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「いつまでだって別枠でいようね」

パスピエを好きでいてよかったと何度でも思わせてくれた、十周年特別記念公演"EYE"

2020年2月16日、昭和女子大学人見記念講堂

パスピエの結成10周年を祝う特別記念公演、
その名も”EYE”(読み:いわい)が行われた。

“EYE”をアイではなく、いわいと読む。
逆から呼んでもEYE、いわい。(パスピエはアルバムタイトルやツアータイトルにも回文を使うことが多い)
発表された当時の最新アルバム<more humor>のリード曲「ONE」のサビには”eye”(こちらはアイ)という言葉が出てくる。eye=瞳、会場は人見記念講堂…。
このユーモアさがまさにパスピエらしい。
 

実のところ、パスピエのアニバーサリーイヤーは2019年だ。
メンバー自信作のアルバム、more humorを引っさげた全国ツアーを行っていた。
パスピエの10年を感じさせる素晴らしいアルバムとツアーだった。
そしてその千秋楽である東京公演で発表されたのが、この”EYE”だった。

「来年(2020年)になっちゃったんだけど…絶対皆さんに楽しんでもらえる、特別な公演になるので」
と、リーダーの成田さん(Key.成田ハネダ)は言った。
 

SOLD OUT公演だった。
記念公演はたった1公演のみ。パスピエの10周年のお祝いに、全国からベルガマスク組(ラジオのレギュラー番組で制定されたパスピエファンの名称)が東京に集まった。
この日も雨だった。パスピエのライブは雨の日が多い。
 

パスピエのいう、”いつもと違った特別なライブ”はどんなものなんだろうかと、ワクワクが止まらなかった。楽しみにしすぎたもので、始まるのが寂しいとすら思った。

18時。ブザーが鳴り響き、ステージの幕が開く。

そこにはストリングスセットをバックに立つ、パスピエの姿。
下手に成田さんと上手につゆさん(Ba.露崎義邦)と、いつもと逆の立ち位置(おそらく成田さんのグランドピアノとシンセサイザーの設置の関係)、三澤さん(Gt.三澤勝洸)と謙介さん(サポートDr.佐藤謙介)は横並び。
そして真ん中に鮮やかな青と赤の衣装に身を包んだなっちゃん(Vo.大胡田なつき)がいた。
 

現在の新体制になって初の配信シングル「あかつき」でライブは幕をあけた。
ストリングスとパーカッションが加わったパスピエの音、
それはまるで長く待ち望んだ夜明けを迎えるような、壮大な幕開けだった。

「”EYE”って、自分たちでお祝いしてもらうタイトルつけちゃったんだけど(笑)パスピエの10年、一緒にお祝いしていってください!」
 

2曲目には「始まりはいつも」。
なっちゃんが、「今、大胡田なつきがみんなに伝えたいこと」と気持ちを込めたという、アルバム<more humor>に収録されている、パスピエにとっても大事な曲だ。
昨年のアルバムツアーでは、この曲は本編最後に位置付けられ、間奏でなっちゃんが「これからもパスピエと繋がっていてくれ!!!」と叫び、涙が止まらなかった。
ホールで、この特別編成で聞くこの曲も素晴らしいものだった。
 

「ネオンと虎」「DISTANCE」「瞑想」「あの青と青と青」の流れは特にストリングスの存在が普段の何倍も楽曲を豊かにしており、照明の演出も含めて圧巻だった。
バンドでこのような奥が深い表現ができるのも、本当にパスピエのすごいところだと思う。

ストリングスを加えた特別編成について、ずっとやりたかったことだったと明かす成田さんとなっちゃん。

「僕はやっぱりクラシック出身 (成田さんは東京藝術大学のピアノ科を卒業)なのでね。曲を書くときに、オーケストラを想像したりすることもあるから。」

「(ピアノも用意してもらって)嬉しい。」「(豪華な特別編成で)背筋が伸びる思いです。」
世界最高峰のピアノ、スタインウェイを前にした成田さんは一層輝いて見えた。
 

そして、「ここからは、バンドならではのことを。」とバンドセットのみでの演奏がスタート。

“EYE” Versionにアレンジされた「チャイナタウン」は、原曲のアッパー感ではなくミドルテンポの、”聞かせる”アレンジになっていた。
が、成田さんがグランドピアノを弾きながら、シンセサイザーも巧みに操るという、まさに成田ハネダにしかできないであろうことをこなしていたのが印象的だった。
 

そこからは「マッカメッカ」「グラフィティー」「MATATABISTEP」とアップテンポな定番曲で畳みかける。

続く、これもまたいつもライブでは盛り上がる定番曲であり、パスピエらしさも詰め込まれたジャポニズム感溢れる「つくり囃子」からはなんとHIFANAが登場。

バンド×DJというこれもまた新しいアプローチだった。
本当に楽しそうに踊っていたメンバーたちも印象的であり、このパスピエの和の雰囲気を持った楽曲とDJのコラボレーションはまさに”斬新”であり、会場は大盛り上がりだった。
 

直後のMCでは「HIFANAはずっと、本当に大好きで。私ただのファンなんだけど!いつか一緒にやりたいと思っていたから嬉しい~~」と笑みがこぼれていた。

「夢がかないました。みんなのおかげで。ありがとう。」
 

ライブ終盤は、「シネマ」「正しいままではいられない」そして「真夜中のランデブー」。
この日の「正しいままではいられない」も、”言えない言葉は歌にして <今を抜け出す>”の部分がライブアレンジの”<君に届ける>”になっていた。

個人的にここで「真夜中のランデブー」が聞けたことがすごく嬉しかった。この曲は普段演奏されることはないものの、ファン人気が高い印象で、ファンの投票によりセットリストが決められた2018年のFCライブで披露された際には歓喜の声があふれていた。

その曲がこの記念公演で披露されるのがすごくグッときたし、何よりストリングスとの親和性が高く、すごく感動的だった。
 

「みんななら薄々気づいてるかもしれないけど、シネマ、正しいままではいられないとか、この流れは終盤かなって(笑)次で最後の曲です。」

普段より客席からのえー!という声が明らかに少なく、「あれ?いつもより声小さくない?ホールだから?(笑)」となっちゃんは言っていたが、おそらく多くのお客さんがこの素晴らしい流れにあまりに気を取られすぎていたんだと思う。
そこまでの音楽の余韻が、あまりにすごかった。
パスピエの音楽に圧倒されていた、少なくとも私はそうだった。
 

「最後に私たちの、今大事な曲を、ストリングスと、パーカッションと、HIFANAと…みんなで演奏したいと思います。」

本編最後に演奏された、”パスピエの今大事な曲”、「ONE」。
この日しか聴くことができないであろう、特別編成での「ONE」。
リリース当初は今までのパスピエには全くなかったような曲調、なっちゃんの低音で驚きもあったが、そのどこかにやはりパスピエらしさがあり、切ないけれど、悲しいわけではなくて。
この素晴らしい”特別記念公演”の締めくくりだった。
 

アンコールでは、リリースされたばかりの配信限定シングル「まだら」が初披露された。
そしてもう1曲は、成田さんが10代の頃には作られていたという、「トロイメライ」。
 

アンコールが終わってもなお拍手は全く収まらず、ダブルアンコールでメンバーが登場。
「最後に一曲。今日は本当にどうもありがとう!」

“最後の一曲”が始まるかと思いきや、成田さんが「メンバー紹介してもいいですか?」と。

これは私の感じたことであり、定かではないが、曲前のメンバー紹介は成田さんのアドリブ?のように(少なくともなっちゃんは知らなかった?ように)感じた。
成田さんが、なっちゃん、つゆさん、三澤さん、そしてこの日もサポートをしてくれた謙介さんを紹介。
最後はなっちゃんが「そしてなんといっても、うちのリーダー、成田ハネダ」とリーダーを紹介。

二人がばっちり目を合わせて始まった、最後の一曲、「贅沢ないいわけ」。
会場が最後にもう一度幸福感に包まれ、終演した。
 

「ああ、パスピエが好きでよかった。」

詰まるところがそれだった。この2時間で何度も思ったことだった。

MCでなっちゃんが「これからもパスピエについてきてほしいの」と言っていたが、そんなこと言われるまでもなかった。
でも、「10周年だから」とストレートに思いを言葉にしてくれるのも嬉しかった。
 

10周年、自分たちがやりたいと思ったことを完璧にこなすことで、こんなにも楽しくて、感動的な公演を見せてくれた。
どうやったらファンが楽しんでくれるか、ということを考えてくれたのもすごく伝わってきた。
きっと準備するのも大変なことだっただろう、なんてことは容易に想像できる。

沢山沢山、「みんな本当にありがとう」と感謝の気持ちを伝えてくれるメンバーたち。
そんなの、こちらこそありがとうだよ。
パスピエを続けてくれて、こんなに素敵な音楽を届けてくれて、ありがとう。
 

「次(こんな風にお祝いするの)は10年後かなー。10年後も来てくれる?」
そんな言葉に、ああ当たり前に10年後もライブを続けていてくれるんだな、と胸が熱くなった。

さらに、なっちゃんがお客さんのあたたかい拍手を受けて、
「もう~大好きなんだよ!」
と言っていたのがすごくすごくグッときた。
 

パスピエの音楽が、やっぱり大好きだった。

パスピエに出会うことができて、本当に良かった。

パスピエの10周年を一緒にお祝いすることができて、とても幸せだった。
 

ガラス細工のように、綺麗で、キラキラしていて、それでいて鋭くて。
光の当たり方で違った輝きを見せるような、磨きあげて完成された、大事に大事にしたいもの。
それが私にとってのパスピエの音楽のイメージだ。

そんなパスピエにしかできない音楽がずっと続いていきますように。
そんな大好きなパスピエをこの先もずっとそばで見ることができますように。
 

“雨降ってもあっぱれあっぱれ快晴です
的なね 日がねありゃ大正解
良し悪し見極めながらどこまでも繋いで行こう” *
 

成田さん、なっちゃん、つゆさん、三澤さん。
10周年本当におめでとうございました。

まだまだ続く、知らない景色を、たくさん見せてください。
 

「いつまでだって別枠でいようね」*
 

大好きなパスピエへ、めいっぱいのありがとうと愛を込めて。
 

*「始まりはいつも」の歌詞抜粋

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