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2017年7月25日

川鍋良章 (36歳)
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救済のロック

THE ORAL CIGARETTES初武道館を観て感じた、このバンドの現代における必然性

バンドの初武道館ライヴは特別な意味を持つのは言うまでもない。初武道館には魔物が住んでいるとまで言われている程なにが起こるか分からないとまで言われる。そんな状況をも狂気じみた破竹の勢いと、山中拓也(Vo)の“強さ”で魅せた力強い圧巻のステージだった。

THE ORAL CIGARETTESの待望の日本武道館公演である。

冒頭から「5150」「Shala La」「カンタンナコト」「悪戯ショータイム」とノンストップで繰り広げられるキラーチューンの連投。前半から、「こんなに人気曲やって、後半、大丈夫か?」なんて心配もするほどの、大盤振る舞いな選曲だ。会場は常に興奮の坩堝。初武道館にして完全に聖地をホームにしている……このバンドが只者でないことは全国各地のフェスを見ていれば証明済みだが、今日は特別な夜だ、演出面含め、演奏といい、選曲といい、バンドの隙の無さが凄まじい。そこに、観客の祝祭感、一体感も加わり、半端ないパワーが充満している。それが終始止むことの無い二時間半だった。楽し過ぎて涙が出る思いだった。

ふと、2015年の年末に幕張で行われた“COUNTDOWN JAPAN”で彼らのステージを初めて観て、心を鷲掴みにされた時を思い出す。あの時、山中は言った「一度、どん底を見た人間、一度、死に物狂いで上に這い上がろうとした奴は強いって。俺らオーラルが証明します。闇の中でもいい、そこでもがき続けて。光はいずれ差し込みますから」と。数多く聞いてきたライヴのMCの中で身震いするほど感動したもので、未だに鮮明に覚えている。調度その頃は、自分も大きな手術後だったり、病気をしていた時期だったため、この言葉に、どんなに励まされたことか……どんなに、共感し、その感動が、どんなに大きな衝撃でもあったか計り知れない。それ以降、人生を這い上がるのに必要なパワーをオーラルから貰ったのは言うまでもないが。あのMCは正に“救い”だった。

このライヴの中で山中は、ここ数年間を、その年にリリースされた楽曲と共に時系列にさかのぼり、自分の身にあったこと、それがバンドにどう影響し、どう困難を乗り越えて、今の自分とオーラルに至るかを圧倒的な歌唱と言葉で表した。数十年のキャリアのベテランがやって成立しそうな試みだと思ったが、何故かオーラルには、それが成立する説得力があった。
キャリア一年毎のどれもが重要なエポックだというのが分かるのだ。自分たちの飛躍にもなった大事な曲だという「起死回生STORY」も、もう音楽活動できるか否か駄目だと思った時、この曲に寄り添ったという「エイミー」も、「辛くてどうしようもなくて救いはある!」俺たちの救いは、この曲だったという「狂乱 Hey Kids!!」も、このバンド自身が“今の自己肯定”するのに必要不可欠で、また、各楽曲に対する思い入れが強いことに感銘を受ける。そして、こうしてひとつひとつ着実な轍を残す者にしか、現在の自己肯定はできない……山中の姿から感じられた。

人気が急スピードで拡大していく中で、最近では「新しい時代を作る」「もっと大きくなってみせる」などのロックバンドの常套句とも言える、バンドの将来を見据えた自己顕示的なMCが多くなっていた。もちろん、これらの発言は選ばれし者にしか言えない。オーラルはそれを言うに相応しい。
ただ、山中拓也という希代のヴォーカリストであり音楽作家の真の魅力は、そういうところでは無いと個人的には思っている。冒頭でも言った“強さ”である。彼は人生の苦を知っている。病であるなら、本当に苦しい経験だったことは想像に易くない。だからこそ、彼は弱き者にも手を差し伸べる。光を当てる。そして、「そのままでいるな、かっこいい奴、強い奴と繋がり、自分も強くなれ。そういう仲間がいないなら俺らがなる」と自らの存在を指標とする。その反面で「ついてこない奴はいい」と、自分を高める努力を拒む者には、去る者は追わないというサディスティックな一面も見せる。要は、自己肯定とはそれだけの努力と責任が伴い、生半可ではいけないのだ。この山中の“自信”と“強さ”というのは、自分の弱さを自覚していない者には到達することは出来ない。見せかけの強さではないのだから。

ネガティブな言葉で溢れる世風の中で、あくまで自己肯定を促す。「辛い過去・消したい過去があるから今がある、今の自分を肯定して愛して欲しい」こんな名言を、この日も残した。この日の山中が輝いて見えたのは、最近のフェスで彼が特に言っている自己顕示的発言ではなく、彼が本来持っている人間味溢れる本音を言葉にしてくれたからだ。

90年代のヴィジュアル系を彷彿とさせる危ういダークな一面も見せながらも、現代にドストレートに響くロックを奏で、詞で訴え、自己肯定を促し、光を見出す……そこに、力強いパフォーマンスが加わる。そんなオーラルの姿が救済になる観客で武道館が埋まり切る。2010年代は彼らのような存在を欲していたのだ。THE ORAL CIGARETTESが、現代のロック界に必然的に表れたバンドなんだなと改めて感じさせられた武道館公演だった。
「大阪の人間だから、そんなに武道館への憧れが強くなかった」と山中は言ったが、「俺らを好きでいてくれるみんなで埋まった武道館が特別です」と感謝しつつ、映画主題歌、大阪城ホール公演と、次のステップ、飛躍が決定しており、期待される。彼らの快進撃は止まらない。果たして、真の強さを持った山中は、オーラルは、どこまで“救済”を届けることができるか、楽しみである。

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