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『まちがいさがし』は僕のテーマソング

「普通」になりたい息子に寄り添う、菅田将暉と米津玄師の歌

「僕はなんで普通に生まれなかったの?」
「僕が普通じゃないってわかったとき、お母さんは悲しかった?」

…自分の障がいを認識した次男が、ある日突然、私にぶつけてきた言葉である。
初めて言われた時、胸がキューッと締め付けられるような感覚になったことを、今でも鮮明に覚えている。

次男には、人とコミュニケーションがうまく取れない、こだわりが強い…等の特性があり、知的にも軽度の遅れがある。
彼は元来、「人」が大好きで、幼い頃から、自分のやり方で人と関わろうとしてきたが、なかなかうまくいかず、誤解されることも少なくなかった。
しかし、次男にはその理由がわからなかった。
ただ仲良くしたいだけなのに、なんでうまくいかないんだろう…と。

何が正しくて何が間違っているのか…
そんなことを常に考え続ける日々は、私たちが想像する以上に苦しかっただろうと思う。

2019年の春に高校生になった彼だが、やはり新しい友だちを作るのは大変そうであった。
そんな時に、初めて聴いたのが、菅田将暉が歌う『まちがいさがし』だった。

《まちがいさがしの間違いの方に 生まれてきたような気でいたけど》
という歌い出しの部分から、次男も私も、引き込まれてしまった。
前奏がなく、菅田将暉の語りかけるような歌声で始まるこの曲は、歌い手と聴き手が1対1で静かに向き合っているような気持ちにさせられる。

さらに《正しくありたい あれない 寂しさ》
…と、とても切なそうに歌う菅田将暉に、さらに胸を掴まれた。
そしてまた次男が、このフレーズだけ、何度も口ずさむのだ…。

次男は、常々「普通になりたい」と言っている。
世の中のいうところの「普通」とは何か…というのは、また別の問題だが、「みんなと同じようにしたい」という思いは、他の誰よりも強いのかもしれない。

でもできない。

それは、悔しいでも、悲しいでもなく「寂しい」ことなのか…。

次男の日々の苦悩と、これからのことを思うと、そこで切なくなるのだが、ある日次男が…
「お母さん、この曲は優しい曲だね。安心するね。」
と言うのだ。

「《まちがいさがしの正解の方じゃ きっと出会えなかったと思う》って言ってるよ。
僕は、苦手なことがたくさんあって、闇が多い毎日だったけど、それでも僕のことを助けてくれる人がいたから、愛も感じたよ。『まちがいさがし』の歌詞と同じだね。」

さらに
「《正しくありたい あれない 寂しさが 何を育んだでしょう》だって。寂しいと、何かが育つんだね。良かった。」
とも…。

そうだね。
辛い日々の中でも、優しく接してくれた人たちがいたね。
寂しさを感じる経験の中で、強い心と優しい心が育ったね…。

いや、そんな簡単な言葉では言い表せないほどのものを、次男は感じとり、自分のものにしてきたのだろうと思う。
次男の言葉から、『まちがいさがし』は、切なさより、あたたかさや強さが感じられる曲であることがわかり、私は、聴くたびに涙が流れる。

そして次男は、

「『まちがいさがし』は、僕のテーマソングみたい」

と言うようになった。

とある音楽番組で、菅田将暉が、『まちがいさがし』の作詞作曲プロデュースを手がける米津玄師について、こんなことを語っていた。

「米津玄師という人は、すごく繊細で…あんなにすごいのに、ちゃんとちっちゃいことも色々気にして、丁寧に生きている」

米津玄師が、自分ではなく、あえて菅田将暉が歌う曲として作った『まちがいさがし』
彼らの関係性や、どんな人生を歩んできたのかは、本人たちにしか分からないことだろう。
しかし、丁寧に言葉を噛みしめながら、熱く歌い上げる菅田将暉の歌声には、確実に米津玄師の想いが宿っている。
そこには、お互いを理解し合う強い絆や、思いやりや敬愛の気持ちが感じられる。

彼らの想いは二人から生まれたものだが、それは多くの人の心に届き、寄り添い、励ましてくれている。
違う人生を歩んできたはずなのに「僕のテーマソング」と思わせてくれるのだから。

春になれば、初めて『まちがいさがし』を聴いてから1年が経つ。
次男も、高校2年生になる。
今でも友だちは多い方ではない。それでも、学校が楽しいと言って、休まずに通っている。
朝から『まちがいさがし』を歌っている日は、「あ、今日はちょっと、何かある日なのかな」と思いながら送り出している。

そして彼は未だに、自分の特性に疑問を持ち、私にその気持ちを打ち明ける時がある。
「なんで僕は、みんなと同じようにできないのか」
「お母さんは、そんな僕をどう思うのか」と。

未だに、うまく伝えられているかわからないが、
「みんなと同じじゃなくていいよ。」
「お母さんは、どんな君も大好きだよ」
と、伝えている。

《間違いか正解かだなんてどうでもよかった》

《君じゃなきゃいけないと ただ強く思うだけ》

…まさに、『まちがいさがし』の歌詞の通りである。

次男は「僕のテーマソング」というが、これは、母親の私にとっても、永遠のテーマソングなのかもしれない。

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