIP SLYME)、NIPPS、SUSHIBOYSなどヒップホップ界隈だけでなく、OKAMOTO’Sのオカモトレイジからもプロデュースされていた。DOTAMAやDJみそしるとMCごはんなどともコラボし、また、過去にはZEN-LA-ROCKがメンバーにいたなど情報量が多すぎてカオス状態。
そんな周りの大人たちから愛されていたマジボの楽曲は本当に外れがない。提供者が実力派だから、と言われればそれまでだが、それを自分達の曲として歌いこなすマジボがいたからこそ成り立っていたし、紛れもなくMAGiC BOYZの楽曲だ。

言い方が悪くなるかもしれないが、最初は彼らの音楽は“やらされている”に近いものだったと思う。事務所で今までにないヒップホップグループということで、周りの同世代の子達が歌ったり踊ったりするなか、マジボのメンバーはラップを極めた。特殊であった為か最終的な4人に落ち着くまで、メンバー交代は何度もあった。思春期真っ只中で自分達だけ違うテイストの音楽をやることに抵抗はあっただろうし、実際に本人たちも最初はヒップホップに戸惑いがあったとインタビューでも語っていた。ライブでチケットが半分しか売れていないことをネタにラップしていたし、CDの売上枚数も他のグループと比較してうまくいっていないことをMCで言っていた。それでもトーマ、リュウト、マヒロ、ジョーの4人は、ヒップホップを大人に“やらされていた音楽”を自分達の“やりたい音楽”に変えていった。過去の映像と見比べてもスキルが成長しているのが目に見えて分かるし、彼らは伝えたいことを剥き出しにしてぶつけていくようになった。

学生時代にKICK THE CAN CREWやRIP SLYMEは好きで聴いていたが他のグループには触れたことがなく、ヒップホップは私にとってあまり馴染みのない文化であった。だからこそマジボに衝撃を受け、すんなりと受け入れることができたのかもしれない。
3MCは高校生なのでリリックは学生ならではのものが中心。最近流行りの高校生フリースタイルを見ていても思うが、普通ならそこで窓ガラスを割るような激しい主張だったり、誰しもが学生時代に感じる孤独だったり、何者にもなれない虚無だったりとアングラな一面がラップとして紡がれることが多い。しかしマジボは違う。彼らは校則あるあるや自分の髪色が黒であることや100億円あったら何をしたいかを歌っている。小学生ジョーが違法ドラッグはだめ、と伝える世界。楽曲制作陣も歌い上げるマジボも見事だ。

正直どこの層にMAGiC BOYZが響くのか分からない。ヒップホップ好きからするとラップの技術はまだまだだろうし、子供だからという理由で遠ざける人もいるだろう。ボーイズグループ好きからしても、歌って踊るわけではないからペンライトは使わずタテノリだしキメ顔や黄色い声が飛ぶ場面もない(早口で捲し立てる姿は最高にかっこいいけれど)。
それでもヒップホップが大好きになり自らの意思で活動していた彼らの姿は誰よりもカッコよかったし、“心地のいい違和感”は癖になる。マジボは最新シングルとして2018年3月に「ハッピーエンドマジック」を出し、そのまま卒業を発表した。結果的に最終シングルのタイトルが「ハッピーエンドマジック」となったことは、意図してだったのか偶然だったのかは謎である。けれど最後にリリースされた「ハッピーエンドマジック」と「O.NE.DA.RI」を聴いたとき、遂にマジボの時代がきてしまったと強く確信していたしこれから上手くいくと思っていた。

不運なことに私がマジボを生で初めて見ることができたのは、2018年7月の卒業ライブだった。ライブにずっと行きたいと思っていたが予定が合わず、卒業してしまうと聞いてその日だけはなんとしてでも行きたくて向かったのだ。フェス等でも生では見たことがなかったのでいきなりのワンマンだったが、こんなに初ワンマンを楽しめたグループは他になかったかもしれない。客層も盛り上がり方も完全にヒップホップ寄りで凄かったし、映像で見るより何倍も楽しかった。大好きなアーティストが増えた!と心から嬉しくなった。
そしてそれと同時に、これからどうすることもできない沼にハマったことに絶望した。これは卒業ライブ。今日改めて大好きになったグループに今日でお別れなのだ。世の中はこんなに不条理なものなのかと思うと涙が出たしライブ後は自分でもよく分からない感情になっていた。けれどもし、もしもマジボが卒業を発表していなかったら私はライブに足を運ぶのをまた先延ばしにしていたかもしれない。行けるときに行こうと後回しにし、ここまでハマっていなかったかもしれない。現に卒業ライブに行ってからマジボへの熱は加速し、過去の動画を漁り音源を全て隈なくチェックしたのだから皮肉なものだと思う。とても切ないことだが、出逢うべくタイミングで出逢ってしまったのだ。私のこの感情は2018年7月からずっと彷徨っていて収まりがつかない。
 

また明日 過ぎて忘れるだけ
また逢う日までただそれだけ
とりあえず 今日はお別れして
また逢う日 また逢う日

揺れ動いてくエモーション
それぞれの道を歩いていこうよ
終わらない今日は
俺らのMy graduation
 

卒業ライブの本編ラストで歌われた「3.141592」の歌詞だ。活動しなくなったグループを後から知ることはこの上ない絶望がある。ただ、それでも出会えてよかったと心から思っている。彼らの楽曲は消えるものではないし、私のプレイリストで永遠に色褪せることなく輝き続ける。MAGiC BOYZが日本の音楽界に存在したことだけでもここに記しておきたい。マジボはお前を飽きさせない。

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