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何時までも続いて欲しい希望の銀河

BABYMETAL 幕張公演

アーティストが新曲を披露する時、そこには大きな意味がある。

そう感じたのは、BABYMETALの「Arkadia」。
「Arkadia」は、2019年6月の横浜公演で、初めて演奏された。
しかも、オープニングで、いきなり新曲の「Arkadia」を披露したのである。

会場に鳴り響くスピーディーでメロディアスなサウンド。三人の女性が繰り広げる優雅でダイナミックなダンス。吸い込まれるような美しさがあった。
オープニングを飾るに相応しい新曲。私は、「Arkadia」に一気に呑みこまれた。
 
二度目に演奏されたのは、一週間後の名古屋公演。この時はコンサートのラスト。
初演でオープニングに演奏された曲が、二度目はラストで演奏される。
2019年10月に発表されたアルバム「METAL GALAXY」ではラストに収録され、その後のコンサートでは終盤に演奏されるようになった。

本来はラストを飾る曲なのか。
もしそうだしたら、何故、初演ではオープニングに演奏したのか。
その疑問が、頭の片隅にずっと残っていた。

2020年1月26日、幕張公演が開催された。
この日のコンサートのテーマは「闇」の世界。
重々しい曲が演奏される中、「Arkadia」はアンコール前の終盤に演奏された。
すると、今までの「闇」が突然明けて光に変わるような、そんな感じが広がった。

「Arkadia」は古代ギリシア語で、理想郷を意味している。
闇から解き放たれた光が、希望となって美しい理想郷に向かっていく。
「Arkadia」の歌詞は、私にはそんな風に聴こえる。

  嗚呼 小さな胸に宿る 暗闇に火を灯す欠片は
  嗚呼 眩しく光纏い 輝きは刹那に迸る
  Glorious, you just be ambitious!

横浜公演が開催される前年の2018年、BABYMETALは「闇」の中にいた。
その年の1月にギタリストが亡くなり、10月にはYUIMETALが脱退した。
何の偶然か、2018年は「闇」をテーマとした演出を行っていたのだが、演出に留まることのない深くて重い現実が存在していた。

「闇」の中に沈んでしまったら、抜け出すことはできない。
抜け出すためには、希望の光が必要だったのだろう。
「Arkadia」は光であり、希望である。
2019年の横浜公演。オープニングの「Arkadia」が、2018年の闇を振り払った。
初演には、そういう意味があったのかもしれない。

思えば、BABYMETALの曲を聴いていると、未来の希望を感じることがある。

幕張公演当日の朝、私は葛西臨海公園の水族館を訪れていた。家族連れが多い中、二人の中学生がいた。魚のワッペンをリュックに一杯飾って、キラキラと目を輝かせている。深海魚の標本の前で、熱心に会話している。

まるで、二人のさかなクンが目の前にいるようだった。きっと、彼らは立派な研究者になるだろう。そう思うと、未来が見えたような気がした。

そのことを妻に携帯で話すと、
「深海魚なんてマニアックだね。でも、二人でいてよかったんじゃない。一人で中学校にいたら、イジメに遭うかもしれないよ。中学校で深海魚の話しをしても、受けないでしょ。二人はお互いに仲間がいてよかったね」
と、言葉が返ってきた。そうかもしれない。

その日の夜、幕張公演のアンコールで「イジメ、ダメ、ゼッタイ」が演奏された。その曲を聴いている時、私は二人の中学生の未来を思っていた。

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