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NUMBER GIRLと17歳の僕

再結成ライブへの参加に向けて

大人が振り返る在りし日の青春とはニキビ跡のようなものだなぁ、とNUMBER GIRLのライブを数日前に控える夕方、ふと思った。

一般的に青春とは、ティーンエイジャーたちが、キラキラあるいはギラギラ、そして人によっては悶々とする思いで過ごす時期あるいは気持ちのことを指す。

中高一貫の男子校で迎えた僕の青春はというと、、、やはり、悶々としていた。

*****

思春期特有の自己の芽生えに伴う、「自分とは何者なのか」という、答えのない問いの真っただ中だった。
その悶々とした青春の発露はというと、音楽であった。

友人たちとバンドを組んだり、あるいはフォークデュオを組み、日夜下手くそなギターを弾き、ライブハウスでライブをしたり、路上へ出かけて声を張った。
そして、刺激的な音楽を求めて、日々中古CDショップへ出かけた。
なけなしの小遣いをどのCDに使うべきか、負けられない博打勝負のため、店から店へと自転車を漕ぎ、棚の前で右往左往した。

「自分たちでラジオ番組を作って文化祭中に校内で生放送をしたい」という、これまた青春の発露をする友人たちに感化され、ラジオ番組の面白さを知り、新たな音楽との出会いをラジオに求めるようになった。(彼らが悶々としていたのかどうか分からないが)

幾つかのラジオ番組を調べていると、日替わりでミュージシャンがMCをする番組があることを知った。そのうちのある曜日はASIAN KUNG-FU GENERATIONがMCをしており、彼らがリスペクトするミュージシャンの音源がしばしば紹介されていた。
確か当時はNANO-MUGEN FESを毎年開催していたから、フェスに出演するアーティストの曲目がかかることが多かったように思う。
ある日、彼らがリスペクトしていると言うNUMBER GIRLの鉄風 鋭くなってという曲がかかった。

いつも通り部屋を真っ暗にし、ベッドに横たわっていた就寝前の僕の耳に、ゴリゴリとしたベースと、ドカスカとしたドラムと、ギュルギュルとしたギターと、キンキンした歌声が、曲名通り鉄風のごとく耳を突き抜けて頭の中にギリギリとねじ入ってきた。
僕はその日、ラジオの録音を忘れていた。

翌日、CDショップへ自転車を飛ばし、NUMBER GIRLの棚を目指した。
もう解散していたことをアジカン後藤氏はラジオで語っていたのだけれども。
そして棚には2枚のCD。1stアルバムと3rdアルバムだった。
鉄風 鋭くなっては、当時シングル盤のみの販売だったため、やむなく断念。
バンドがリリースした順に聴こうと決意し、1stアルバムを取りレジに向かった。
ライナーノーツには、一度東京でレコーディングしたものの、「音像が綺麗すぎる」との向井氏の意向で、地元福岡のスタジオで録音しなおしたと書いてあった。
彼らのざらっとしながらも、どこかむわっとしたサウンドは、タバコのヤニで黄みがかって埃っぽいバンドスタジオの様子を鮮明に目に浮かばせた。

中学・高校6年間、僕は片道40分程度の自転車通学だった。
MDにCD音源をうつし、数週間1stアルバム、SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICTを聴き続けながら自転車を漕いだ。
自転車が景色を切りながら、テンポの速めな曲を聴くと、胸の奥やみぞおちがグラグラしてくるのを感じた。
ペダルを濃く力も以前より増した。
そして、曲を聴くとスカっとするのだけれども、それ以上にグラグラするものが更に湧き出てくる。
これが繰り返し繰り返し、ペダルが回るたび、曲が再生されるたび、大きなうねりになっていく感覚があった。

思春期の頃合いの男子学生のニキビとは、ホルモンの影響で皮脂分泌が過剰になるからだという。
僕にとってNUMBER GIRLは、心の何かしらのグラグラ物質をすっきりさせてくれるものであり、一方で更なるグラグラ物質を作り出す劇薬でもあった。
そんな劇薬だからこそ、どんどん使いたくなる。
さながら、清涼剤の強い洗顔料だ。
皮脂を全て取り払ってしまうがゆえに、肌を守ろうと(余計なお世話だ)すぐに新しい皮脂が湧いて出てきてしまう。
行きつく先は、次々と出来るニキビ、そして不格好なニキビ跡だ。

青春一番地をどうにかこうにか漕ぎ抜け、大学進学のため上京し、バンドサークルの新歓イベントに顔を出した。
そのサークルはテクニック志向が比較的強く、ファンク、フュージョン、メタルをやる人が多かったなか、忘れもしない。
言葉を交わした他の新入生と好きな音楽は?という話題になり、NUMBER GIRLだと共有できたことで、入部を決めた。
入ってみるとNUMBER GIRL好きな先輩もいた。
他の新入生のなかには、メールアドレスにOMOIDE IN MY HEADと入れていたやつもいた。
そうして大学生活では、こじれきった中高生活とストイックだった受験生活を取り戻すかのごとく自堕落な毎日が始まった。
サークルの友人たちの薦めやバイトによる懐の温かさも相まって、聴く音楽の幅も大きく広がった。
自転車通学もなくなり、次第に悶々としたりグラグラとする感覚が失われていったように思う。

*****

ちょうど1年前の2019年2月15日、僕は高校時代にバンドをやっていた友人の結婚式に出席するため、地元に帰省していた。
当時のことを懐かしく思うあまり、冬のキリッとした晴天の下、NUMBER GIRLの1stアルバムを聴きながら歩いていた。
そこへ再結成のニュースが飛び込んできた。
何か、出来過ぎている。

高校時代にバンドをやっていた友人たちは、先述のように結婚したり、家を買ったり、そして当時は数少なかったNUMBER GIRL好きの友人は、プロのドラマーになったり、あるいはバンドでメジャーデビューをした。
メールアドレスがOMOIDE IN MY HEAD状態だった大学時代の友人は、新卒で働いていた会社で大きな仕事をやり遂げた後に大学に入り直し、今では学者の道を歩んでいるようだ。(メールアドレスは変わっているのだろうか。)
NUMBER GIRLが大好きだと言い、記録映像のDVDを一緒に見た女の子も今や子持ちの母である。
そしてサークルの新歓イベントで意気投合したNUMBER GIRL好きの友人とは、共に名古屋のライブへ向かう。

かつての僕は、NUMBER GIRLの再結成はおろか、名古屋で初めて彼らのライブを始めて見るとは、いかに妄想力の高い時期だったとはいえ、つゆほども想起できなかったろう。
そして、青春の発露の手段でしかなかったNUMBER GIRLが、幾つもの思い出と人との縁をつくることも。

今、改めてNUMBER GIRLを聴くと、音に合わせて17歳の頃の自分が、ぼうっと目の前にあらわれてくる。

 ―グラグラをかき消しては、新たなグラグラを巻き起こし、悶々としていた自分

ニキビだらけの自分が、何も言わずじっと今の自分を見つめている。
僕は彼に言われている気がするのだ。
「お前は今、グラグラしてんのか」

当時は自問自答していた僕が、今では未来の僕に対して問答を仕掛けてくる。
生々しい当時の感覚と共に、今の自分との間に起こった出来事や少しずつ変わっていく自分を否が応なく突き付けるのだ。

17歳の時に出来たニキビ跡は、NUMBER GIRLと共に、人並みには穏やかになってきていたはずの胸を、再びグラグラさせる。

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