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2017年8月6日

河村直哉 (19歳)

夏のぬけがら

真島昌利が紡ぐ夏

今年もこのアルバムに似合う季節がやってきた。
真島昌利ことマーシーがブルーハーツ時代に産み落とした名盤、夏のぬけがらだ。
けだるい夏をメロウなサウンドと叙情的な詩で紡いだ曲たちはまるで蜃気楼のように繊細で儚い。
参加ミュージシャンに吟遊詩人のような存在感で日本のロックミュージシャンに多大な影響を与えたフォークシンガー友部正人。
当時ブルーハーツのサポートメンバーを務め、後にハイロウズを組むことになるピアニスト白井幹夫。
様々なミュージシャンのレコーディングに参加しているヴァイオリン奏者の金子飛鳥。
そしてマーシーがブルーハーツ以前に組んでいたバンド、ブレイカーズのメンバー篠原太郎などのメンバーでレコーディングされた。
このアルバムからは当時のブルーハーツとしてのパンクロッカーとはまた別の詩人としての表情を見せている。 

裸足ならもっとよかったけど
宿題は机でまってる
誰かがピアノを弾いているよ 
みんな誰もが秘密をもつ
汗ばんだ季節だ  ♯1夏が来て僕等より
                      
何が君におこったんだ 何かが君をケッとばした
君がとてもすけてみえる 消えてしまいそうなほどだ    
                 ♯3さよならビリー・ザ・キッドより

ここより他の場所へ ここより他の場所へ
憧れの場所へ きっといけるはず   #7オートバイより 
  
ルーレットがまわるように 毎日が過ぎていくんだ
何にどれだけ賭けようか 友達 今がその時だ   ♯12ルーレットより

冒頭の曲で夏の原風景を歌うこのアルバムのほとんどの歌が孤独や救いようのない絶望を歌っている。
夏が来て僕等ではノスタルジーな夏の世界に引き込まれ、さよならビリー・ザ・キッドでは夢を捨て、家庭を持ち反体制でいられなくなった若者の悲しみを歌い、ルーレットでは一緒にいることのできなくなってしまった友達への思いを叫んでいる。あまりにも切ないアルバムである。

よく彼は「ロックする詩人」だと表現される、特にソロ作品はその傾向が顕著だ。
それは彼が萩原朔太郎のことを今生きていたらロックやってると思うと発言していたりブルーハーツ時代に中原中也の「宿酔」の一部が書かれたTシャツを着用していたりというところからはっきり伺える。 中原中也がギターを持ったら彼のようになっていたんだろうか。

CDのジャケットには参加ミュージシャン全員とマーシーが多摩川の河原に佇む写真が掲載されている。
友部正人はその当時のことを自身の著書「ジュークボックスに住む詩人」でこのように綴っている。
「多摩川の川原に着いて、僕ははじめて知ったのだ。『夏のぬけがら』のレコーディングは、マーシーからぼくらに届けられた夏の川原への一枚の招待状だったんだと。(中略)彼のファーストアルバム『夏のぬけがら』は川原を舞台にした市街劇ではないかとぼくは思うのだ。」
 

やはり真島昌利はロックンローラーであり詩人なのだ。
ボブディランがビートジェネレーションに影響を受けているように彼も日本の近代詩人に対して同じような内面世界を感じていたのであろう。 
そんな最高のロック詩人が紡いだ夏にこの時期に耳を預けてみるのはとてもステキなことだと思う。きっと夏の想いへの琴線に触れるに違いない。
そしてその感覚を記憶しておけばこのアルバムを聴けばいつでもあのけだるくてノスタルジーな夏にトリップ出来る。 たとえそれがどんな季節であってもだ。

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