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BB5のペット・サウンズはB.ウィルソンの個人的物語だから美しい

Bウィルソンのイノセントが生んだペット・サウンズとイノセントをテーマに唄う音楽家達の素晴らしさ

いつか書いてみたいと思うミュージシャンは山ほどいる。最近感じるのだが、好きすぎると書けないものだ。それが《初恋》だ(これは最後に追加した伏線)。

そもそもは僕の表現力の問題なのだが、言葉にできないというのは好きすぎるということなのだろうということにしちゃっている。初恋の女の子のどこが好きなのかということを僕は言葉にできなかった。なんだかわけがわからんけど好きなのだ。

嫁さんは、理由言えるんですよね。

レッド・ツェッペリン、キング・クリムゾンについては《初恋》だから書けない。気持ちがイノセントなんだ。
デヴィッド・ボウイはこの前、書いてみたが、それは、レッツ・ダンスという一面を切り取ったもので、デヴィッド・ボウイについても書けない。

あまりに素晴らしいステージを観るとやはりかけない。
宇多田ヒカルさんの一昨年の『Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018』は書けない。オープニングの『あなた』をアカペラで歌ったときの感動が書けない。
宇多田ヒカルさんの、直近の2枚のアルバムはノックアウトされた。『Fantôme』『初恋』は文句なしの素晴らしい名盤だ。僕の勝手な個人的な想いであるが、それ以前の宇多田ヒカルさんの歌詞(勿論素晴らしいのであるが)は、デビューしたとき30歳を超えていた僕にラブソングはあまり必要ではなかったのが大きいし、その歌詞は、ジャーナリスティックで俯瞰的で天才すぎて理解できなかった。今でも深い世界はわからない。が、今、宇多田さんの大ファンだ。宇多田さんに惹かれたのは、諸々のショッキングな出来事で人間宇多田ヒカルが剥き出しになってからだ。人間宇多田ヒカル

名曲:『真夏の通り雨』 真夏の通り雨は降りやむことはあるのだろうか

SSWの歌詞を勝手に2分類すると、ジャーナリスティックな視点で世の中を俯瞰している歌詞と個人的な痛みの内省的な歌詞とがある。勝手な思い込みだ。

ジャーナリスティックな歌詞というのはこれまた勝手に代表者を上げると、問題意識を歌詞にするボブ・ディラン、日本でいえば佐野元春さんである。
あくまで、おおざっぱな適当な言い分で異論があるのは必至なのは覚悟で書いている(よくわかってないよなって聞こえる・・・・)。
ボブ・ディランはまだ理解できないので、4月の来日ライブに行ってから、勝手に何らかの僕なりの持論を書こう。

佐野さんについての個人的な想い入れは大きい。アルバム『Visitors』は、日本で最初のHIPHOPアルバムであり、暗記するほど聴いた。このアルバムは革新的だった。今でも大好きなアルバムだ。が、佐野さんの歌詞に本当に興味を持ったのは、佐野さんが個人的な諸事情がかさなって、内省的な歌詞が色濃いアルバム『Sweet16』と『The Circle』を聴いてからかもしれない。特に『The Circle』の大人への成熟をテーマにしたナンバーは心に突き刺さった。そして佐野さんはハートランドを解散した。

佐野さんは、一貫して無垢《イノセント》をテーマにしてきたミュージシャンだ。代表作は、皆さんご存じの『サムデイ』

『サムデイ』(作詞:佐野元春)抜粋
約束してくれた君
だからもう一度あきらめないで
まごころがつかめるその時まで
SOMEDAY
この胸に SOMEDAY
ちかうよ SOMEDAY
信じる心いつまでも SOMEDAY

反感必至でも言ってしまうが、80年代後半から90年代のヒット曲ってこんな歌詞ばかりだった。佐野さんは80年代中期から後期のインタビューで「僕のリヴェンジは一生続く」と発言していた記憶がある。だから、『Visitors』でサウンドも歌詞も攻撃的にかつ内省的、政治的に変化させたんだろう。その頃はわからなかったけど。佐野さんのリヴェンジは搾取という意味だ。
サムデイ的うたより“Skipped Beat,Skipped Beat Skipped Beat”(すけべーにしか聴こえない)とか“あー夏休み”のほうが痛快だ

で、ここまではイントロで 無垢《イノセント》をテーマに、没後40年のジョン・レノンの心の叫びについて書こうと思っていた。
『Imagine』だけで愛と平和の象徴ジョン・レノンと語っちゃダメなんだよ。『ジョンの魂』こそ剥き出しのジョン・レノンなんだと生意気なことを書こうと思ったのだが止めた。

何故かと言うと、先日、ブライアン・ウィルソンの来日が突然発表されたので、『Pet Sounds』をテーマにすることにした。なんだか滅茶苦茶になってきた。

しかし、本題に進んでしまう。

トッド・ラングレンのアルバムに『Faithful』(邦題:誓いの明日)というアルバムがある。変則的なアルバムで、A面がカバー、B面がオリジナル。このA面が変なのだ。奇才、才人、天才(僕はトッドが好きすぎて、去年の50周年ツアーについてまだ書けないでいる)のトッドが、原曲通りにいかに再現するかというテーマでカバーしている。出色は、ビートルズのジョン・レノン作の『Strawberry Fields Forever』とビーチ・ボーイズの『Good Vibrations』だ。若い頃は、“なんで、まんまカバーしてるの?”と思っていたが、この2曲、そのままカバーするには複雑、難曲すぎるナンバーだ。特に、『Good Vibrations』。『Good Vibrations』は、『Pet Sounds』と同時期に録音されているが、ブライアンが『Pet Sounds』に収録をしなかったナンバー。ビーチ・ボーイズ最高のシングルの1枚だ。故カール・ウィルソンのボーカルが美しいPOPミュージックだ。複雑なコーラスワーク、テルミンを使っているのはわかるが、それいがいの音はいったいどうやって、こんな音色が鳴っているのか当然僕にはわからない。シンセサイザーのある時代なら別だけど。結構、音楽は聴いているつもりなので、わかるんだけどこの頃のビーチ・ボーイズは本当にわからない。トッドでも相当困難な作業だったと思う。

トッド・ラングレンは、ブライアン・ウィルソンの凄みがわかっていたのだ。ブライアン・ウィルソンの天才たる所以は複雑なサウンドをたった一人の頭で作ってしまったこと。ブライアンにとっては、ボーカルさえもサウンドの一部、楽器なのである。『Pet Sounds』はバックサウンド、ボーカルが混然一体となって僕の耳に迫ってくる。その音、1音1音をどうやって鳴らしたのかもわからない。シンセサイザーのない時代に。ピアノの弦をクリップで弾いたとかそういう話も聞いたことがあるが、素人には理解不可能。レコーディングしたメンバーも完成形を聴くまで、完成形を聴いても一聴しただけではわからなかったであろう。そうでなければ、完コピをトッドがするわけがない。それほど凄い音なのだ

頭の中で、鳴り響く音をどうやって実現するか、作り続けるしかなかった天才は、音楽性は異なるがブライアン・ウィルソンとジミ・ヘンドリックスの2人だけだったと思う。結果、ジミヘンは死んでしまうが、ブライアンはドラッグに溺れ幻の名盤『Smile』を完成させることはできずに長い沈黙に入る。

『Smile』は完成するが、僕にはアバンギャルドすぎて手が出ない。
『Pet Sounds』の美しさは言葉で表すと美しいサウンドコラージュの一言だ(偉そうに書き始めたのに結論はこれかと自分でも呆れる)。

2016年のブライアンの『Pet Sounds』再現ツアーを観に行った。僕なりにこのアルバムの正体に迫りたかったからだ。

サウンド的に1つ新しい発見があった。ソフィスケートされたサウンドは、BGM的に聴こえても不思議ではないのに、何度聴いてもBGM的に聴こえたことがなかった。その正体がライブでやっとわかった。ロックンロールのグルーヴがあったのだ。どこか。再現メンバーは大所帯の凄腕ミュージシャンなのだが、驚いたのは、そのパーカッシブな楽器の演奏が多いことだ。ティンパニやら何やらやたら打楽器が多い。モノラルバージョンでは僕には聴き取れないのだが、ライブ後にステレオバージョンで聴いてみると、多種多様な打楽器がグルーヴを作り出していることがよくわかる。ロックだ。ガッツのあるロックだ。僕の稚拙な表現では表現できないので他の人の言葉を借りると、山下達郎さんが随分昔のインタビューで“シュガー・ベイブの頃、過激な気分でものすごく軟弱なサウンドを鳴らしていた。ところがXX系はPOPな気分で過激な音楽をやっているつもりでいる。姿勢が真逆なんだ”(ごめんなさい出所不明です)という趣旨の発言をしていた。ブライアンの音楽と言うのは一言で言うとそういうことだと思う。

そしてもうひとつ『Pet Sounds』がなぜ時代を超えた普遍性をもった奇跡のアルバムなのか僕なりに整理できた。
レコードで言えばB面のオープニング、ポール・マッカートニーが衝撃を受けたGod Only Knows(ライブでもポール・マッカートニーのお気に入りの曲だとブライアンがMCで紹介した)以降のナンバーは全く身動きできずに声も出せずに聴き入ってしまった。
1音も聴き逃すことが出来なかった。
英語はわからないので、歌詞は書けない。書いても全部、後追いのカンニングでしかないので。

『Pet Sounds』再現前の第一部でビーチ・ボーイズの中で僕が好きなビーチ・ボーイズのベストナンバー20にはいる(というのはベスト13までは『Pet Sounds』で占められるから)名曲『In My Room』が演奏された。サーフィンホットロッドサウンドの象徴だったビーチボーイズ。明るいカリフォルニアの象徴であり、その名曲の殆どは、ブライアンの作ったナンバーだ。しかし、釈迦に説法だが、ブライアンは、海は嫌い、当然サーフィンもしない。部屋、スタジオに閉じこもっているミュージシャンだ。『In My Room』はそんなブライアンのアイデンティが露わになってきた過渡期のナンバー。僕は『Pet Sounds』は『In My Room』の延長線上にあるアルバムだと思う。

『Pet Sounds』は、孤独で精神的に幼かった音楽的天才であるブライアンの非常にパーソナルなアルバムなアルバムなのだ。個人の物語だ。独白だ。

オープニングナンバーの『Wouldn’t It Be Nice』の明るいサウンドは、幼い2人の恋愛の話である。しかし、くら~く深読みすると、ブライアンの当時の複雑な結婚への想い(若い奥さんの更に幼い妹への気持ち)、マッチョで強権的な父親の支配する複雑な家庭環境、レコード会社の風俗音楽を書けというヒット曲要求のプレッッシャーの個人的問題からの逃避にも読める。
更に、文化的に考えれば、フラワームーブメントを直前にしたアメリカ、カリフォルニアの風俗との乖離が妙なのだ。古き良きアメリカすぎる。無邪気だ。

そんな僕の考えは、素晴らしく美しい音楽に包まれても、ドラッグ問題から回復しても尚、ブライアンが未だに苦悩と孤独を抱えたままだと感じずにはいられなかったのである。ブライアンはグランドピアノにすわり(殆どピアノは弾いていない)、動きも少なく、ボーカルは自分のパートでも高音になると、メンバーにサインをだし、歌わせていた。この初老の爺さんの役割が最初は全く理解できなかったのだが、曲が進むにつれて、このアルバムに、このアルバムの再現には、ブライアンの存在が必要不可欠に思えてくるのだ。

主役の肉体性を全く感じないライブなのだが、それでもブライアンという存在を必要としているのだ。アル・ジャーディンを中心にした凄腕ミュージシャンはブライアンを愛し、ブライアンの音楽を愛している。その中でも『Pet Sounds』は別格なのだが、それでもブライアンに孤独な天才という感慨を持たずにいられない。

天才ブライアンが若干23歳のときに作り上げられた、ビートルズの2人の天才、ジョンとポールに対抗心を燃やした作ったアルバム『Pet Sounds』。
ブライアンが天才だからこそ作られたアルバムであるが、その美しさの根底には、ブライアンの非常に個人的な物語ということ、当時(今現在も?)の孤独、幼い精神性、癒えない傷があり、そのパーソナリティが剥き出しになっているからこそ普遍的な美しさを獲得しているのだ。

少年から大人になるノスタルジーと本物の無垢《イノセント》があるのだ(やっと佐野さんに繋がった)

そしてそして、そのイノセントを未だに持ち続けているブライアンはグランドピアノにすわっているだけでいいから『Pet Sounds』の再現には必要なのだ。
ブライアンの個人的な物語だからこそ『Pet Sounds』は時代を超えた普遍性を獲得している。そしてブライアンのサウンドクリエータとしての才能が、パーソナルで密室性の高い音楽を奇跡的に開放的な音楽にしている。

無垢《イノセント》を宇多田ヒカルさんは、《初恋=First Love》という言葉に込めていると思う。人は一生に一度しか人を愛せない。それが宇多田さんのいう《初恋=First Love》だ。2人には、スタジオが自分の部屋であるという密室性の共通性とその密室性が非常にオープンであるという奇跡的な音楽をつくるという共通項もある(やっと宇多田さんに繋がった)。

ジョン・レノンもイノセントな人だった。ビートルズ時代の『Help』の悲痛な叫び(これをPOPミュージックにしてしまうのがジョンの天才たる所以)、『In My Life』、『Strawberry Fields Forever』、そしてソロになって、最初に『Mother』、『God』で愛するものとの決別という悲しみ、決別しなければ、次に進めないという剥き出しのイノセントと決意。これが、僕たちの心を打つのだ。その先に『Imagine』もあったのだ(やっとジョン・レノンとつながった。ふぅ~)

ビートルズ派の僕だけど、『Pet Sounds』と並び称される『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』がサイケデリックの時代を抜きにして語れないアルバムであるのに対して、『Pet Sounds』は人間のイノセントという普遍的テーマの音楽である点で、今、現在でも聴くべき音楽なのかもしれない

なんだかごちゃごちゃになったが、優れたPOPミュージックは深い。1年後には違うことを言っているかもしれない・・・まぁいいや

後書き
個人的な想いで真面目にかいています。おふざけ一切なし。多少過激な表現あると思います。異論はあるとおもいますのでご意見を真摯にうけとめます。

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