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音楽で生きるということ

あいみょんと歩む果てしない夢路

 2月13日、夕暮れ時の大阪城公園、ギターを持った何人かの女性が適度な距離感を保ちつつ歌っていた。去年に流行った歌やオリジナル曲が途切れることなく耳に入る。きっと彼女たちは目の前の大阪城ホールに立つということを夢見ているのだろう。同じシンガーソングライター、あいみょんもかつてはそうだった。
大阪城ホールで「AIMYON TOUR 2019 -SIXTH SENSE STORY-」の最終追加公演が行われた。私は本公演だけではなく、あいみょんのライブに何度も足を運んだことがある。ラジオの公開収録やフェスなどで色んなあいみょんの表情を観ていた。もちろん10月に開催されたツアー本編のオリックス劇場での公演も観ていた。両公演とも同じツアーなのでセットリストや演出が大きく変わった点はなかったのに、なぜか大阪城ホール公演ではこれまでよりも大いに感動した。
 そもそもあいみょんにとって大阪城ホール公演ははじめてだったそうだ。オリックス劇場よりも、また大阪にあるどのホールよりも広い会場に彼女が立つという記念すべき瞬間に立ち会えるというだけで開演前から胸が踊ってしまう。その上、追加公演ということはアルバム曲が全国を回り、かなりブラッシュアップされているという期待もあった。
 1階席の前から十数列目だったオリックス劇場公演に対して今回はソールドアウトぎりぎりのタイミングで入手した立ち見席で観ることとなった。後ろから見る分、会場全体を俯瞰して見ることができ、開演前から無数の人から発せられるワクワク感を感じる。
 そしてちょうど開演時間に客電が落とされたとき、“ら、のはなし”の前奏が流れてきた。それとともに赤いスクリーン幕が上がり、ついにギターを弾きながらバンドメンバーと音を合わせているあいみょんの姿が見えた。そのときの気持ちといったら非常に感慨深いものだ。その存在に対する歓声だけでなくオリックス劇場では1フレーズ歌い終わったときに歌声に対する歓声も上がっており、彼女のスター性を感じた。しかし今回、それだけではなくこの曲が始まるということは本当にツアーが今日で終わりを迎えるということの確固たるサインだということも同時に認知した。開演後しばらくは4ヶ月前の公演にはなかった寂しい気持ちと、こんなにも人気のあるあいみょんを大きな会場で観られている嬉しい気持ちでいっぱいだった。
 その後は“二人だけの国”や“わかってない”など新旧問わず体を揺らしながら心地よく聴ける曲が立て続けに歌われた。正直、オリックス劇場のときはアルバムが発売されたばかりだったため、アルバム曲を単に「新曲」と捉えるしかなかった。そのため、アルバム曲を聴けているというレア感に浸ることに精一杯だった。それから何ヶ月か経った本公演中はアルバム曲の細部の表現まで追求されていることにしばしば気づいた。また大阪城ホールの立ち見席ならではの視界の良さやスペースのゆとりから曲自体に入り込むことができた。この浮遊感のある時間がずっと続けば良いのに、と何度思ったことだろう。 
 それに対して“生きていたんだよな”では観客が息を呑んで見入ってしまうほど緊張感が漂っていた。それもそのはず、無秩序に力強く鳴らされる彼女のアコースティックギターで曲が始まり、最後まで彼女の歌声とギターのみで演奏されたのだ。緊張感が漂うステージ上でただ1人細いピンスポットを浴びながら歌う彼女の姿にすべての観客が見入っていた。スポットライトは細いのにあいみょんの存在感はとても大きく、曲の説得力が前回の公演よりかなり増していた。
 そして、追加公演にしか含まれていない曲がある。それはあいみょん初の配信限定シングル曲“さよならの今日に”である。MCでニュースを観るのが好きという話をしていたが、この曲はNEWS ZEROのエンディングテーマに決まっている。鋭く刺さるようなエレキギターの歪みや低音のボーカルが印象的だった。現代社会の日々の流れが斜めから描かれており、楽曲の振り幅の広さを改めて感じていた。
「後半戦もよろしくお願いします!」という宣言から始まった後半だが、ここで本ツアーで最もグッときた場面がある。

「夢追いベンガル!」

と次の曲のタイトルをギターを片手に本公演一の声量で叫んだとき、私はこのツアーの集大成を見た気がして涙が出た。私にとってアルバム『瞬間的シックスセンス』の中でもこの曲がもっとも元気を与えてくれる曲なのだ。そして、「音楽で何かをしでかしたい」と語るあいみょんの勢いが一番ぶつけられている曲でもある。ここ数年間の急速な環境の変化の渦中にいるあいみょんと今まさに大阪城ホールでライブをするという夢を叶えているあいみょんが重なり、夢をひたむきに追うことの大切さを実感した。また、その声量を上回るくらい観客の声も大きく、大阪城ホールはあいみょんの作る渦に完全に飲み込まれていた。それほどあいみょんのエネルギッシュな歌とパワーが観客の歓声と合わさっている様子に胸が熱くなる。これほどあいみょんのエネルギーを感じる光景をあまり見たことがなかったからだろうか。しかも、“夢追いベンガル”の2番に入るとあいみょんはハンドマイクになり、ステージ上を右往左往していた。誰も置き去りにしないその動きはファン思いの性格を表していたように見える。また、そのアクティブな彼女の姿によって会場の歌声はより一層大きくなった。
 ライブの終盤に披露された“君はロックを聴かない”の大合唱にはあいみょんも涙腺を緩めていたようだ。そして最後には2つにツアー開催のアナウンスがされた。着実に公演をやり遂げるあいみょんの進歩をもう誰にも止められない。
 このようにあいみょんの音楽が1人1人に響き渡ったツアーだったが、私はオリックス劇場で聞いた言葉が頭からずっと離れなかった。「ライブの会場が広くなったことで距離が遠くなったと言われることがあるけど、私はその分たくさんの人に会えるからむしろ近くなったと思っている。」という言葉だ。正直、あいみょんに限らずアリーナクラスのアーティストには遠くなったと寂しい気持ちを抱くことがある。でも、今回のツアーによってその考えが払拭された。物理的な距離は遠くなっているかもしれないが、夢を一緒に叶えることができているのだ。その証明が今回の大阪城ホール公演である。会場を立ち見席から俯瞰していたからこその考えだが、1万人以上もいた観客もあいみょんの流した涙を構成した要素の1つだっただろう。
 ライブ終了後、会場前と同じく女性シンガーソングライターが歌っていた。彼女がもしかしたら何年後かに大阪城ホールで歌っているのかもしれない。その頃にはあいみょんはまた別の大きな会場に立っているのだろう。そう考えると音楽で生きるということは果てしない夢を追い続けることに他ならないと考えた。きっとあいみょんはまだまだ夢追い人であり続けるに違いない。

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