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かつての自分と今の自分と

「週刊少年ジャンプ」と夢とRADWIMPSと

夢みること。憧れること。

これらのことは物語の中で、昔から美しく描かれてきた。夢を追う少年少女。何かに憧れる少年少女。
そんなストーリーを皆同じように小さい頃から見てきて、誰もが一度は何かに夢みたり憧れたりする。例えば、女の子は歌って踊るキラキラしたアイドルだったり、男の子は困っている人を助ける最強のスーパーヒーロー。

自分だってそんなごく普通の少女だった。
テレビに出ている可愛い女の子や、アニメのキャラクターに憧れて真似したり、なんなら、活躍している子役に本気で嫉妬したり。

夢をみて、憧れて、キラキラした世界を想像して。

でも、その世界はいつか忘れる。
そのキラキラした世界は物語の中の話だということを、現実として捉えるのは一体何歳なんだろうか。

夢をみる、何かに憧れる。
脳には知らないうちに、大人はそんなことはしないという常識のようなものが住み着いていた。

実際、夢をみるとか、憧れるとか、そんなことをする時間も無いのが現状。

私達は常に何かに追われている。
これからもっと高度な頭脳が求められるであろうがために勉強して、あるいは、社会を保つために働いて。
忙しなく動き続けるこの世の中に置いていかれぬように、必死になって淡々と生きている。
それだけでも大変なのに、価値観の違いで人間関係が難しくて。
自分の意見を上手く言えない私は、周りの人達に流されて挟まれて潰されそうになる。
それに、いついじめられるかも分からない。もし、相手の気に食わないことを私がしてしまったら、いじめの対象になるのは目に見えている。
恐怖心しかない。でも、怖くてもどうしようもできない。
そんなことを考えると、夢どころか、毛布にくるまって、ずっとそのまま泣いていたいと思う。
私は、いつからか自分から話すことをやめてしまった。

そんな空っぽのような人間の私だが、一応好きなものはある。

音楽は唯一、息が出来る場所。

最近になってCDを集めることが好きになって、ここ一年で0に等しかったCDの枚数は、気付けば20枚を越えていた。

最近買ったアルバムがある。
RADWIMPSの「人間開花」。

冬休みが明け、また様々な物事に追われ始めた。怖いことが一気に増えて、またビクビクしながら、怯えながら生活することが始まる。
気が強い人の目を気にしながら、大人しく生活することで精一杯。
そんなことが続き、息継ぎをしないまま迎えたある日の夜。哀しみで覆われた心は、部屋の隅でしおれていた。時計は25時を示している。

買ったアルバムを聴こうと思った。
ちょっと息を吸わないと、死んじゃうよな。
そう思って、ちょっと高めのヘッドホンをつけた。

アルバムの中で「週刊少年ジャンプ」と名付けられたその曲は、妙に私の興味を引いていた。
名前が特徴的だからだろうか。
とにかく聴いてみたくなった。

勝手に想像していたのはRADWIMPSらしいロックナンバー。エレキギターが突き刺すように鳴り始めるのではないか。

そんなことを思いながら、息を整えて再生ボタンを押した。

聴こえてきたのは、想像とは真逆の音たち。
野田洋次郎の声とピアノの音が鳴り響いている。
予想していなかったバラード調の音楽に少し驚きながらも、歌詞を心に置いていく。

『週刊少年ジャンプ的な未来を 夢みていたよ
 君のピンチも 僕のチャンスと 
 待ち構えていたよ』

野田洋次郎の声が、優しくそう歌い始めた。なぜかそこに温もりを感じて、いきなり涙腺が緩み、心臓がキュッと痛んだ。

たったワンフレーズで、思考が急に動きを止める。その時、これは、自分にとって大切な唄になるかもしれない、と思った。それは、今の自分の心に引っ掛かっていて、でも、自分ではそれが何なのか分からなかったものを射ぬいてきたからだろう。

『毎晩少年ジャンプ的な夢で 忙しくてさ
 汗まみれで朝起きるたびに 命カラガラで
 ママに「おはよう」』

その唄の中にいる主人公が誰かと重なる。

『机は窓際 君のとなり
 遅刻と罰掃除と居眠り
 だってヒーローはそうじゃなくちゃって』

何かにただひたすらに憧れて目指している主人公が誰かと重なる。

『キザでキラキラした台詞も
 使う予定なんかはないけど
 ちゃんと毎晩お風呂でこっそり唱えるよ』

映画に出てくる子みたいだなって思いながらも、そんな主人公が誰かと重なる。

そして、思い出す。
心の引っ掛かりを見つける。

そこに描かれていた主人公と重なっていたのは、紛れもないかつての自分。でも、今はどこかにいってしまった自分。

それに気付いたときにはもう、知らないうちにヘッドホンの線を涙が濡らしていた。声をあげるのを堪えるのに必死になっていた。
あれ、なんで自分泣いてるんだ?
目の前が滲んでいる事実に驚いて、びっくりした。泣いている理由が分からない。かつての自分を思い出しただけじゃないのか。

でも唄は続いていく。

『きっとどんでん返し的な未来が僕を待っている
 血まみれからの方がさ 
 勝つ時にはかっこいいだろう
 だから今はボロボロの心にくるまって
 夢をみる』

また唄の中にいる主人公が自分と重なった。でも今度はなぜか、かつての自分じゃない。
今のボロボロの自分と重なったのだ。

かつての純粋な自分と、今の皮肉がこびりついたボロボロの自分が、唄の中で同じ人物になった。
今まで結び付かなかった過去と今の自分が、すぐ目の前で結び付いていた。

心の底が強く揺れた。そしてそれは波となって私の感情を津波のように襲ってくる。
もう声は抑えられない。涙を止めるなんてもってのほか。
そして心の引っ掛かりの正体の輪郭を掴んだ気がした。

自分の心はボロボロだ。気付かないうちにずっと前からボロボロになっていた。それがとてつもなく嫌だった。
頭の中は悲しいことで溢れる。その悲しいことを乗り越えようとしてみるけど、乗り越えようとしたときに待ち受けるものに対しての恐怖が胸を支配する。
大人たちによれば、自分は人よりストレスを感じやすいらしい。実際、身に覚えがある。
でも、そういうことを知ったからといって楽になるわけではない。強くなりたいと願うたびに、自分の弱さを知ることが増える。

そんな中、どこかで昔の無邪気な自分を懐かしむ自分がいた。あの頃のようになれたら。あの頃のように生きれたら。
だが、その「あの頃の自分」は、ほど遠いものだった。過去の自分は切り離された向こう側にいるものだと思っていた。

その考えが、今、蹴散らされたのだ。

ボロボロのままでも、夢をみればいい。
ボロボロの弱いやつが夢をみれないわけじゃない。
なんなら、ボロボロの方がかっこいいだろ?

かつての自分に、そう言われた気がした。

耳には野田洋次郎の声がある。
とても優しい声。でも真っ直ぐな声。
意志のある強い声。
こんなに優しいものに触れたのは久しぶりな感じがする。

唄はまだ続いていく。

『縮んだ心に なんとか釣り合うように
 丸めてた猫背ももうやめてよ
 下を向いても あの頃の僕はいないよ
 「ほら僕は ねぇ僕はここだよ」』

下を向いても、どこかで求めていた無邪気な自分はいないんだぞ。
自信無さげなその格好もやめなよ。

そうどこかから声が聞こえてくるようだ。
そして、はっきりと聞こえるのは、
今の弱い自分を呼ぶ、過去の無邪気な自分の声。

必死な声が脳に鳴り響く。

僕に気付いてよ。
まだ僕は、
君の中にいるんだ。

ハッとなって前を見ると、かつての自分がいた。
夢をみて、憧れて、
輝いていた頃の自分が。

そして気付かされる。
何よりも1番大事なことに。

『どこの何者でもない君も
 あの時の少年は最前列で君のことを
 君だけを見ているよ 君だけのヒーロー
 君だけを見ているよ』

そうか。そうだったのか。
かつての無邪気な自分は、どこかにいってしまったんじゃない。
勝手に忘れてただけだったんだ。
それなのにかつての自分は、今の自分がどれだけ弱くなっても、かつての自分からどれだけ離れても、今の自分がかつての自分を忘れてしまっても、
ずっと側にいて、
ずっと自分を見ていた。
自分だけを見ていた。

一人ぼっちだと思っていた夜も、ずっとかつての自分は心の中に確かにいたのだ。

そして今だって。
今だって、ずっと心の中にいて、必死に呼び掛けてくれている。

私は、「週刊少年ジャンプ」という唄で、かつての無邪気な自分を見つけ出すことができた。かつての無邪気な自分が差しのべてくれた手を掴むことができた。

夜の小さな部屋に、泣き声が響く。
か細くて、弱い声。
でも、泣き声は1つじゃないはずだ。
きっとかつての自分だって、何年ぶりかに見つけてくれた!って言って、喜んで、嬉しくて、安心して、泣いている。

今の自分と同じように。

野田洋次郎の優しい声が、涙の真ん中を通り抜ける。その涙に温もりを届ける。
かつての自分と今の自分を結び付けた唄は、終盤へ向かう。

『ナレーションをつけてさ
 瞬きひとつせずに見てるよ
「やっとこっから勇者は
 栄光に向かい立ち上がるのです
 血まみれになったプライドも
 さらに強く、強く握りしめ
 仇を取りにいくのです
 自分を捕まえにいくのです」』

『血まみれになったプライド』
これは、今の自分の姿だろう。
それを強く握りしめる。今までやってこなかったことだ。
『自分を捕まえに』
これはきっと、未来の自分の姿だろう。
今の自分がかつての自分になる頃。

そして思った。

未来の自分は元気かな。
ちゃんと勉強してるかな。
ちゃんと笑ってるかな。
ちゃんと友達と仲良くやってるかな。
ちゃんと恋人とか作ってるかな。
ちゃんと生きてるかな。
そして、
ちゃんと今の自分に気付いてるかな。

きっとかつての無邪気な自分も、もしかしたら、寂しくなりながらそう思っていたのかもしれない。
今の自分と同じように。

『そして少年も立ち上がるのです
 その声の限り振り絞るのです
 ついにドアは光を放って開かれる』

暗闇に光が見える。
光に満ちた未来。今は見えないけど輝いた未来。

『週刊少年ジャンプ的な未来を 夢みていたよ
 僕のピンチは 僕のチャンスと
 待ち構えていたろう?
 週刊少年ジャンプ的な未来を 夢みていたよ
 君のピンチも 僕のチャンスと
 待ち構えていたよ
 きっとどんでん返し的な未来が僕を待っている』

かつての自分と今の自分と未来の自分が手を繋ぐ。
懸命に掴んで、握りしめる。
輝きに向かって走り出す。

だが、

手は震えている。ガタガタと震えている。
やっぱり怖いのだろうか。心臓も震えている。
泣いちゃだめだよな。強くならなきゃ。
早く強くならなきゃ。

涙を震えた手で拭おうとした。
そこに、ずっと、かつての自分と今の自分と未来の自分が手を繋ぐところを見ていた唄が鳴り響いた。

『血まみれからの方がさ 
 勝つ時にはかっこいいだろう』

そしてまた気付く。
今のボロボロに傷ついている自分に。

『だから今はボロボロの心を隠さないで』

ボロボロの心を隠さないで、今の自分はどうすればいいんだ。ボロボロの心を隠さないで、、、

『泣けばいい』

時計は、25時5分を少し過ぎたところを指している。
もう寝なきゃいけない。
これからまた、怖い世界に飛び込まなきゃいけない。
だけど、とにかく今は泣きたかった。
胸がズキズキと痛む。ギュッと掴まれる。
その胸を抱える。そして嗚咽を漏らしながら泣き声をあげる。

一体どれくらい泣いただろうか。
10分くらい泣き続けただろうか。
さすがに涙も枯れて、眠気も襲ってきた。

だけど、手は震えていなかった。
その手でまた、
かつての自分と今の自分と未来の自分とで手を繋ぐ。今度は固く、涙で濡れた手で握りしめる。

その頃にはもう、唄は終わっていた。
野田洋次郎の声も、ピアノの音もない。でも、歌詞と共に鳴っていた音の温もりは、依然として消えていなかった。寂しくなかった。

「週刊少年ジャンプ」という唄は、夢をみて、何かに憧れる少年が、RADWIMPSらしく鮮明に描かれている。
その、夢をみて、何かに憧れる少年を、立派な大人である野田洋次郎が描いていることにまず驚いた。
大人はそんなことはしないと思っていたからだ。
野田洋次郎がつくりだす唄には、よく少年のような姿が浮かぶ。

私は、大人になっても少年性を大切にし、そこに光を見いだす彼を、とても素晴らしいと思った。
そんなことが出来る大人は、世の中にどれくらいいるのだろうか。
それくらい少年性を大切にすることは難しいことであり、その分美しいものであるのだと思う。

だから、そんな少年性を体現する彼と共に音をつくりだすRADWIMPSは、光を追い求める者から圧倒的な支持を得るのだろう。

大人は夢をみないと言ったが、きっと、夢をみたい人だってたくさんいる。
学校生活よりも複雑で、どうしようもできないことがたくさんある社会という波に、抗おうとしている人だってたくさんいる。
そんな人達に向けて、野田洋次郎は、「週刊少年ジャンプ」的な未来を夢みることはできると歌ったのではないか。

彼はおそらく少年性の美しさを誰よりも知っている。そして彼は、その美しさを、音楽を通して、心の底から夢をみたがっている人達に向けて届けたのだろう。

私はその唄を受け取った。
きっとこれから上京して、大人になっていくはずであろう立場の人間だ。
だけど私は、大人になっても、野田洋次郎のように、RADWIMPSのように、心の奥底に必ずある少年性をずっと忘れないでいたい。そう強く思った。
その方がきっと、何よりもカッコいい。

RADWIMPSは2020年、ツアーをする。
そこには、光を追い求めている人がたくさん集うだろう。
そして、そこの中に私はいる。
私は、「週刊少年ジャンプ」を聴いて、そのツアーが素晴らしいものになることを確信した。

大人も子供も、ずっと夢をみていよう。
そうすればきっと、テレビを埋め尽くす大人たちのいさかいも無くなる。目を背けたくなるような、大人たちの怒鳴り合いもなくなる。

大人が持つ少年性はそれだけ素晴らしい。

この世界はもっと美しくなる。
きっと、戦争もなくなる。
そうなって欲しい。

そんなことを心の底から思いながら、
私は夢の中に潜り込んだ。

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