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ラジオでミスチルから「Birthday」プレゼントを貰った話

ラジオの中で聴く音楽は「エモい」

2020年3月4日、Mr.Children38枚目のシングル「Birthday/君と重ねたモノローグ」がリリースされる。
 
 

今はまだ2020年の2月なので、これはドラえもんよろしく「未来」の話である。
 
 

とは言え、曲は公式から何のアナウンスもなく一足先にラジオで解禁された。当然ファンの中にはラジオ音源で聴く人もいれば発売日にCDで聴くという人もいるのだがその辺りは完全に個人の自由なので特に何も言及する必要がない。
 

しかし個人的なことを言うのならば、ラジオで聴く音楽というのは素晴らしい。音楽というのはただでさえ思い出をどこまでも引き連れてくれるものだが、ラジオで初めて聴く音楽は更に特別な思い出を引き連れてくれる。もちろんCDで初めて聴く音楽もいい。だが、CDとラジオの圧倒的な違いは「自らの力ではコントロールできない流れの中で聴くかどうか」だと思っている。
 

CDは自由だ。自分の意思でケースを開け、ディスクを取り出し、トレーに置き、再生ボタンを押す。自分の好きな場所で、好きなタイミングで聴くことができる。しかしラジオは違う。不可抗力だ。流れているものの中で聴く。始まってしまえば、一時停止も巻き戻しもできない。ラジオという流れの中で聴く曲はまた違う景色をまとう。何気ない日常を知らせるニュースが読み上げられ、今日の天気や季節の出来事など他愛のない話が続く。そんな日常の中、ラジオDJが曲紹介を始める。例えば、昔の歌番組においては歌唱前に司会者による「前口上」というものがあったわけだが私はそれがたまらなく好きだ。それはまるで食事の前の食前酒のようで、これから始まる食事に華を添えてくれる。ラジオにも同じような雰囲気がある。イントロをバックにしてラジオDJが曲の紹介をはじめる、それによりモノクロの日常に徐々に色がついていくのが分かる。そしてラジオDJがその声を止めた時、バッと曲が始まり、日常という景色が一変する。音楽の力を、ポップスという音楽が秘めている「日常の景色を塗り替える力」を存分に感じる。最高だ。これを「エモい」と呼ばずに何を「エモい」と呼ぶのだろう。
 

とは言え時代は変わった。今はアプリで簡単にラジオがタイムフリー再生できる。中学生の頃は深夜ラジオに張り付いてMDに録音しようと必死だったが、便利になったものだ。そもそも今、平日の昼間にラジオを聴くことはできない。仕事を終え、スマホを車のスピーカーとBluetooth接続し、アプリを開く。平日の日が暮れはじめた車内に、平日の真昼間を伝えるチャイムが鳴り響く。その曲は番組開始から13分後くらいに流れると書かれていた。帰り道は30分ほどだからちょうどいい。ラジオを聴きながら家に向かい車を走らせる。10分くらい経っただろうか。もう日も暮れそうだ。車のライトを点ける。ああ、そろそろかな。大きな期待感と少しの緊張。ラジオDJが少し緊張感のある声で話題を仕切り直す。ああ、来るなあ。DJが原稿をマイクにぶつけたらしい。その後イントロが小さく流れ始め、DJがこれからすごいことが起こると少し早口で話す。わかります。そうですよね。すごいですよね。最高の瞬間ですよね。その言葉ひとつひとつでただただ自分の心が高鳴る。「Mr.Childrenの新曲です。」この世にここまで心躍る言葉があるだろうか。この世で一番好きなアーティストの新しい音を耳に入れる瞬間よりも心躍る瞬間があるだろうか。DJの声が消えた瞬間、あの人の声が聴こえる。
 
 
 

車のフロントガラスから見ていた何気ない日常の景色が一変した。
 
 
 

「ポップ」とは「何気ない日常の景色を一変させ彩り輝かせるもの」
「ロック」とは「自由なもの」
 

これは私の中での勝手な概念だ。それになぞらえると、「Birthday」はMr.Childrenのポップとロックが完全なバランスで完全に一致したドドドドドドドドドッドー名曲だと確信した。ドを何個重ねても足りない。ドラえもんだけに。これぞ彼らが自分たちの周年ツアーを「POPSAURUS」と称する所以だと思う。彼らはどこまでもポップでありながらもどこまでもロックだ。そのどちらかに偏ることはない。ポップとロックの共存。言葉にするのは簡単だが、それは絶妙なバランス感覚の上にしか成り立たない奇跡的なものだと思う。
 

恐竜は花の出現により滅亡したという説があるらしい。Mr.Childrenという恐竜も一度深海に沈んだが、絶えることはなかった。《負けないように 枯れないように 笑って咲く花になろう》そう、「花」として生まれ変わったのだ。恐竜は絶滅したが、Mr.Childrenという恐竜は形を変え続け、進化し続け他の生き物として永遠に続いていく。Mr.Childrenに決まった姿など最初からない。どこまでも自由だ。どこまでもロックだ。外見がどれだけ変わろうとも、「恐竜だった頃の自分達」という内面は決して変わらない。恐竜という「ロック」は「ポップ」を携え、形を変え、どこまでも進んで行く。
 

「Birthday」はそんなMr.Childrenの究極のテーマである「進化」「再生」「生まれ変わり」に根付いた疑いようのない「名曲」である。
 

とにかく、この「生まれ変わり」の瞬間に立ち会うことができた喜びを噛み締めよう。Mr.Childrenは今まで何度も生まれ変わってきた。紆余曲折を経て何度もバンドとしての「誕生日」を迎えて来た。2020年、私はMr.Childrenの誕生日を「Birthday」で祝うことができた気がする。初めて具体的にバンドの「終わり」について触れた「Against All GRAVITY」というタイトルのツアーで重力と対峙することを決めた彼ら。そんな「恐竜」のままの彼らは「Birthday」で「恐竜たち」と共に見事に飛び立っているではないか。
 
 

なぜ公式から何のアナウンスもなく突然ラジオで新曲がオンエアされたのかはよく分からないが、それは《It’s your birthday.》と奏でる彼らからの粋でエモいサプライズ「Birthday」プレゼントであるような気がする。おそらく、私の中で「Birthday」を初めて聴いた時の記憶は「ラジオDJが原稿をマイクにぶつけていた」ことと見事に一生紐づき続けるであろう。これこそが「エモい」のだ。かけがえのない思い出を添えてくれた「ラジオ」という媒体に感謝を告げたい。
 
 

続きは、CDが発売され映画を観に行ってから書くことにしよう。
 
 
 

※《》内の歌詞はMr.Children「花 – Memento-Mori -」「Birthday」より引用

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