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消えないときめき

赤い公園『絶対零度』に寄せて

 ボーカル佐藤千明の脱退。
 

そのニュースが流れたのは、2017年の初夏。2012年にリリースされた『透明なのか黒なのか/赤い公園』からのファンである僕にとっては寝耳に水で、心にぽっかりと穴が空いたようだった。その年の夏にリリースされた、4人での最後のフルアルバム『熱唱サマー/赤い公園』は、タイトルの楽しげな雰囲気とは裏腹に、切なさと儚さを背負って僕の耳に届いた。今までのどのアルバムよりも、気迫と切なさが共存する曲たちに僕は圧倒された。
高校最後の夏、何度も何度も聞いた曲たちは、何気ない通学路、深夜に友人と会ったコンビニ、蒸し暑い自室、どの瞬間にも鮮明に焼き付いていた。そして、夏が終わった。

 気付けば、あれから、一年が経った初夏。すっかり赤い公園のリリースは途絶え、僕も大学生になった。慣れない環境に戸惑っていた僕の耳に飛び込んだのは、新ボーカル石野理子の加入というニュース。酷く驚いたが、それと同時に、戸惑った。ボーカルの変更は中々あることではないし、自分の中にある、赤い公園像とズレていくことが怖かった。しかし、その後YouTubeに公開された新曲『消えない/赤い公園』を聞いた瞬間、僕は確信した。
 

そうだ、赤い公園像なんて元々ないんだ、と。
 

変幻自在に様々な世界観で、進み続けるバンドの姿勢に、あるべき姿など元来なかったのだ。僕の中でいつの間にか作り上げていた赤い公園像を壊したのは、他の誰でもない赤い公園であった。

 2020年1月29日、最新シングル『絶対零度』がリリースされた。赤い公園お馴染みの、轟音のギター、爆音のベース、複雑かつ大胆なドラム、そして変幻自在なリズムとメロディー、カウベルに、6度から始まる魅惑のサビメロは健在だ。そんな猛獣のようなサウンドに乗るのは、毅然としたボーカル。それはまるで、永久凍土の真ん中に凛と咲く一輪の花。不安定で、紙一重のバランス。一聴して、ゾクゾクが止まらなかった。そして何より、赤い公園の曲を今現在もこうして聴けているという事実に、涙が溢れた。
 

 《絶対零度の未来に持ち物リストは無いのさ》
                            『絶対零度/赤い公園』
 

 赤い公園が見据えるのは、いつだって誰も知らない未来。驚きとワクワクでいっぱいの音楽をこれからも届けてくれるだろう。消えないときめきに導かれながら。

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