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それぞれの鍵を受け取って

BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora arkの余韻

 
aurora arkが、去年のツアーになってしまった。
 

ツアーには、2回参加することができた。
ほとんどの曲で泣いていたこと、「新世界」だけは驚きと楽しさが勝って笑っていたこと、そして1曲、泣き崩れたことを覚えている。
 

11月3日。
ツアーセミファイナル。
私にとってはファイナルだった日。

本編ラストは「流れ星の正体」。
どこに居たって、必ず見付ける、曲を届けると、力強く奏でられた。
残響が消える最後の最後まで、精一杯聴いた。
 

そしてアンコール。
藤くんが何やらアルペジオを弾き始めた。
8分の6拍子だった。
「同じドアをくぐれたら」だと分かった。
ツアーで何度かアンコールに演奏されていて、聴きたいと思っていたから、すごくすごく嬉しかった。

でも、「流れ星の正体」のあとのこの曲は、もう、ダメだった。
 
 

《もう 気付いたろう 目の前のドアの鍵を
受け取れるのは 手の中がカラの時だけ
長い間 ここは居心地が良くて
いつの間にか いろいろと拾い過ぎた》
 
 

ライブの終わりを突き付けられているようで、始まりから、うずくまって泣いている自分がいた。
明日のチケットは持っていない。私のドアの向こうに、BUMP OF CHICKENはいない。
目の前のドアの鍵なんかいらないから、もう少し、居心地の良いここに居させてほしいと願わずにはいられなかった。
 
 

《どれもが 温かくて
失い難い いくつかの光

手に入れる為に捨てるんだ
揺らした天秤が掲げた方を
こんなに簡単な選択に
いつまでも迷う事は無い
その涙と引き換えにして 僕らは 行ける》
 
 

耳と、目と、心に、たくさんの温かい光をもらった。失いたくないものをたくさんもらった。なのに、それを捨てろと言われているのだろうか。引き換えにするくらいなら、もう何もいらない。

そんなことを考え始めてしまったせいで、もうすぐ終わるんだからしっかり見なくちゃって思うのに、顔を上げることさえできなかった。

更に、2番で追い討ちをかけられた。
 
 

《さぁ 時は来た 繋いだ手を離すんだよ》

《恐らく もう 戻れない
いつか忘れる 君と居た場所》
 
 

手を離す、戻れない、忘れる…ひとつひとつの言葉が怖かった。
呼吸がおかしくなるくらいには泣いていた。

聴きたいと思っていた曲だったのに、歌詞も分かっていたはずなのに、このタイミングで聴くと、なんでそんなこと言うのと思ってしまって、とにかく悲しくて寂しくて仕方がなかった。

でも、
 
 

《振り返らないで 悔やまないで
怖がらないで どうか 元気で
僕は唄うよ歩きながら
いつまで君に届くかな》
 
 

そうだった。
どこに居たって曲を届けると唄ってくれたばかりだった。
あんなに伝えてくれたのに、寂しく思ってしまったことを反省した。
唄ってくれるなら、いつまでだって、どんなに遠く離れていたって、受けとめなければ。

ここまで聴いて、やっと顔を上げることができた。
 
 

《その涙と引き換えに
その記憶と引き換えに
この歌と引き換えにして
僕らは 行ける》
 
 

今日の記憶はだんだんと薄れてしまう。それはもう、どうすることもできない。だけど、この時間があったことは事実だから、ここで受け取ったものは本物だから、たとえ忘れてしまっても、今日の続きの明日を、その先の未来を、生きていくんだと思った。私が受け取りさえすれば、いつでも、どこでも、曲がそばにいてくれる未来があるから。
 

「同じドアをくぐれたら」が最後の曲だったら、立ち直れなかったかもしれない。
曲を聴けた喜び、終わりへの恐怖、別れの寂しさ、未来への希望。同時に存在しがたい感情が一度に押し寄せてきて、ぐちゃぐちゃな気持ちでいっぱいになってしまった。
アンコール2曲目の「メーデー」が、優しくて、力強くて、ぐちゃぐちゃな気持ちをまるごと包み込んでくれたから、この日をどうにか無事に終えることができた。
 
 

年が明けて、やっと「同じドアをくぐれたら」を普通に聴くことができるようになった。
ただ、私にとって、何かを決断する時に背中を押してくれる曲だったはずなのに、ライブが終わる時の寂しさがぎゅっと詰まった曲になってしまっている。でも、これはこれで、ライブに行った証拠なんだと思うことにしている。

あの時、あの場所にいた50000人は、どんな思いで聴いていたのだろう。無事に鍵を受け取ることができただろうか。ドアの向こうは、どんな景色なのだろう。
それぞれの鍵を受け取った先で、それぞれの今をどう過ごしているかなんて、知る由もないけれど、あの時間があまりにも特別な時間だったせいで、そんなことを考えてしまう。

私は私のドアの向こうで、なんでもない毎日を過ごしている。なんでもないのに、こなすだけで精一杯の毎日を。
いつか、また会うための約束の鍵を受け取れるように、そんななんでもない毎日を、どうにか繋いでいきたいと思う。

きっと、今もどこかの空を飛ぶaurora arkの存在を信じて。
 

※文中の《 》内は、すべてBUMP OF CHICKEN「同じドアをくぐれたら」より引用

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