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知らない世界へ

BUMP OF CHICKENの歌詞について

《覚えて慣れて ベストを尽くして》
『記念撮影』

この表現に違和感があった。
私が知っている「ベストを尽くす」って言葉は、部活の応援歌とか、受験のお守りとか、何かの寄せ書きとか、そういう類いの言葉だった。明るい未来を手に入れるために、これまでのすべてを懸けて頑張るための言葉。
一方、こちらの《ベストを尽くして》には、明るい未来が見えない。見えるのは、ベストを尽くすことに慣れてしまうほど、精いっぱいの毎日。そしてそのベストは、自分のためではなくて、誰かや何かのために尽くしているような感じがする。《目的や理由のざわめきからはみ出した》世界から、気付けば《目的や理由のざわめきに囲まれて》いる世界に紛れてしまって、本当の自分から遠ざかって過ごす日々への虚無感が、切ない歌声に乗って伝わってくる。

私が知っている言葉の感じ方や使い方の斜め上を行く表現に、称賛や感嘆の気持ちをもつと同時に、そういえば、こういう違和感は初めてじゃないと思って、歴代の歌詞カードを眺めてみた。
 

《頑張れ》…『才悩人応援歌』

言ったことも言われたこともたくさんある「頑張れ」。応援する時、誰かを励ます時の定番の言葉は、使い方を間違えると人を傷付ける言葉になる。喉を枯らして叫ぶような歌い方に、心臓がきゅうっと締め付けられる。
 

《自由》…『(please) forgive』『シリウス』

10代の頃、「自由」は憧れや希望に満ちた言葉だった。でも、「自由」を受け取ると、誰も守ってくれなくなって、すべてが自分の責任になる。一度受け取ると、簡単には「自由」じゃない状態に帰れなくなる。
 

《普通》…『トーチ』『ほんとのほんと』

どうにか繋いでいくことが「普通」の状態になっている日々。大変なことが当たり前になっている毎日。「普通」っていうなんでもない言葉が、ひどく切ない言葉に聴こえる。
 

《沈黙》…『メーデー』
《静寂》…『セントエルモの火』

ただ音のない状態だと思っていた「沈黙」や「静寂」。耳を傾けると、聴こえること、感じられることがある。「沈黙」や「静寂」が意味のあるものだと教えてくれた。
 

《痛み》…『ray』
《寂しさ》…『グッドラック』

「痛み」や「寂しさ」は、目を背けたいものでしかなかったけれど、必要なもの、大切なものだと思えるようになった。「痛み」や「寂しさ」を感じるからこそ、分かる気持ちがあることを知った。
比喩表現の幅が広いのに、「痛み」や「寂しさ」は、飾らずそのまま伝えてくるから、真っ直ぐ心に入ってきて、きちんと向き合わなければと思う。
 

BUMP OF CHICKENを聴くと、知らない世界が広がる。
だから私は、BUMP OF CHICKENを聴いて生きていく。
 

※《》内はすべてBUMP OF CHICKENの歌詞から引用

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