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忘れらんねえよ

ステレオガールをライブハウスでみた

 最初から最後まで、一度もありがとうと言わなかった。わたしはこの人になりたいと思った。
 
 都内を中心にじわりじわりと浸食を試みる彼ら、ステレオガール。Jポップじゃないし、今どきの邦ロックでもなくて、Oasis を聴いてみてなるほどねと思う。つま先よりも、かかとでリズムを打ちたくなるあの感じ。まる裸の心臓を撫でるように、Vo. 毛利安寿が口をひらく。 うぃーあーすてれおがーるふろむとーきょー。やっぱりそこにアルファベットは見えなくて、わたしはそれがたまらなく好きだ。ポケットに突っ込んだ両手を、あっけないほどに白いなあと眺めていた。壊れそうな、崩れそうな、白。
 
 ステレオガールはどの楽器もつよい。「GIMME A RADIO 」、イントロのベースに思わず肩を揺らし、「P.R.D.」スネアの三連符では手首と指先が勝手に踊る。そして、わたしの呼吸を操る2本のギター。鳴りはじめる1秒前は自然と息が止まって倒れそう。
 それでも、なぜだか黒目はずっとボーカルを追っていた。「ひとごろし」全然おめでたくない歌を、と少しおめでたそうに言って始めた、あなたから目線を外せなかった。悪魔とかクスリとかそういうのに取り憑かれたみたい、に。叫ばないのに、迫力に負けそうだった。ひとごろし、ひとごろし、ひとごろし。言葉が放されてから、意味がわかるまで時間がずれる。わたしはこれを狂気とは呼べない。誰でも持っているのに、誰もが見て見ぬふりするものをただ、彼らが見透かしているだけ。
 
 すきじゃなくてもはるはきます、そう言われて初めて、ああ、わたしは春が嫌いなんだと気づいた。新曲だったと思うけれど、ぼんやりとしてしまった。安寿はココロを吸いとって、そのまま空気に溶かしている。
 
 綺麗になりたいわたしは、綺麗な音楽に焦がれる。会いにいく。あなたにはどうしたってなれないけれど。
  

 忘れらんねえよ。

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