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エレキ・ギター女子萌え

NUMBER GIRL『NUM-HEAVYMETALLIC』の脅威

「女性のどんなところに惹かれますか?」と聞かれたら、「自分が苦手な事を難なくこなす人」と答える。外見的にはボーイッシュとかメガネとかだったりするのだけれど、それ以外の要素だと、絵が描ける、パソコンのブラインドタッチができる、車の運転が上手いなんてところに惹かれてしまうし、小学生の時から好きになるのは頭が良くて宿題をきちんとやってくるような真面目なタイプで、今でもそれは変わらない。

同じように、ギターの弾ける女性というのも非常にポイントが高い。それもアコースティックじゃなくてエレキが良い。もっと細かく言えばハードなメタル系よりもクールなロック系がベストだ。ベースやキーボードは当たり前過ぎるしドラムは結構いい線までいくのだけれど、やはり自分が全く弾くことのできないエレキ・ギターには何か特別なものを感じてしまう。

初めてNUMBER GIRLを聴いた時、このささくれ立ったギターを弾いているのが田渕ひさ子という女性だということにまず驚いた。ギターはバンドの中心人物でヴォーカル担当の向井秀徳も弾いているらしいのだが、ライヴに行った事も映像を見たこともないので具体的にどの部分を彼女が弾いているのかは不明なのだけど、それがかえってミステリアスさを倍増させてドキドキしてしまったりする。

まぁ、そういった萌えポイントを抜きにしてもNUMBER GIRLは非常に魅力的なバンドだ。何かが憑依したかのような狂気じみたヴォーカル、硬質で切れ味鋭いギター、シンプルだけど重量感のあるベース、やたらと手数の多いラウドなドラム・・・それらが一体となったダウナーで不気味なガレージ・サウンド。正統派のTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTやBLANKEY JET CITYも含め、爆音ガレージ・タイプのバンドが普通にメジャーで活躍出来ていた90年代というのは、いろんな意味で良き時代だったんだとしみじみ思う。

メジャーでの活動期間わずかに3年、リリースしたオリジナル・アルバムは3枚。全て必聴の名盤なので手っ取り早く全部聴いてしまえばいいのだけど、あえてその中から一枚だけ選ぶとすれば、最終作の『NUM-HEAVYMETALLIC』以外はちょっと考えづらい。このアルバムはNUMBER GIRLの最高傑作ということだけじゃまるっきり収まらない圧倒的な存在感があり、2000年代以降でこれに匹敵する邦楽ロック・アルバムを探すのはなかなか骨が折れる作業だと思う。

まさしく脅威。それまでの2枚とは明らかに次元の異なる音響の迫力と重量感。元々緊張感の高いバンドではあるけれど、こんな一触触発のアブナイ状態は他の2枚には感じられなかった気がする。オープニングのタイトル曲でいきなり度肝を抜かれる。文字通りのメタリックでヘヴィなダブ・ビートが、聴く者を得体の知れない工場地帯へと誘い、巨大なハンマーで全身を容赦なく地面に打ち込んでゆく。続く「INUZINI」の追い討ちをかけるようなドラムの連打で、ついには地球の裏側まで貫通してしまう。

「NUM-AMI-DABUTZ」、「Tombo the electric bloodred」、「MANGA SICK」、「性的少女」では、正体不明のモノノケが威嚇するかのごとき轟音ギターがうねりをあげる。こんな物騒極まりない凶悪なギターをあんなか細い田渕女史が弾いているのかと思うと、全身にバチバチと電流が流れ、ビリビリと痺れが止まらなくなってしまう。

そして、NUMBER GIRL史上最狂のビッグ・ウェイヴ・チューン「CIBICCOさん」が襲来。コントロールを失って暴走するブルドーザーのようなベースラインとドラミング、危険を煽る警告音のようなギター・リフ。向井が連呼する「チビッコさん」って一体何者なのかはようわからんけれど、多分めちゃくちゃ物騒なヤツなんだろうと思う。息つく間もなく迎える曲の終盤、向井の珍しく穏やかで透き通るような歌声が流れ、ハンマー・ビートに乗って激しく奏でられるセンチメンタルの化身となったギター・ソロが、まるで鎮魂歌のようにあたり一面に響き渡る。

それにしても、こんなとんでもないアルバムを作ってしまったら、もうその先には何もなく、バンドには解散するしか術がなかったのではないか。内情を何も知らない部外者の僕ですらそんな想像をしてしまうほど、『NUM‐HEAVYMETALLIC』には全身全霊をかけてしまったような凄まじいエネルギーが満ちている。最終曲「黒目がちな少女」での向井の悲痛な叫びには、そんな諸行無常の思いが込められているようにも聞こえてくる。

解散から16年余りを経た2019年2月、突如再結成したNUMBER GIRLは、果たして新作のアルバムを作ってくれるのだろうか。『NUM‐HEAVYMETALLIC』というとんでもない金字塔を打ち破るものなんて、そんな高望みはしないけれど、もしかしたら同じくらいのものは作ってくれるんじゃないかと期待してしまうのは、結局のところ同じことなのかもしれない。

(曲のタイトルはCDの歌詞カードによります)

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