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2017年8月9日

ホンジョ (26歳)

「Hard Times」の先に鳴る新しい音楽

Paramoreの新作に思うこと

「Paramore」というバンド名を聞くと、エモ/パンクの代表的なバンドを思い浮かべる人が恐らく大半だと思われる。

僕自身もそうである。
1st~3rdアルバムの音楽性のイメージが未だに強い。

そんなParamoreが5作目の新作をリリースするという情報を見つけたので、リード曲の「Hard Times」や「Told You So」のMVを見てみた。が、その時は正直、悪い意味での驚きを隠せなかった。

MVから流れてきたのは、僕の知っているParamoreではなかったのである。
 

僕がParamoreを知ったのは2009年。
TVで放送されたSUMMER SONIC 09を見て、セーラー服姿でキュートかつパワフルに歌うヘイリー・ウィリアムスの姿にやられた。更にそこで流れた「Misery Business」や「That’s What You Get」を一発で気に入った。
CDショップで「Riot!」を即購入し、その後リリースされた当時の最新作「Brand New Eyes」も最高で、大好きなバンドになった。

特に「Ignorance」や「Brick By Boring Brick」の激情的なサウンドとキャッチーなメロディーは本当にかっこよかったし、「When It Rains」や「The Only Exception」の穏やかな中にあるエモーショナルさは心に沁みたし、今でも本当に大好きな曲達だ。

つまり、僕が好きだったのは、エモ/パンクを全開でやっていた頃のParamoreだったのである。
 

新作のリリース情報を見つけて聴いてみたリード曲には、その頃のParamoreはいなかった。

思えば前作「Paramore」から兆しはあった。
前作は、3rdアルバム後のメンバー脱退の影響からか、ポップなサウンドに切り替わった印象が強いアルバムだ。
しかし、往年のサウンドに近い楽曲もあり、前作での変化はデビュー時から地続きのものであると思える部分もあった。
ただ、自分の好きだったParamoreとは遠ざかってしまった印象は拭えず、前作を機にParamoreへの興味が薄れてしまった。

僕は、メンバー脱退を経た「新生Paramore」のファンにはなれなかったのである。
 

そして、今回の「After Laughter」である。

「After Laughter」は音楽性の変化を前作より更に押し進め、シンセサイザーが大々的に鳴り響いており、かつてのギターサウンドは薄れた印象を持った。
ネット上のレビュー等では、「80’s ポップ」と形容されているのをよく目にした。
 

僕は洋楽のアルバムを初めて聴く際、英語の歌詞カードと和訳を並べて、必ず歌詞も頭に入れながら聴くことを習慣にしている。
今回も歌詞カードを開き、アルバムを聴いた。
1曲目は「Hard Times」。
歌詞を読むと、以下の言葉が目に入ってきた。

《欲しいのは/気持ちのいい目覚めだけ》
《「お前は大丈夫だ」と言って/「お前は死なない」と言って》
《つらい時期には/なんで努力しているんだろうとすら考えてしまう》
《私はどん底まで落ちなきゃいけない》
(「Hard Times」歌詞対訳より)

リード曲として試聴した時には分からなかった歌詞を目の当たりにし、軽快なポップなサウンドとは裏腹なネガティブな内容に驚いた。
これはどう考えても、前作リリース後の4年間で感じたヘイリーの苦悩や不安だ。
この4年、どんな気持ちで日々を過ごしてきたのか。想像したら胸が苦しくなった。
 

思えば、ヘイリーの歌詞は常に自分に正直であったと思う。
メンバー間で生じた不和を激情的に歌った「Ignorance」、絶対に歌わないつもりでいたラブソングを初めて歌う「The Only Exception」など、挙げるとキリがないが、Paramoreの歌詞にはその時のヘイリーの思いが色濃く反映されていたと思う。

「Told You So」も含め今作の他の曲の歌詞も、今回の制作に至るまでの悲しみや苦しみ、逆にポジティブな気持ちまでもが詰め込まれており、ここまで赤裸々なアルバムは初めてなのではないか?とまで思えてきた。

僕が好きだった頃のParamoreは確かに今作にはいないが、あの頃と変わらず、自分の気持ちを素直に歌詞にしているヘイリーがいる。
そう思えた。

ヘイリーが辛い経験をしたり、現在のメンバー構成になるまでのストーリーがなければ、今回の音楽は成立しなかった。

これらの楽曲を「あのエモ/パンクの代表格だったParamore」がやる意味あるのか…?という疑問は確かに浮かんではきたが、今のParamoreでなければ出来ない音楽が今作に詰め込まれている事実を認識すると、たちまち消えていった。
 

音楽性の変化は、新規のリスナーに曲を届けるチャンスにもなるが、既存のリスナーが離れていくリスクにもなる。
そのリスクを背負って、彼らは新しいサウンドに挑戦し、今まさに表現するべき音楽を鳴らしたのだと思う。

だが、変わらないものもあった。
ヘイリーのまっすぐな歌詞、
クオリティの高い楽曲、
ライブでのパワフルなヘイリーのパフォーマンス、
それらは今までと変わらないParamoreであった。
 

もしかしたらこれからも、彼らにとっての「つらい時期(Hard Times)」は続くかもしれない。
しかし、つらい時期を乗り越えた先に良い曲が生まれるのであれば、音楽性が変わっていくとしてもその様を見届けていくのも、案外面白いのではないか、と思えた。
 

僕は「Hard Times」が好きだ。
「Told You So」が好きだ。
5th アルバム「After Laughter」が好きだ。

新生Paramoreに対して、ようやく「好きだ」と思えた自分が、なんだか嬉しい。

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