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2017年8月8日

だーいし。 (22歳)
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BIGMAMAの【DOPELAND】を聴いて感じたこと

本棚に並べた幸福の音

本棚に大切なものがひとつ増えた。

7月18日の火曜日、今でも僕がその日を覚えているのは発売日を勘違いしてそれよりも前にCDショップに行って血眼になって探した経験があったからだ。
それくらい、早く欲しかった。
格好悪いくらい心待ちにしていた。

それは正確に言えば本ではないのかもしれない。
正しくは本の皮を被ったCDだ。
音楽でもあるし、本でもある、不思議な存在。
モノとして、愛着の湧きやすいハードカバー。CDよりも大きく描かれたジャケットのイラスト。

BIGMAMAの発売した【DOPELAND】は結論から言って、最高だった。
それはまさに英語のスラングで最高や、ヤバいといった意味にもなる”DOPE”と言い表すと評論家っぽくて格好良い気がした。
でもそんな少し乱暴な言葉よりも、この作品に寄り添ったもっとピッタリな言葉がある。
“幸福”だ。
BIGMAMAはずっと”幸福”を歌ってきた。
それは様々なアーティスト達が我先にと歌にしてきた”失ったからこそ分かる幸福”ではなく、”今ここにある幸福”のことだ。
『私は今、幸せである。』そう言えることがどれだけ幸福なことか、BIGMAMAは知っている。

今回のシングルは今まで歌ってきた”幸福”をより一層凝縮したように感じた。
幸福をギュッと絞って、その果汁のようなものをビンに入れたらこんな感じなんだろうなと思うようなCD。
幸福をギュッと絞ると出てくるのは愛だとこのCDをもってして、僕は知った。

そんなこと知ったのは、1曲目の〈CRYSTAL CLEAR〉を聴いた時からだ。
愛はどんな色をしているのだろう?
情熱の赤?いかにも、なピンク?もしかしたら黒い愛だってあるかもしれない。
この曲中に出てくるのはどの色でもなかった。透明だ。透き通るほどの綺麗で透明な愛。
嘘というシミも、相手に何かを求めてしまうエゴもない、綺麗で真っ直ぐな愛がこの4分間に詰め込まれていた。
目を閉じてこの曲を聴いていると、自分が全然違う世界に飛べるような感じがする。
波が穏やかにさざめいて、太陽の優しい光がそれに反射するようなキラキラとした世界。そこでは誰かが笑って手を差し伸べている。僕に見えたのはそんな世界だった。

ここが【ドープランド】なんだろうなと思った。
BIGMAMAがつくった音楽で創る仮想現実の島。
外側から発見するのが困難とされる幻覚の島、【ドープランド】は自分の中にあったんだと気付いた瞬間の感動は言葉に言い表せなかった。どんな人間にだって心の中にはきちんと愛が育っている。
それに気付いた時から、目の前にある現実世界は少しだけ明るく見えた。

2曲目の《ILLUSION》は【ドープランド】の更に奥へと導いてくれる。
〈せめて僕らは綺麗事を並べよう ほら世界は美しい〉
という1節に僕はBIGMAMAというバンドの強さを感じた。

人生は笑ってしまうくらい上手くいかない。騙されることも嘲笑われることだってある。
自分が思っていることが真逆の意味で伝わってしまったり、大事にしていた夢を捨てなきゃいけない日も来る。
生きていくことにそんな息苦しさを感じた経験があるのはきっと僕だけではないはずだ。
そんな現実世界で、彼らは〈世界は美しい〉と言い切った。
美しいんだと思う、とか美しいはずだ、とか保険を掛けた表現じゃなく〈美しい〉。
バンドサウンドは豊かで綺麗で、時に儚ささえも持っているのに、その中に強さを持っているのは、表現に保険を掛けずコトバを言い切ってくれるからだ。
最高のロックバンドだなと思った。

掌編小説のもとにもなった3曲目、《愛はハリネズミのように》。
ハリネズミのように、なんて一見して”どうして?”と思う曲名なのに、聴いてるだけでとても大きな幸せに包まれてしまうような包容力がこの曲にはある。

〈人類史上一の寝起きの悪さと トゲのある性格〉

歌い出しの1節は愛の欠片も感じ取れないほど無骨だ。なるべくなら近付きたくないとすら感じる。それが朝なら尚のこと。
それなのにこの曲は、そんなトゲトゲした性格のものにだって寄り添う。
そして”愛はどこにあるのか”を教えてくれる。
それはもう、隣にいて優しく微笑んでくれるように。

愛は、水の中にあったり、本の中にあったり、ゴミ箱や嵐の中にさえあるんだと、この曲は語り掛けてくれる。
しかし、最後の英語詩だけは日本語訳がされていない。

〈love is in heartache in yourself〉

これは聴いた人自身が考える問題だ。
“愛とは何か”を、自分自身で考えて自分の答えを出すためにワザと訳されていないのではないだろうかと思った。
夏目漱石がI Love Youを月が綺麗ですねと訳したように、たんに英語から日本語に訳すだけではなくて、本来の意味、以上の言葉を自分で探さなければいけないことを提示してくれたんではないだろうか。

楽曲だけではない。
このシングルには至るところに愛が詰め込まれている。
それはloundrawの手掛けたカバーイラストや、小説家住野よるの掌編小説の中、らっパルによる《CRYSTAL CLEAR》のショートフィルムにも存在している。
音、文字、絵、映像。
それらはみんな形は違う。
心が感じ取る手ざわりだって違う。
それなのにこのシングルは一貫して、一点の曇りも無く愛を表現している。

このシングルはただのシングルではない。
幸せとは何か、を考えるための問題とヒントがこの一冊にまとめられていてる教科書だと僕は感じた。
学校の授業や仕事ではない部分の、あくまで日常的な誰もが悩む、愛についての教科書。
僕はこの教科書をいつでも見える本棚に並べた。
いつか愛が何か分からなくなった時にヒントを貰えるように。
日常の忙しさに負けて”愛とは何か?” なんて綺麗事を考えることすら忘れてしまわぬように。
僕は一点の曇りもなく、BIGMAMAが好きだ。

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