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2017年7月31日

maki (23歳)

笑顔の魔法をかけ続けるバンド

sumikaという音の魔法使いを知っているか

 

音と音に乗せて 色を変える ──
 

「音」とは、人間が生きていく上で切っても切れないものである。目の前の人の声、すれ違う人々の足音、時計の秒針が刻む音。全ての音から逃れようと耳を塞いでみても、今度は腕の筋肉が収縮する音、はたまた心臓の鼓動。
私たちは、聴力がある以上、常に何かしらの音と共にある。

そんな「音」を「楽しむ」と書いて、「音楽」。
昔から音楽というものは人々の生活に寄り添って来たが、現代における音楽の発展はめざましく、道を行く人々の多くはイヤホンを耳に好きな曲を楽しみ、音楽を職にすることを志す若者も多い。連日、音楽関係のTV番組が放送され、全国各地で毎日の様にライブイベントも開催されている。
音楽は、時に人を癒し、勇気付け、そしてまた時に人の悲しみ、苦しみに寄り添う。現代を生きる私たちにとって、音楽は一瞬一瞬を彩り、どこまでも傍にいてくれる、人生の一部に他ならない。

一概に音楽と言っても、演歌、ポップス、ロック、様々なジャンルがある。私はロックバンドが好きだ。80年代、日本全国に起こった空前のバンドブーム。それ以降根強く浸透してきたが、近年バンドミュージックは更に勢いを増しつつある。音楽にジャンルがあるように、バンドにもそれぞれの色や雰囲気があり、作り出す楽曲は本当に多種多様だ。だが、私の中でのバンドの概念として、漠然としつつも揺るがないものがあった。泥臭いカッコよさだとか、痺れるクールさだとか。上手く言い表せないが、とにかく「ロック=かっけぇ」、みたいな感覚を持っていた。この私の感覚は、これから話すバンドとの出会いによって見事に打ち砕かれることとなる。
 

sumikaというバンドがいる。神奈川県出身の4人組で、メジャーデビューこそしていないものの、その人気はどんどん加速し、刻々とファンを増やしている。
彼らの合言葉は「愛しかないしか」。Vo.片岡健太が以前からバンドのスローガンとして掲げている言葉だ。
その言葉通り、彼らを一言で表すならば 「愛」。彼らの楽曲も、ライブも、メンバーの人間性も、すべてが愛に満ちている。愛が溢れている。それ故に彼らの楽曲は、聴く人を必ずと言っていいほど笑顔にするのだ。sumikaの魅力は、私が以前ロックに抱いていた偏った感覚のそれとは違う。愛。幸せ。笑顔。唯一無二の温かさ。こうなってくると、もしかしてロックとは呼びづらいのかもしれない。しかしそれがsumikaなのだ。愛しかないのだ。

冒頭に記した一行。あれは「MAGIC」という曲の一節である。昨年12月にリリースした『SALLY e.p』のリード曲で、発表以降メディア出演時には必ずと言っていいほど流れる、現段階での名刺のような1曲だ。ライブでも定番となりつつある人気曲だが、私はこれが純粋に名曲だというだけでなく、sumikaというバンドそのものを表している気がしてならない。

両耳にイヤホンを付け、再生ボタンを押す。第一音までわずか0.3秒。途端にハイテンションにスタートする曲。
《音と音に乗せて 今を変える》
とんだハッピーな曲が始まった。まだ驚きの方が強いが、間違いなく、聴き始めて「今」見えている景色や気分は変わっている。
《耳塞いで さあ準備して》
《1秒足らずで さあ傾れ込むから》
《動かない表情 動かない身体に
とびきりのマジックを》
促される通りに耳をイヤホンで塞ぐと、1秒足らずでなだれ込んでくる魔法。すごく嫌なことがあった。悲しいことがあった。落ち込んでいる。そんな、表情も体も動かない、いや動かせない時、sumikaがかけてくれる音の魔法。いつの間にか頭の中はsumikaがくれるハッピーで一杯にさせられる。ここまでわずか2分弱。すでに魔法の中にいる。
《耳の住処で起こすよマジック》
《主役変更ボタンを押して》
《変わらない状況 変われない心に
とびきりのマジックを》
ここから曲は一旦落ち着くかと思いきや、一気にボルテージを上げラストサビへと駆け抜ける。この曲を盛り上げるホーン隊やストリングスの豪華な演奏も相まって、まんまと気分は跳ね上げられ、手拍子はおろか盛大に踊り出したいくらいだ。完全にsumikaの魔法の中。主役は私だ。実際に状況が変わる訳でも何でもない。それでも、今はsumikaの魔法にかけられていたいのだ。sumikaがくれる愛に満たされていたいのだ。ああ、愛しかない。
そして、最後のこのフレーズ。
《音と音に乗せて 色を変える》
冒頭にもほぼ同じフレーズがあった。突如として始まった曲はその瞬間、まず「今」を変えた。そして3分半に渡ってこれでもかというほどの音の魔法をかけ、この歌詞と共に曲が終わる頃、見える景色は確かに色付いている。sumikaの魔法は、聴く者の世界の「色」を変えてしまうのだ。色付いた世界で、私が笑顔なのは言うまでもない。

「MAGIC」は彼らそのものだ。そして他にも数あるsumikaの楽曲たちは、アプローチの角度は違えどやはり同じように聴く者に愛と笑顔の魔法をかける。彼らには、魔法の杖も、空飛ぶホウキも何も無い。音だけだ。音だけで人を笑顔にする。現代にも魔法使いはいるらしい。
 

片岡健太は「生存」と「生活」は違うと言う。「生存」とは、生きている、ただそれだけ。呼吸をしている、命があるということだけでなく、生きながらにして、“活きている”。それが「生活」だ、と。
sumikaの音楽は、まさに生存を生活に変えてくれる、そんな存在だ。何気ない瞬間に色を付けてくれる。音楽の力、とはよく聞くが、sumikaほど全面的にキラキラとハッピーを振りまくバンドは少ない。公衆の面前でこんなにあからさまに楽しそうな男達が他にいるだろうか。そんなに楽しそうにされたら、そんなに愛を振り撒かれたら、こっちまで楽しくなっちゃうじゃないか。つらい時、ダメになりそうな時、彼らの笑顔に助けて貰いたくなっちゃうじゃないか。それが彼らの魅力である。悔しいけれど、完敗だ。どうやら彼らの魔法なしでは、もう生活できないらしい。
 

彼らの記念すべき1stフルアルバムが先日リリースされた。紛れもなく、最高傑作である。これまで通り、そしてこれまで以上に、彼らの音の虜になっている。彼らの魔力は健在だ。

現代に生きる4人の魔法使いにご注意を。

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