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激烈コラボ!ルー・リード&メタリカ

究極のマリアージュ『LULU』のカタルシス

ルー・リード&メタリカ・・・この字面を見て危険を感知しないロック好きはいないのではないか。こんなに野蛮で素敵なコラボレーション、一体誰が思いついたのだろう。単なる話題作りや映えを狙った表面的なコラボが横行する中、本当の意味で成果を実らせているのはルー・リード&メタリカとイチゴ大福ぐらいなのではなかろうか。

しかし、この究極のマリアージュとも言える『LULU』の評判は一般的にはあまりよろしくないらしい。特にメタリカ側のコアなファンの間では駄作の烙印が押されているという。実際にそういったファンが身近にいないので本当のところはよくわからないが、このアルバムが明らかにルー・リード主体であることは確かで、純粋なヘヴィメタル・フリークが望んでいるサウンドとは少なからず剥離しているようにも思える。

演奏しているのは正真正銘スラッシュ・メタルの雄メタリカなのだが、全体を覆っているスラッシュらしからぬ歩みの遅い鈍重な雰囲気を作り出しているのは、ルー・リードの不気味なトーキング・スタイルのヴォーカルである。一方、メタリカのヴォーカル、ジェイムズ・ヘットフィールドの出番はというと、数曲でバック・コーラスのようなものを担っている程度で、主役はあくまでもルー・リード御大というのがこのアルバムの基本コンセプトとなっている。

ちなみに僕は完全にルー・リード派のリスナーで、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドはもちろん、ソロ・アルバムも愛聴盤となっているものがいくつかある。一方、メタリカに関しては何枚かは聴いたことはあるけれど思い入れはほとんど無いといった体たらく。しかしながら、『LULU』を何度か聴いていくうちに「ちょっとメタリカも漁ってみようかな」と思えるくらい気になる存在になっているのは偽りのない事実である。

そもそも、以前からハードでヘヴィなサウンドがそれほど苦手という訳ではなく、むしろ好んで聴く方で、そのきっかけになったのがオジー・オズボーンが在籍していた頃のブラック・サバスとの出会いだった。特にサード・アルバム『マスター・オブ・リアリティ』の、やたらと重心の低いギター・リフとオジーの粘着質なダミ声が作り出すドロリとしたダークなノリには、一般的なハードロックのイメージとは隔絶した真のオリジナリティがあり、そういった異端的な魅力を僕はルー・リード&メタリカに非常に強く感じるのである。

さて、『LULU』の一番の聞きどころは何かといえば、両者の想定を上回る意気投合ぶりだろうか。今まで全く接点のなかったマッチョなラグビー部の連中と演劇同好会のはぐれ者とが雑談しているうちに妙に盛り上がってしまい「なんだコイツおもしれー奴じゃん」みたいな、そういう新たな発見的喜びが音に表れているように思える。血の匂いが漂ってくるような猟奇的で猥雑なジャケット・デザインそのままの、ブルータルの極みのようなサウンドなのにも関わらず、どこか爽やかで屈託がなく、風通しが良く聴こえるところが面白い。

元々ルー・リードにはハードでメタリックなサウンドとの相性の良さが備わっているように感じられる。60年代のヴェルヴェット・アンダーグラウンド時代から既にノイジーでエクストリームな曲が普通にあったし、傑作ソロ・アルバム『ニューヨーク』も、一見ストレートなロックのようで、どこかメタリックな雰囲気が漂っているし、その名もズバリ『メタル・マシーン・ミュージック』という超アヴァンギャルド(僕は5分くらいでギヴアップしてしまう)なアルバムを作ってしまう背景には、ルー・リードのそういったものに対する自覚的な趣向が垣間見られる。

『LULU』ディスク1、地下室の帝王ルー・リード地上に復活!と高らかに宣言するオープニング・ナンバー「ブランデルブルク・ゲイト」、邪悪なギター・リフと凶暴なドラムに煽られ、ルー・リードが徐々にブラックメタル化してゆく「ザ・ビュー」、初顔合わせとは思えない阿吽の呼吸で展開されるプログレッシヴ・デスメタル・ナンバー「パンピング・ブラッド」、メタリカの面目躍如、スピーディーでスラッシーなサウンドにルー・リードが呪いをかける「ミストレス・ドレッド」、地獄の鬼が血の池の周りを闊歩するかのごとき「アイスド・ハニー」などなど、気分をどこまでも低く深く引きずり込んでゆく超重量級のメタル・チューンが目白押しだ。

デイスク2も勢いはそのまま。得体の知れない薄気味悪いノイズと暴力的なギター・リフに誘われルー・リード再登場!地獄の第二幕「フラストレイション」が開演する。不穏なアコースティック・ギターの調べをバックにルー・リードが死臭を漂わせながら詩を朗読する「リトル・ドッグ」、ムカデの大量発生のようなギター・ノイズが足元を這いずり回る「ドラゴン」、そして、奇盤『メタル・マシーン・ミュージック』からノイズを抜き取り、叙情的に精製したような20分にも及ぶメランコリー・ポエム「ジュニア・ダッド」で静かに幕を閉じる・・・

この強大なるへヴィメタルの聖典『LULU』を聴いていると、もうこの世にルー・リードがいないなんて、にわかには信じがたい気分になってくる。今もどこかで念仏みたいに詩を唱えているんじゃないかと思えてきて仕方がない。『LULU』はその驚異的な力強さと生命力によって、聴いてしまった者の耳に永遠に響き続けるタトゥーとして刻印される。聴く側にはその覚悟を要するとてつもなくデンジャラスな音楽であることは間違いない。

(曲のタイトルはCDの日本語表記によります)

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