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いまだ止まぬザ・ポリスの衝撃波

『ゴースト・イン・ザ・マシーン』最強説

高校時代、最も熱中したバンドがポリスだった。初めてラジオで聴いたバラード「見つめていたい」も渋くて美しい曲だなぁと思ったけれど、本当にのめり込んだのはアルバム『シンクロニシティー』を聴いた時だった。シンセサイザーを駆使したタイトでキレのある未来的なサウンド、気分をやたらと高揚させるメロディ・ライン、そして、異様に甲高いのにハスキーという独特すぎるスティングの歌声・・・それら全てが今まで聴いてきた音楽とは明らかに違う肌触りだった。

しかし、もうその時すでにポリスは解散してしまっていて、中心人物のスティングはソロ・アルバム制作に取り掛かっていた。でも、そんなこと僕には大した問題ではなかった。たとえバンドが消滅してしまっても、優れた音楽は永遠に聴く者を魅了し続ける。洋楽を聴き始めたばかりのウブな高校生が受けた衝撃はいまだ止む気配を見せず、30年以上経ってなお鮮烈なインパクトを伴ってまっすぐ耳に飛び込んでくる。

3人揃ってブロンド・ヘアの男前、ポリスという絶妙なアイロニーが匂い立つバンド名、パンク・レゲエを土台としたシンプルでソリッドな音楽性、イメージとは裏腹の職人気質な演奏技術、そして、この3人でしか成し得ないシビれるようなアンサンブルのカッコよさ・・・ロック史上、ポリスよりも偉大とされるバンドは沢山あるけれど、彼らほどカッコいいと思わせるバンドには後にも先にもほとんどお目にかかっていない気がする。ザ・ポリスはロック・バンドとしての理想の姿をものの見事に体現している稀有な存在だ。

オリジナル・アルバム5枚は全て必聴の名盤ばかり。その中で最高傑作とされているのは最終作の『シンクロニシティー』か、2枚目の『白いレガッタ』あたりが一般的だと思うのだけれど、僕が一片の迷いもなく最強と呼べるのは4枚目の『ゴースト・イン・ザ・マシーン』をおいて他に無い。正直、最初からそう思っていたわけではないが、時が経つにつれてその思いはますます強まってゆくばかり。経年劣化の兆しは微塵もなく、今もってなお瑞々しい不老不死のアルバムだ。

『ゴースト・イン・ザ・マシーン』が最強である所以は至って単純。何よりも楽器の音が際立っていること、それに尽きる。そのほかの理論や理屈は二の次である。バンドとしての緊張感と躍動感、音の輪郭の明確さと歯切れの良さ、シンセサイザーとホーンによるアレンジの大胆な試みとユニークさ・・・ほとんどジャム・セッションのような「破壊者」が成り立つのも、ヴォーカル、ギター、ベース、ドラム、ホーンの音が生々しい迫力に満ちているからに他ならない。当たり前の話だけれど、音楽は何はなくともまずは音、サウンドそのものに酔えることが大前提である。

そして、名盤とはシングル曲以外にも名曲が多数収録されていなければならない。では何をもって名曲とするのか。その第一条件はイントロダクションがイカしている事だろう。イントロがカッコ悪い名曲なんて聴いたことがない。その曲が始まれば、自動的に聴く者の高揚感を煽り立て、脳みそが浮遊してゆくような錯覚を生じさせる。それこそが名曲だけが持ち得るサイコキネシス、無敵の超能力だ。「マテリアル・ワールド」、「マジック」、「インヴィジブル・サン」、「オメガマン」、「シークレット・ジャーニー」などがまさにそれに該当する。初めの一音が鳴った瞬間、一体これから何が起こるのだろう思わせる謎めいた期待感、思わず背筋がゾクゾクするような独特の旋律、快感で脳みそが揺らぐほどの音の気持ちよさ、特にシンセサイザーによるサウンドの響きは圧倒的にクールでカッコいい。

また、極めてシンプルな構造で成り立っている「ハングリー・フォー・ユー」、「トゥ・マッチ・インフォメーション」、「ワン・ワールド」などのストイック且つ歯切れのいいグルーヴ感は、スティング、アンディ・サマーズ、スチュアート・コープランドという異なる個性を持ったミュージシャンが三位一体となることで生み出される賜物である。様々なジャンルを飲み込み、再構築、最適化によって音をハイ・ブリッドさせるロック・バンドならではのアドバンテージ機能を極限まで使い尽くした存在が、天下無双の3ピース・バンド、ザ・ポリスなのだと思う。

そして、ほのかに哀愁を漂わせながら淡々と演奏される最終曲「暗黒の世界」に耳を傾けていると、ロック・バンドとしての使命を全うした3人が手を取り合い、ニヒルな笑みを浮かべながらカーテンコールに応えている場面が目の前に浮かんでくるような気さえする。

最高傑作と称される最終作『シンクロニシティー』の布石なんていうポジションだけでは到底収まりきらない溢れるような魅力に満ちた『ゴースト・イン・ザ・マシーン』が、世評や時代の経過に埋もれることなく聴き継がれてゆくことを切に願う。
 

(曲のタイトルはアナログ・レコードの解説書によります)

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