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2017年7月31日

ANNA (38歳)

圧倒的なパワーとアートの両立

ゴリラズ大爆発 at フジロック

 それは「M1 A1」という映画的な曲ではじまり、アンコールで皆が大好きな「Clint Eastwood」の大合唱でクライマックスを迎え、「Don’t Get Lost In Heaven」「Demon Days」という静かで荘厳な曲で神々しいクロージングを行うという、いかにもデーモン・アルバーン的な、凝った演劇のように練りに練られた曲順で構成された、ある一つの圧倒的なアートだった。

 おそらく、Blur初期からのデーモンを知らない人達は、今回のフジロックでのゴリラズのライブを観て、デーモンの爆発的なステージに驚嘆したに違いない。49歳のおじさんが、ジャンプし、絶叫し、ダイブし、人波に乗っかり、おどけたポーズをし、観客にマイクを向け歌わせ、とにかく200%超えのテンションで90分ノンストップ動き回る。もはやカッコいいとかカッコよくないとかを超えた次元のエネルギー。しかしデーモンはBlur初期から変わらずこうなのだ。Blurの初期の頃はセットを壊したりすることさえ日常茶飯事だった。
 そしてただのパワープレイではないところがデーモンの魅力。太いベース音やヒップホップ、電子音などが特徴のパワー系の音楽の中、そのメロディだけはデーモンの原点であるクラシックの要素が感じられる繊細な美しさを放つ。時に投げキッスをしてみて照れくさそうに頭を掻き観客に背を向ける。時にピアノの前に座り「タラリラタラタラ〜〜リラリラ」と即興でサティのような不思議な旋律を奏でる。もちろん冒頭で述べた演劇的なセットリストもデーモンの「アート」である。

 この圧倒的なパワーとアートの両立に、観る者は胸の高鳴りと興奮を抑えることができない。それに加えて、ライブ中は、激しい押し合い・へし合い・大合唱の狂気と楽しさももれなく提供されている。完璧なライブ。
 
 冒頭から8曲ほど、過去のスマッシュ・ヒット曲や今回のニュー・アルバム「Humanz」の曲の中でもキラーチューンを織り交ぜ、ほとんど観客は息つく暇もないくらいのやばいほどの盛り上がり方で、私自身はもうぎゅうぎゅうと周りに押しつぶされそうになりながらも文字通り我を忘れて無我夢中で楽しんでいた(実のところ、最初の3曲ほどは、自分がほとんど崇拝していると言ってもいいデーモンを間近で観ているという感激で涙が自然に流れていた)。
 そして中盤9曲目「On Melancholy Hill」は一つの到達点というか、いわゆるライブの最中に神が降りてくるようなビューティフル・モーメントだったように思う。それまでのパワー系・ハイテンションの盛り上がり方とは違う、静かだが会場全員が美を共有しているような、そんな高揚の仕方だった。
 
 最後に、デーモンの行動力や「人種を超える」という思想についても触れておきたい。ゴリラズというバンドは、表面的には「バーチャルバンド」という形をとっているが、中身は「UKロックのBlurという枠組みではできない、ブラックミュージックや人種を超えた才能との交流で新たな音楽を生み出したい」というデーモンの欲求の実現の場なのだと思う。今回初めてゴリラズのライブを観て、たくさんの黒人のバンドメンバーと(もちろん白人もいるが)笑い合い肩を抱き合い人種を超えてバイブスを生み出すデーモンを目の当たりにして、彼自身の野望を叶えるための半端ない行動力を改めて尊敬した。デーモンのことばかり書いてしまったが、もちろんバンドメンバー(特に黒人のバンドメンバー)もノリがよく、真っ白な歯を見せながら観客に「こうやってノって!」と上に伸ばした手をリズムに乗って振ってくれたりと、とても暖かい気持ちにさせてくれたことも忘れられない。彼らゴリラズがくれた数日前の恍惚の余韻の中にまだかろうじているうちに、彼らのことを記録しておきたかった。日常生活を送る中でこの恍惚が冷めてしまっても、またあの輝く空間を思い出して自分も目標に向かって頑張れるように。

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