3141 件掲載中 月間賞発表 毎月10日 コメント機能終了のお知らせ
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

Charaが未来に込めたもの

僕が「音楽文」の永続を願う理由

ずいぶん前から「大事」と「大切」という言葉を、かなり注意深く使い分けるようにしている。「体を大事に」と挨拶がわりに口にするけど「体を大切に」とは滅多なことでは言わない。そうやって言葉を選ぶ習慣、自分が決めたことを(頑愚なまでに)貫こうとする性分は、若いころから持っていたものであり、それゆえに疲弊することが少なくはない。学生時代、そんな僕を見かねて、ある女性が「Caramel Milk 〜THE BEST OF CHARA〜」をプレゼントしてくれた。これを聴けば何とかなるからと。

そのアルバムのなかに「大切をきずくもの」という曲が収録されていた。

***

それから20年近くが過ぎた今、僕はロッキング・オン社の主催する「音楽文」という表現の場があることを知り、投稿を重ねている。その理由を友人に聞かれたことがある。どうしてそんなにも熱心に書いているんだと。もちろん理由はひとつではない。自分を守ってくれているミュージシャンに感謝を届けるためであり、そのミュージシャンを教えてくれた人に敬意を表すためであり、誰かと感動を共有するためでもある。

いちばんの理由が、最近になって分かってきた。僕は

<<未来になにをつめたい?>>

と考える齢になったのだ。そういう時節を迎えたのだ。優れた楽曲が未来に遺されるべき宝であるように、このサイトに寄せられる思いというのも、明日を担う子どもたちへの手紙になりうる。僕の書く記事が駄文であったとしても、それは

<<大切をきずく>>

欠片になるのではと考えている。幼子に遺すべきなのは「こんなにも素晴らしい音楽が世界にはあるんだよ」というメッセージだと考えているのだ。そういう意味で、この投稿サイトが永続することを、僕は強く願っている。

***

<<あなたに何を告げたい?>>

と歌い始めるCharaさんは、様々なメッセージを放つ。

<<まじめに生きなさい>>
<<いそがないでね>>
<<生きるのよ>>

シンプルでありながら、選び抜かれたことをうかがわせる言葉が、この曲にはあふれている。今のところ僕は生きてはいるけど、真面目にやってきたか、急がずにやってこられたかは、かなり怪しいところだと思う。そういう意味では、僕はCharaから受け取るべきものを受け取れていないし、その存在(楽曲)を教えてくれた女性の声に応えられてもいない。

それでもCharaが本曲に込めたメッセージは、たしかに未来に届いた。「大切をきずくもの」を聴き返す今、自分が何を願っているかが見えた。

<<あなたの信じてるものを 信じてる>>

「音楽文」の「アーティスト一覧」をクリックすると、実に多くのアーティストの名前が表示される。そのなかには、もちろん僕が好きなアーティストが多く含まれており、その楽曲を、いつか大きくなった幼子が聴いてくれたらと思う。もっと正直に胸のうちを明かすなら、自分の書いた「音楽文」を読んでもらえ、それに共感してもらえたらとも思う。

それでも思うのだ。その子が「僕のよく知らないアーティスト」や「僕が記事を投稿していないアーティスト」を好むようになり、その楽曲を聴いたり、その魅力を力説する「音楽文」を読むことになったりしても、それはそれで素晴らしい未来なのではないかと。重要なのは、その子が励ましや慰めを与えられることであり、それを与えてくれるのが誰なのかは、さして大きな問題ではない。それが僕ではなくてもいいのだ。

そういう意味で、僕はロッキング・オン社に感謝すると同時に、この場に集う多くの投稿者に感謝してもいる。皆が「大切をきずくもの」を持ち寄っている。僕が顔も知らない誰かの書いた「音楽文」が、僕が成長を願ってやまない幼子の未来を守ってくれるかもしれない。逆の言い方をすれば、その人が大事に思う幼子は、僕の書いた「音楽文」を読んでくれるかもしれないのだ。

僕たちは(順番通りに事が進めば)幼子よりは先に現世から旅立つ。それでも、向こう側の世界で何かを願うことができるのならば、信じるものを信じつづけてほしいと僕は願うだろう。世界に純度100パーセントの「真実」があるのかは、何とも言えないところだと思う。どんなに優れたアーティストが語りかけてくれることも、万人に届くわけではないだろう。だから好きな曲を聴いてほしい、好きなアーティストを信じてほしい。

***

このような僕の発信が、子どもたちにとっては説得力を持たない空論に聞こえてしまうなら、やはりCharaさんの力を借りようと思う、その楽曲から言葉を引用したいと思う。「Caramel Milk 〜THE BEST OF CHARA〜」に収録されている「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」に込められた、明日を信じようとする気迫は、Charaの声だから、それが決して野太くはない声だからこそ、聴き手に届くのだと思う。「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」の作詞には、岩井俊二氏と小林武史氏が関わっており、今から引用する歌詞が、誰の手によって紡がれたのかは僕には分からない。ともかくCHARAは歌うのだ、独特の声調で。子守唄のような、泣き声のような、形容することの難しいボイスで。

<<心に 心に 傷みがあるの>>
<<ここから何処へいっても 世界は夜を乗り越えていく>>

これから僕が書くことは、Charaのメッセージを拡大解釈するものかもしれない。それでも書いてみたい。あなたがどのアーティストを選んでも、どの楽曲を愛でることになっても、それは夜を越える助けになりうるのだと。あなたは世界を形作る、大切な1人なのだと。夜を越えてほしいとまで言うつもりはない、そんなことを自分が言うのは不相応だと思う。それでも世界には、数々の素晴らしい楽曲があること、それは事実だ。
 

あなたは<<大切をきずくもの>>です、僕にとって、そして恐らくは世界にとっての大切を。どうか体を大切に。心を宿している、その体を大切に。このメッセージが消えないよう「音楽文」が永続することを願います、永遠に残るものはないけど、できる限り長い間。

※《》内はChara「大切をきずくもの」、YEN TOWN BAND「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」の歌詞より引用(両作とも「Caramel Milk 〜THE BEST OF CHARA〜」の収録曲)

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい