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母性の表象としてのBABYMETAL

“ Don’t think. Feel ! “

何故これほどBABYMETALに惹かれるのか。それがずっと分からずにいた。
彼らの魅力なら一晩中でも語ることができる。しかし、そんな表面的な魅力の断片だけでは説明できない何かがあると思っていた。
そして、その“何か”に気がついたのは、幕張メッセでの2013年のライブ『LEGEND “1997”SU-METAL聖誕祭』とその翌年2014年のイギリスの『Sonisphere Festival』でのライブ映像を観ていたときのことだった。

『Gimme Chocolate!!』のMV にもなったLEGEND “1997”SU-METAL聖誕祭のライブは、ステージの背後に大きな聖母マリア像が会場全体を見守るように存在している。これはメタリカのライブへのオマージュと言われているようだが、私の目にはそれがBABYMETALの持つ“ある世界観”をあらわすもののように映った。母性の象徴である聖母マリア像。その像を背景に、十代半ばの三人の姿が映し出すものは、単にkawaiiだけのメタルではないと感じていた。
そして、その翌年のSonisphere Festivalの映像。海外のアウェイなメタルフェスの会場で、彼らは圧巻のライブを展開した。その熱いパフォーマンスで強面の観客の心を掴むと会場の熱気が波のように広がり、最後には賞賛のコールが鳴り響いたステージ。その全力で戦う彼らの姿を見たとき、ずっと分からなかった”何か”が分かった。

彼らの姿に重ね合わせて見たものは、懸命に働きながら自分を産み育ててくれたあの人の姿だった。その姿がステージ上で戦う彼らの姿に投影されていたのだ。
メタルという究極の男性的なジャンルで、激しく、力強く、そして優美さを失わず戦う彼らの姿。それは男性中心の社会の中でRESISTANCEして働く、強く優しい若きWorking Motherのイメージそのものだった。

BABYMETALの音楽は、重厚なMETALサウンドを背景にしながら、どこかノスタルジックな響きと、気高くありながらも自由で、ときに諧謔的な開放感がある。それは、自分を遠い過去に回帰させる。
わたしはBABYMETALというユニット名を「BABYによるMETAL」だとは思っていない。
SU-METALがステージから”Show me a big circle!”と叫ぶとき、Mosh pitの観客が子供のように素直に大きな円を描いてみせる。BABYMETALはMETAL by BABYではなく、そんな子供たちへの親愛のMETALである(METAL for BABY)というのが自分なりの勝手な解釈である。

昨年11月、3年半ぶりにBABYMETALのニューアルバム『METAL GALAXY』がリリースされた。
“ We are on an odyssey to the METAL GALAXY. “というコンセプトの下、今回も期待どおりに(いい意味で)期待を裏切る挑戦的な楽曲の数々が並んだ。聴き手のヤワなBABYMETAL観は気持ちがいいくらい簡単に破壊されていく。
しかし、そもそもメタル・ダンスユニットという形態自体が逆説的でありロック的なのだ。ロックは死んだなんて言われた遠い昔を過ぎ、いまになってその反逆精神をその気もなく復活させたのがBABYMETALだというのは少し言い過ぎか。
このアルバムで、SU-METALも脱SU-METALした。「おとぎ話ばかりじゃイヤ」、「目を覚ませ!」と歌う彼女は、進化した新しい世界を広げてみせた。そして、あらためて感じたのは、その声の魅力である。どんな歌い方をしても変わらぬ芯の強さと圧倒的な存在感がある。

このアルバムの日本盤は2枚組だが、1曲目から順に聴くと、あらためて作品の凄まじさを感じる。
このアルバムによって、彼らはこれまでつくり上げた過去のBABYMETAL像を壊してしまった。アルバムのオープニング曲『FUTURE METAL』で ”This ain’t heavy metal.”と歌うように、特に1枚目はメタルから完全に逆向したサウンドである。しかし、既存のBABYMETALを壊すその暴力的な姿勢は、メタルそのものであると言える。その姿勢こそが作品のレンジが拡がっても、一貫したBABYMETALらしさを作品にもたらしているのだと思う。

そして、1枚目の『Oh! MAJINAI』という聴き手のベビメタ耐性を試すかのような曲。そのナンセンスさに始めは拒絶感があったのに、いつの間にか頭から離れない中毒性。この曲がアルバム全体に奇妙な緊張感を与えている。
ときにBABYMETALの音楽には中身がないという批判を見ることもある。しかし、それは表面的な見方だ。重要なのは、音楽に付与された意味などではなく、その音楽を通じて、聴き手が何を感じ、その作品と関係するかだと思う。
本当に苦しいとき、悲しいとき、音楽は何の役にも立たない。しかし、生きていくために音楽は無くてはならないものだ。だからどんな作品に対しても先入観なしに向き合い、好きな作品と出会い、いい関係を築いていきたい。

先日、この3rdアルバム名を冠したツアーの国内最後のライブが幕張で行われた。個人的に最高に出色だったのは『BxMxC』。オリジナルよりライブの方が、この曲の過激でメタリックでクールなカッコよさが際立つように感じた。この曲やギミチョコ!!、KARATEのようにkawaiiの裏にあるラジカルでエッジの効いたサウンドももっと聴いてみたいと思った。

そして、最終日のラストは『イジメ、ダメ、ゼッタイ』。メンバーが脱退し、二人になってから封印していたこの曲に向かう二人の思いは、二人にしか分からないだろう。それは感傷というのとは違うもっとリアルなものであったのではないかと想像する。しかし、二人が厚い壁を乗り越え、このステージに辿り着いたということは分かる。このかつてのキラーチューンの復活にファンは狂喜したが、今回の幕張でのライブは、もう過去の曲に頼らなくてもBABYMETALとして十分に成立するのだということを完璧に証明してみせた素晴らしいステージだった。大人になった彼らは、過去の自分たちをただ壊したのではなく、立派に再生したのだ。

かつてある番組で「メタルとは何か」という問いに、SU-METALは半ば冗談めかして“Another sky”と答えた。まさにその“Another sky”が、わたしの個人的なBABYMETAL観である。
BABYMETALの音楽を聴いていると、フィクションとリアルの世界を往来しているかのような感覚に陥る。音楽の意味とは、結局これなんじゃないかと思ったりもする。

これからのBABYMETAL。たぶんこれまでもそうであったように、彼らの”Odyssey”は、(いい意味で)常軌を逸し続けるだろう。もう心と首の準備はできている。どうなるかは ”Only the Fox God knows”だ。

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