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この感情に名前を付けるなら

L'Arc~en~Cielの世界に溺れた日のこと

「信仰」と呼ぶには些か刹那的で、「愛」と言うほど安定していない。だからと言って「応援」「興味」「マイブーム」「お気に入り」などという言葉でくくるにはあまりにも大きくて深いもてあました感情。あの衝撃的な出会いに名前をつけようにもなかなかしっくりくるものが見つからない。見つからないまま7年が経った。

私がL’Arc~en~Cielに出会ったのは13歳の時である。好きなアニメの主題歌として『READY STEADY GO』を知ったのが最初だ。当時、音楽に疎かった私は鳥肌が立つほど驚愕した。「世の中にはこんなにカッコイイ曲を歌うアーティストがいるのか」と。ボーカルの低く纒わりつくような声と耳に直接流し込んで鼓膜を震わせているんじゃないかと錯覚さえしてしまうような激しいドラム。未知の領域。それがまさしくロックと初めて出会った瞬間でもある。

それからほんの少し後に、たまたま付けていた音楽番組にL’Arc~en~Cielが出演していた。『READY STEADY GO』は繰り返し聴いていたが、ラルクの姿を見るのはこれが初めてだった。4人がステージに立ち、演奏を始めたその瞬間。私の周りからテレビ以外の、ラルクの音楽以外の音が消えた。スタジオのライトに照らされる4人はどこか妖しげで、むしろ不気味にさえ見えた。派手なステージ衣装や男性のメイク(当時の私は見慣れていなかった)のせいもあったかも知れない。つくりものみたいだ、と思った。そして同時に悟った。「ああ、これは、この人たちが『つくって』いるのだ」と。音楽はもちろんのことだが、彼らが纏う空気が、雰囲気が彼ら自身そのものが、全てが作品で、そうして構築される唯一無二の世界観をひっくるめて「L’Arc~en~Ciel」なのだと感じた。何もかも忘れてテレビの中で演奏するラルクを見つめていた。永遠にも思えるほど長い時間で、瞬きするほど短い時間だった。その間、L’Arc~en~Cielのステージが世界の全てになっていた。司会のアナウンサーの「L’Arc~en~Cielのみなさん、ありがとうございました」の声で現実に引き戻された私は全身に血液が回るのをありありと感じた。ありえないくらいに心臓が高鳴っていた。口が渇いて、頭がぼんやりとした。テレビの続きはよく覚えていない。もしかしたらつけっぱなしでどこかへ行ったのかも知れない。瞼の裏に焼き付いたL’Arc~en~Cielの姿と、未だ脳内で流れ続けるL’Arc~en~Cielの曲をひたすら反芻した。「ラルクアンシエル、」と口に出してみる。日常ではまず使わない文字列。そのバンド名を持つ彼らが歌うのはどこまでも壮大で高尚な歌で……。もう1度観たい、聴きたいと思った。再びL’Arc~en~Cielの世界観に溺れたいと強く願った。自分でも訳が分からなかった。音楽番組で1度たまたま目にしただけのひとつのアーティストになぜこんなにも惹かれているのか分からなかった。こんなにも誰かに、何かに惹かれ拘ったことなどなかった。
ただ、L’Arc~en~Cielを「凄く凄く好きに」なっていることと、その世界に取り込まれた私はきっと後には引けないであろうことだけは確信していた。今思い返してもめちゃくちゃな心理状態である。生でライブを観たならまだしも、音楽番組の数分のパフォーマンスを1度観ただけでL’Arc~en~Cielを知らない生活には戻れないと悟ったのだから。しかしその確信は間違っていなかったのだろう。それから7年経った私は今もなおL’Arc~en~Cielの音楽に溺れ続けているのだから。

その衝撃的な出会いの後に、L’Arc~en~Cielというバンドがhyde、ken、tetsuya、yukihiroの4人のメンバーからなるバンドであることや結成20年を超えている(当時)ということを知った。そして今までに彼らが出した楽曲を片っ端から聴いた。どの曲もかっこよくて美しくて心が震えた。1人でL’Arc~en~Cielの楽曲を聴き、音楽に浸るのがいっとう幸福だった。

L’Arc~en~Cielの曲を聴き続け、いつかライブで生で聴きたいと、ずっとずっと思っていた。生憎受験などと重なり、自ら行かない決断をしたせいでその願いがすぐに叶うことはなかったが、今年の1月の愛知公演でようやく叶えることが出来た。ライブ当日、ふと頭を過ぎったのはラルクの曲の歌詞だった。

「移り行く世界の片隅で君に会えて嬉しい
溢れそうな想いを言葉に出来なかったよ
いつかまた会えたら もっと上手く伝えられるかな?」(L’Arc~en~Cielの楽曲『GOOD LUCK MY WAY』より)

あの頃に私がたまたまあのアニメを見ていなかったら?そのアニメの主題歌をラルクが歌っていなかったら?たまたまラルクが出演していた音楽番組を目にすることがなかったら?いくつもの偶然が重なりあって、出会えたL’Arc~en~Cielという最高のバンド。そしてL’Arc~en~Cielをこんなにも好きになれた。そのことをたまらなく尊く、幸運に思う。いくつものものをL’Arc~en~Cielにもらった。L’Arc~en~Cielのおかげで色彩豊かな日々を送れたと言っても過言ではないだろう。ライブで腕を掲げよう。今日のライブに加え、今までの「凄く凄く大好き」と「めいいっぱいのありがとう」も乗せて。

初めて臨んだライブは夢みたいにキラキラした時間で、L’Arc~en~Cielの演奏は圧巻だった。会場ごと世界から切り離されたとでも例えようか。圧倒的な非日常の中、私は初めてラルクをテレビで観た日のことを思い出していた。ラルクに出会ってから今日までの、様々な出来事も頭を過ぎる。聴き慣れた、けれども初めて聴いた、声と音。身体に伝わる振動すら心地よかった。ステージの4人は神様みたいに神々しく、ヒーローみたいにかっこよかった。

私は初めて出会ったあの瞬間からずっとL’Arc~en~Cielが大好きだ。応援している。そんな言葉じゃ足りないくらいに。「愛」「応援」「信仰」「好き」……どれも当てはまる気がしなくもないが、これだ!と言える言葉が見つからない。この感情に名前を付けるなら?しっくりくる名前を見つけるまであと何年かかるだろう?もしかしたらこの感情に名前なんて要らないのかも知れない。

これからも私はL’Arc~en~Cielの音楽に、世界に身を浸し溺れ続けながら時間を過ごし、生きて、年老いていくのだろう。そしておばあさんになった私は誇るのだ。「L’Arc~en~Cielの音楽と共に生きた私の人生はとっても幸福に満ちていたのよ」と。

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