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2017年8月11日

智 (17歳)
36
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はじまりの音

「ENTERTAINMENT」から見たSEKAI NO OWARIの世界

 SEKAI NO OWARIはずるい。曲も、ライブも、見た目も、バンド名も。
 感受性を揺さぶる声に、流暢なピアノ、メッセージ性の強い歌詞。空間を自在に操るまるでショーのようなライブ。男性2人に可愛らしい女性1人、そしてなぜかピエロ。バンド編成もボーカル、ギター、ピアノ、DJ。こんなバンド他に見たことがない。しかも名前が“世界の終わり”
 好みの違いはあるにせよ、誰もが彼らに強烈な印象を刻まれずにはいられない。そして、一度魅了されると、なかなかぬけられない。まるで魔法使いのようなバンドだ、と私は思う。

 私がSEKAI NO OWARIの音楽に出会ったのは、中学生の時。「ENTERTAINMENT」というアルバムに世界をひっくり返されたような思いがした。
 当時は音楽のことなんてこれっぽっちもわかっていなかったが、それでも毎日毎日飽きることなく聞き続けた。今思えば、あれが音楽で感動した初めての体験だったのかもしれない。

 このアルバムの7曲目には「Love the warz」という曲がある。短調のピアノとギターから始まるこの曲は、曲調だけでもかなり不穏だが、それ以上に衝撃的なのは、歌詞だ。
「平和」の対義語である「戦争」をテーマとして、「戦争」のない世界に「平和」があるのか、「悪」のない世界に「正義」があるのか、鋭い語り口で問いかける。一言で言ってしまえば、“好戦ソング”だ。

“そんななか僕らは生まれたLovelyで
Peacefulな幸福な世界
魅惑の果実も魔法の道具も
いくらだって手に入るこの世界
なのにどうしてこんなに苦しいんだ
夢も希望もありはしないんだ
僕らの幸せはどこにあんだよ
平和の中にあるんじゃないの

(中略)

世界がどう変わったらいい?
そして僕らもどうなったらいい?
僕らの悪をミナゴロシにしたら
僕らの正義はどうなんの?
どんな希望を持ったらいい?
はたまたどんな夢を持ったらいい?
不自由なんかないこの世界で
どんな自由を願ったらいいの?”         (『Love the warz』)

 初めて聞いたときは、かなりの衝撃を受けた。この歌詞が正しいか間違っているかはさておき、「こんな考え方を持つ人がいるのか!」と驚いた。「戦争」がよくないことに間違いはないが、その存在によって「平和」が生まれる、そんな発想を持つボーカルFukaseの発想に驚愕した。
 なんども何度もこの曲を聞き、歌詞の意味を考えた。毎晩イヤホンから流れてくるその言葉に心動かされ、感極まって涙する時もあった。
 その頃から私は、物事をななめから見るようになった。世の中で「正しい」とされていることは、本当に正しいことなのか、疑うようになった。今まで生きてきた「正しい世界」が崩れていった。
 大人たちのいう「正しさ」と自分の中の「正しさ」の間に矛盾を覚え、「間違い」が平然と「正しい」ことになっているこの世界に、苦しむこともあった。そんなときはまたこの曲を聴いた。
 私は決してこの歌に賛同はしていない。しかし、Fukaseがこの歌を通して一体何を伝えたかったのか、今でも時々考える。今日もどこかで起きている「戦争」を、我々が生きる「平和」な世界を考える。

 そして、このアルバムの中でもう1曲、印象的な曲がある。それは、14曲目の「Fight Music」。「Love the warz」とは対照的にアップテンポでとても明るい曲だ。タイトルからも想像できる通り、挑戦する人を後押しする応援ソング。しかしこの曲、Aメロの歌詞はかなり情けなく、自身に立ちはだかる問題から逃げる姿ばかり描かれている。

“僕らがいますぐ欲しいのは
「ソレ」から逃げる
「理由」なんかじゃなくて
僕らがいますぐ欲しいのは
「ソレ」と戦う「勇気」が欲しいんだ“       (『Fight Music』)

 サビではこんな風な歌詞が登場する。誰もが感じたことのある逃げたくなる気持ち。それをシンプルな言葉ながら的確に表現して、聞く人の心をつかむ。この後、「僕」は前に向かって進み出すのだが、落ち込んでいるときに聞くと、元気が出て、もう少し頑張ってみようと思えてくる。

 SEKAI NO OWARIの曲の魅力は、「気づき」と「共感」そして「感動」をもたらすところにあると思う。「Love the warz」は私に新たな発見をもたらし、「Fight Music」は深い共感を感じさせた。このほかの曲を見ても、彼らの楽曲には大抵「気づき」や「共感」が含まれている。

 さらに彼らは、新たな音楽性を追求してやまない。「アースチャイルド」の歌詞に『変わらない為に僕らはいつまでも変わり続けるよ』とある通り、「国民的バンド」と呼ばれるようになった今なお、その進化には目をみはるものがある。全編英語詞やラップに挑戦したり、和楽器やハンマーダルシマーを楽曲に取り入れたりと、ギターNakajinを中心に貪欲に音に向き合い続ける。

 しかし、どんなに曲調が変わっても、使う楽器が増えても、Fukaseが歌い、Saoriが鍵盤を叩き、Nakajinがアレンジをすると、SEKAI NO OWARIのサウンドになってしまう。不思議なことにその音にはいつだって「感動」がある。胸をぎゅっとつかまれるようなあの感覚が、必ずあるのだ。

 私は今、人生の岐路に立っている。新たな扉を開くちょうど一歩手前だ。そんなとき思い出したのが、多感な時期に自分を救ってくれた、音楽を好きになるきっかけとなったSEKAI NO OWARIだった。

「ENTERTAINMENT」それは、まさに私の原点なのである。

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