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桑田佳祐とMr.Childrenが巡り合った時

いま世界に溢れるのは笑顔だけではないけど

青山学院に通ったことを誇りに思っている。そこで出会えた(牧師や教授に限らない)多くの人から、いくつもの教訓や叱責、そして慈愛あふれる言葉を授けられたからだ。そして先達に、偉大なるアーティストであるサザンオールスターズ、その多くの楽曲(作詞・作曲)を手がける桑田佳祐氏がいるからでもある。

もちろん私は、サザンと直接に関われたわけではない。それでも今、そのころに知り合えた人たちで構成されているLINEのトークルームを開く時、サザンの「希望の轍」が流れるのだ。いま私たちは、物理的には

<<遠く遠く>>

隔てられている。この世界情勢を考えると、また各々が日々、歳を重ねていることを考えると、そう簡単に再会の機会が与えられる保証はないわけで、大袈裟に言うならば、私たちは<<離れゆく>>関係性にあるのかもしれない。

それでも、共有できるはずの<<忘られぬメロディライン>>もあるはずで、ある種の<<希望>>は今なお残されている。そう私は考えている。

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私の在学当時、LINEというものは、まだなかった。インターネットの黎明期であったとも考えられる時代であり、メールというものさえ、私には目新しいものだった(大学の講義で、私は初めて全角と半角の使い分けなどを知ることになる)。トークルームが人と人を繋ぎ、そこに設定されたBGMが同種の感懐をもたらすという未来を、少なくとも私は思い描けていなかった。

それでも、当時の人間関係が希薄であったとは全く思っていない。人を結びつけるのは「結びつきたい」という意欲であり、そうした意欲を引き出してくれるのは、その時代ごとに流れているメロディーであると言えると思う次第だ。

サザンの「TSUNAMI」に送り出されるように高等学校を巣立った私は、青山学院在学中に「HOTEL PACIFIC」や「この青い空、みどり〜BLUE IN GREEN〜」といった、優れた楽曲を聴くことになる。現代が平和である(あるいは安全である)と言い切れないように、当時も幾分、不穏なムードが私たちを取り巻いていた。だからこそ「この青い空、みどり〜BLUE IN GREEN〜」に込められた、平和を希求するような桑田氏の歌声は、あの時代を眩しく照らしたのだと思う。

<<過去を憂い嗚呼世代を超えて 人間の夢は叶うだろう>>

あの頃に私たちの願った、すべての<<夢>>が叶ったかは、何とも言い難いことだと思われる。サザンの歌うとおり、<<眠らぬ都会の人生は暗い>>のも確かなのだとは思う。いま青山学院に通う人のみならず、そして<<都会>>に住む人のみならず、もしかすると抱いているのかもしれない、眠りを浅くするほどの不安が訪れるのも、若かりし私には予測できないことだった。

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もう少し時間を巻き戻してみる。私が青山学院に入学しようと決意する、その何年も前に、桑田佳祐&Mr.Childrenという名義で「奇跡の地球」という楽曲がリリースされている。青学で私を待っていてくれた先達の多くは、その歌詞を、恐らくは複雑な気持ちで受け止めたのではないかと察する。当時、世間知らずの子どもだった私には、桑田氏の思想の奥深さを理解することはできなかったのだけど、これは不思議な楽曲だ。何しろチャリティーソングだというのに、こんなセンテンスが含まれるのだ。

<<壊れゆく No,no,no,no,brother 奇跡の地球>>

本曲はエイズの患者を救済するための募金活動の一環として生み出されたものである。そこに込めた桑田氏の想いを、いま私たちが直面しているパンデミックを乗り切るための羅針盤とすることは、恐らくは的外れな試みではないだろう。

桑田氏とMr.Childrenは、何ゆえに<<壊れゆく>>という悲観的な言葉を放ったのだろうか。ことによると、それは「このままではいけない」という危機感を示すためだったのかもしれない。桑田氏は、あっけらかんとした詞や、ユーモアに溢れた詞も書きつづれるアーティストである。その桑田氏が、ただ悲しいだけの楽曲を生み出すはずがないと、今になって私は考える。本曲のなかにも、何かしらの形で<<希望>>は刻まれているはずだ。

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なかなか<<希望>>は見出せない。「奇跡の地球」には、悲しいフレーズ、センテンスが散りばめられている。それどころか<<希望>>を否定するような発信さえ見受けられる。

<<夢や希望にすがる時代は過ぎた>>
<<闇を奏でるロックンロールバンド>>

桑田氏(その所属するサザンオールスターズ)やMr.Childrenが<<ロックンロールバンド>>なのだとしたら、彼らは自嘲気味に、自らが奏でる音が<<闇>>でしかないと歌ったのかもしれない。そうなのだとしたら、あまりに悲しすぎる。あるいは私たちは「奇跡の地球」で歌われる<<黄昏が空間に映した異常な未来>>を迎えているのかもしれない。それでも私が発見したのは、たしかに受け止めたのは、下記の部分である。

<< 生命のTruth >>

いま世界から、確固たる保証は得られないのだとしても、純度の高い<<希望>>は探しがたいのだとしても、こうして私は<<生命>>をもって、キーボードを叩いている。この駄文を読んでくれる人が、ひとりくらいはいるかもしれず、その誰かが<<生命>>をもっていることも真実だ。私たちは今のところ、少なくとも今のところは、この<<地球>>に生きている。

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桑田氏の楽曲から、悲観的な雰囲気を一掃するような、私の考えている深刻にすぎるかもしれないことを優しく笑い飛ばすような、痛快な歌詞を引用したいと思う。

<<適当に手を抜いて行こうな>>
<<時折道に迷うのは冗談>>

「それ行けベイビー!!」で聴くことのできる桑田氏の声調、歌詞に含まれる<<適当>>という単語。あるいは、それこそが、いま世界が求めているものなのかもしれない。<<適当>>というのは、好き勝手とは違う意味なのだろうと思われる。無理をしないでね、肩に力を入れすぎないでね、ゆっくり進んでいこうね、そんなメッセージを桑田氏は、飄々と届けてくれているのかもしれない。

それでも桑田氏は、さりげなく、こんなことも歌うのだ。

<<命をありがとネ>>

※<<>>内はサザンオールスターズ「希望の轍」「この青い空、みどり〜BLUE IN GREEN〜」、桑田佳祐&Mr.Children「奇跡の地球」、桑田佳祐「それ行けベイビー!!」の歌詞より引用

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