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Mr.Childrenが歌うのはラブソングだけじゃない

示し続ける様々な「愛の形」

日本の音楽界を牽引するMr.Childrenの大ファンなのだけど、どういうわけか周囲には「あまり好きじゃない」という人が多い。中学生のころは、仲間うちに彼らの曲を好まない者は(ほとんど)いなかったのだけど、高校に入ったころから、その「逆ミスチル現象」とでも呼ぶべきものが、なぜか僕の周囲で起こった。いつだったか「学生みたいなラブソングばかり書いている」という批判を聞いた時は、さすがに腹が立った。

もしかすると当のMr.Childrenは、言いたい人には言わせておけばいいと思っているのかもしれないし、いい歳になった僕は、ファン同士で「いいよね」と語り合えればいいのかなとも考えている。それでも「ラブソングばかり」というのは事実誤認なので、その誤解を本記事で解きたいと心に期している。

Mr.Childrenの楽曲の多くには、何かしらの形で「愛」が含まれている。そういう意味ではラブソングを生み続けているともいえるのだろうけど、恋愛感情を歌うだけのミュージシャンでないことはハッキリさせておきたいと思う。

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たとえば「SUNRISE」の歌詞は、少年時代の自分を守ってくれた家族(あるいは環境)に対する想いをつづったものである。

<<どうしてこんな 不確かなものを 無邪気に信じていれたんだ?>>
<<少年の日々を回想うとき 不思議なほど幸福な気持ちが僕を包む>>

家族関係というものは、もしかすると桜井氏の歌うとおり<<不確かなもの>>なのかもしれない。あまり好ましくない環境で育ち、それゆえに自分の築いた家庭を大事にしようと思っている人はいるだろう。逆に今、あまり良くない境遇にあり、自分の生まれそだった環境を懐かしむ人もいるはずだ。

これは僕には「甘い詞」には感じられない。少なくとも従来型のラブソングではないと思う。そういう切々とした楽曲に「SUNRISE」という題が付けられていることに、非凡さを感じる。

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あるいは「ハル」。アルバム収録曲であり、これが僕の(Mr.Childrenの楽曲のなかで)3番目に好きな曲だと言ったら、もしかするとご当人たちさえ驚くかもしれない。これは「人間」というより、夜風の優しさを称える歌だ。夜風が、この世に希望があると思い出させたこと、そのことへの感謝が込められた曲だと僕は考えている。

<<誰のために生きているのかなんて考える気もしなくなる>>
<<春の風に 世界は素晴らしいなって少し思えた>>

この歌詞はラブソングだろうか。とりようによっては、そうなのかもしれない。他者の存在を考えなくなった瞬間、ただ<<春の風>>に心を動かされた瞬間、むしろ楽曲の主人公は、誰かを愛そうとする態勢を整えられたのかもしれない。

それでも僕は、夜風に吹かれることだけで満たされる時節というものが、人間にはあるのではないかと個人的に思う。他者の存在も非常に大事だけど、自然現象に感謝したくなる時はあるものだと考えるのだ。

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「跳べ」は痛快な楽曲だ。夢のなかに現れた亡き祖母への感謝を歌い上げる楽曲である。

<<おばあちゃんが出てきて>>
<<弱った僕をおんぶしてくれて 悪い奴らをやっつけた>>

この曲を聴くと、いくぶん晴れやかな気持ちになると同時に、思わず涙してしまう。いま自分の周りに<<悪い奴ら>>がいるなどと言うつもりは全くない。それでも40年近くを生きてくると、誰かを意図的に傷つけようとする悪意ある人とも、時に遭遇してしまうものだ(すべての人に当てはまることではないと思う、そして僕自身もまた何人かを傷つけてきた)。

この曲が僕の「子守唄」のようなものだと言ったら、やはりMr.Childrenはびっくりするかもしれない。意外に思うかもしれない。それでも僕は思うのだ、夢のなかに<<おばあちゃん>>が出てきてくれたら、かつて自分を痛めつけた人たちを(あくまで夢のなかで)やっつけてくれたら、きっと翌朝は跳べるだろうなと。

いい夢というものは、見ようと思って見られるものではないようである。せめてもの試みとして、僕はMr.Childrenの曲を聴き、亡き祖母の写真を眺めてから部屋の照明を落とすことにしている。

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くり返しになるけど、たとえMr.Childrenをバカにされようと、今さら僕はイライラしたりはしない。そしてMr.Childrenも「俺たちの新曲は期待には応えられないかもしれないよ」「リスナーが望んでいるものとは違うかもしれないよ」とでもいうような気持ちで、つまり、いい意味で開き直って、活動をつづけているのかもしれない。

それでも僕は、彼らに向けられる偏見への、ささやかな抵抗として、こういう拙文を書いてみた。Mr.Childrenを好きになってほしいとまでは言わない。「ラブソングの大家でしかない」という先入観を捨てて(たとえば本文で挙げた3曲を)聴いてみてほしいと願うだけだ。

こういう類の発信を、Mr.Childrenが喜んでくれるかは分からない。それでも僕は、どれだけ彼らの楽曲に救われてきたかを、何とかして伝えたいと思う次第だ。

※《》内はMr.Children「SUNRISE」「ハル」「跳べ」の歌詞より引用

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