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「好き」を伝えること

ポルノグラフィティの愛の元素が教えてくれたこと

愛の言葉はねぇ 胸の深くでは
ひどく不安定な元素で
空気に触れて君へと届いて
強い力で反応する

愛の言葉はねぇ 優しいくせに
舌先離れるまで なんて苦い
好きな人に好きと言うだけで
なぜこんなにも大変なのだろう
元素L / ポルノグラフィティ

私が人生で聴いてきた全ての音楽で、一番好きな曲であり、歌詞である。この曲によって、私の中で数多くの発見があった。

「誰々と誰々が付き合ったらしい」友人間の会話でそういった言葉が出始めたのは、小学校高学年。それまでも片想いの話はあった。しかし、実際に想いを伝えた話や、それ以降の話が出るようになったのは、そこからだ。

当時の私にとってこれは大きな衝撃だった。そしてすぐ、当時片思いをしていた自分に置き換えた。相手にとって、仲の良い友達である私からの告白は、迷惑以外の何物でもないと思えた。

しかし、募る想いを抑えられなかった。友人に打ち明けたのだ。何の効果もない「誰にも言わないでね」という文言と共に。案の定、誰かによって私の想いは相手に届いてしまった。それからしばらく、私の想いが他人の口から容易に伝わってしまったという後味の悪さに苛まれた。私はそのとき、「好き」だと思ったことは、直接伝えたり、明言したりすべきだと痛感した。

中学、高校と学年が上がるうちに、その類の話はさらに増えた。そんな中私はと言うと、小学校時代痛感したにも関わらず、自分の好きな人に想いを伝えられないままでいた。好意を相手に伝えられる勇気のある友人らを、羨望のまなざしで見つめる毎日だった。

ポルノグラフィティと出会ったのもその時期だった。彼らのデビュー曲である「アポロ」を聴いた際の衝撃は、昨日のことのように覚えている。

僕らの生まれてくるずっとずっと前にはもう
アポロ11号は月に行ったっていうのに
僕らはこの街がまだジャングルだった頃から
変わらない愛のかたち探してる
(アポロ / ポルノグラフィティ)

愛とアポロを結びつけるなんて発想ができるなんてすごい。新藤晴一の歌詞すごい。岡野昭仁の言葉を伝えるパワーすごい。ポルノすごい。そう思った私は、ひたすら彼らの曲を聴いた。高校三年間は、勉強や部活に追われながら、暇さえあればレンタルショップにポルノグラフィティのCDを借りに行った。当時は恋愛や人間模様よりも、勉強や部活に重きを置いていた私を励ますような曲に支えられていた。

大学に入って時間が出来ると、自分自身や人間関係について悩むことが増えた。ポルノの中で聴く曲も変わった。そして「好き」という気持ちに関して明言できるようになった。ポルノグラフィティに魅了されてから、彼らへの「好き」を公言することで、他の様々なものへの「好き」を伝えられるようになったのだ。家族や友人、好きな小説や漫画などに「好き」を抱き、発信できるようになった。しかし恋愛に関しては例外だった。

元素Lに出会ったのは、そんな時だった。

元素Lは、愛をアポロではなく、元素に例えている。まずその時点で、ポルノグラフィティや新藤晴一が持つ言葉の力を再確認した。そして歌詞を初めて読んだ瞬間、涙が止まらなくなった。大事な想いを相手に伝えられる友達を羨む私を、自らの恋慕を打ち明ける勇気がない私を、元素Lは抱きしめてくれた。

それからというもの私は、元素Lの虜となった。ポルノグラフィティがモデルとなり、岡野昭仁が持っていたものと同じWALKMANのプレイリストを見て、元素Lが流れるまでのカウントダウンをした。元素Lのイントロが流れるたびに涙が込み上げた。冒頭に述べた歌詞が流れるたびにそれが頬を伝った。仲の良いポルノファンにも「私=元素L」というイメージは定着した。

しかし私は、カラオケで元素Lが歌えない。歌うときにためらってしまうのだ。私が歌うことで、元素Lが壊れてしまうように感じるのだ。そんなある日、友人とのカラオケにて元素Lを歌った。イントロから心が震えながらも、外してしまうことがないよう、一音一音、丁寧に歌った。歌い終わった後、「好き」という気持ちが私を満たした。

そこで私は気付いた。私は、狂おしいほどに好きなものを壊したくないのだ。私が何か手を加えることによって、変わってほしくないのだ。丁寧に、大切に、扱いたいのだ。しかし実際に、私自身が「好き」を体現することによって壊れるものは、何もなかった。私の大切な友人らも、ポルノグラフィティも、そして、元素Lも。 私の「好き」を受け止め、抱きしめてくれた。これは、恋愛に関しても同じであろう。この気付きにより、どうしようもなく大切な元素Lはさらに、かけがえのないものとなった。

三月が始まった。就活生である私にとって、人生で最も大切な三月だ。私には「好きな人に好きと言う」勇気がなかった小学生以前から魅了されていたが、壊れてしまうことを恐れ胸に秘めていた、大切なものがある。この就職活動を通して、人生最大の「好き」を、私の中の莫大な「ひどく不安定な元素」を伝え、生業にすることが今の何よりの願いだ。

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