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2017年7月31日

こーた (17歳)

新潟暮らし

My Hair is Badから教わった地元愛

「新潟県の上越市から来ました。My Hair is Bad始めます。」
よく聞き慣れた声がする。炭酸水をお供にテレビにかじりつく。いつものルーティンだ。リビングにあるテレビの向こう側には渋谷クアトロのステージがあった。照明がVo./Gt.椎木さんを照らす。師走の虎は「真赤」によって火蓋が切られた。
 
 
 

新潟生まれ新潟育ち。
地方在住、田舎暮らしにはもう慣れた。というか、生まれてこの方17年ずっと田舎暮らしだからこれが日常だった。バスも電車も本数が少ないし、遊びに行く場所はいつも大体同じだし、タワレコがあるのは市街地から離れた郊外のイオンモールの中だし、祖父母の家に帰省すれば毎回夕飯の時に近所で誰かが亡くなったって話題になる。だから都会に対して憧れや劣等感を抱くこともあった。東京に行けば、目に映るもの全てが新鮮で、1度でいいからこんな都会で暮らしてみたい、なんて思ったりする。
そんな憂鬱な新潟暮らしも彼らとの出会いで少しずつ変わっていった。
 

出会いはYouTubeで見たMVだった。何の気なしに開いた「真赤」のMVで衝撃を受ける。

《ブラジャーのホックを外す時だけ 心の中までわかった気がした》
《0.1秒で飽きる毎日が、突然、輝き出したんだ 目が合うだけでも なぜだか胸が痛んだ》
《見つめたまま隣で黙っていた 君の犬なりに気を遣ったんだ》

こんなに女々しい歌詞を、ギターロックの真骨頂と言わんばかりのサウンドに乗せて歌った曲が今までに存在しただろうか?そのギャップに惚れてしまった。春、恋に落ちた。まさか9個も年の離れたお兄様方に惚れることになるなんてね。17歳の男でごめんね。
 

そんなお兄様方の出身が新潟県の上越市と知った時にはそりゃもう、すごく嬉しかった。新潟県出身というだけで、会ったことも喋ったこともない3人に親近感すら湧いてしまった。同じ訛りで喋ったり、県民しか知らないご当地ネタで笑えたり、恋人との思い出の場所が同じだったり、そんなことがある…かもしれないよね。バカかよ、んなんて思われるかもしれないが俺はそれぐらい嬉しかった。憂鬱だった新潟暮らしも、いつしかちょっとした誇りになっていった。
 

《考えてみたら全部ここにあったんだ みんなで撮ったバカな写真も 好きだった子の名前も/アフターアワー》
《あの夕焼けも あの帰り道も 忘れないように、夏が過ぎてく/夏が過ぎてく》

なんて青春小説の様な歌詞も

《18歳の目をしてた日々と 青いコーヒーと 冷え込んだ駅の灯り/18歳よ》
《夕方の校舎、乾いた道路の音 あの日のこと、あの日のこと/最近のこと》

見たこと無いはずなのに、どこか懐かしく感じる歌詞も

《数え切れない僕の間違いも 使い切れず残ったシャンプーも 僕の悪い癖も 君はわかっていたんだ/悪い癖》
《なんて言うか、悲しかった時のことですらも 忘れたくないって思うの/卒業》

なんて赤裸々な歌詞も

椎木さんが新潟で見たもの、新潟で感じたこと、が少なからず影響してるんだと思うとすごく感慨深い。エモい。椎木知仁の世界観は新潟が作ったんだよ。エモい。エモい。
 

椎木さんはハイパーホームランツアーの最終日、新潟LOTSで叫んだ。
「俺らが3人にこだわってる理由!俺らが新潟上越にこだわってる理由!」
すごく心に刺さった。どんなに売れて名前が広まり、全国をハイエースで走り回ろうと、彼らは地元を大切にしてくれている。ツアーのファイナルを新潟にしてくれたことも、彼らが地元を大切にしてくれている何よりの証。地元を愛する。簡単なことかもしれないが、それがただひたすらに格好よかった。間違いなく俺の憧れで青春でカリスマでヒーローだった。
 

たかがロックバンドの熱い想い。
されどロックバンドの熱い想い。
My Hair is Badから教わった地元愛。
彼らの背負った「新潟」という看板。
先生から言われても分からなかった地元愛を、マイヘアは頑固で意地っ張りな17歳に教えてくれた。今では一生新潟で暮らしたいな、なんて思ってるよ。将来まだ何になるかも分からない。だけど、新潟の人達の役に立ちたい。これからゆっくりとやりたい事を見つけていこうと思う。何にも無いけど何でもある、俺はあの街が大好きです。タワレコは街中にもう一店舗欲しいけどね。
 
 
 

全ての曲が終わった。メンバー3人がそれぞれ渋谷クアトロのステージから降りていく。照明が暗転する。テレビの画面が黒くなる。そこには口をポカンと開けた間抜けな自分の顔があった。キャップを閉め忘れた炭酸水の炭酸はすっかり抜けて、ただの水になっていた。

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