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私が思う、この世で1番楽しい時間

東京スカパラダイスオーケストラ 30周年イヤーの閉幕に寄せて

私にとって、この世で1番楽しい時間は東京スカパラダイスオーケストラのライブである。それは初めて彼らのライブに行った時から変わらず、さらにその楽しい時間は幾度となく最高を更新している。いつだって「最新のスカパラが最高」なのだ。

昨年10月、メキシコの音楽アワードでスカパラはベストパフォーマンス賞にノミネートされ、見事大賞を受賞した。好きなアーティストが海外で評価された事実も嬉しいが、それが「ベストパフォーマンス」だったのが何より嬉しかった。

なぜ、こんなにもスカパラのライブは楽しいのか?

スカパラのライブに行くとディズニーシーのビッグバンドビートを思い出すことがある。私は斜に構えて見てしまうところがあるので、あれだけ大勢の演者がいれば1人くらいは手を抜いている瞬間もあるだろうと隅々まで見回したことがあるのだが、端の方で演奏しているキャストも常に最高の笑顔で演奏していたのが印象的だった。
スカパラのメンバーは9人だが、誰1人として演奏中に気を抜いているメンバーはいない。自分が演奏しない場面でも踊っていたり客席を煽ったり。
彼らのスケジュールを見ていると2日に1回程のペースでどこかでライブをしている。それなのに、いつだって我々観客と同じく新鮮な気持ちを持ってライブを楽しんでいるのが伝わってくる。

また、ライブ中、他のメンバーの演奏に聴き入っている姿も印象的だ。
あれだけ多くのライブ日程をこなしていれば、リハなども含めて散々聴いているはずなのに、他のメンバーの演奏を聴いている姿もいつだって新鮮である。
そのことが如実に現れていると思うのが、上原ひろみをfeaturingした曲『水琴窟』だ。スカパラのワンマンライブでも度々演奏されており、キーボードの沖がソロを弾く場面は圧巻である。また、その時の沖を見つめるメンバーの視線は、まるで客席のことなど忘れてしまったかのように沖に釘付けである。曲が盛り上がる終盤では客席を煽りつつ沖のことを誇らしげに見つめ、鼻高々といった様子なのだ。

このようにスカパラ自身がメンバーのことをリスペクトしており、全力で楽しんでいる故に我々も否が応でも楽しくなってしまうのだと思う。

そして更に、メンバーは我々観客を全力で煽ってくる。
これはインタビュー等で度々語られていることだが、スカパラのライブでは客席で踊っていない人がいるとその方が目立つので、その人を踊らそうと全力で盛り上げるという。
また、スカパラの煽り番長といえばギターの加藤だろう。私が以前、友人とスカパラのライブを観に行った時、その友人はスカパラのメンバー構成を知らなかったので、ステージ中を動き回る加藤を見てギタリストが2人いると思ったそうだ。あれほどまでに会場全体を見渡し、隅々まで文字通り全身を使って客席を煽ってくるギタリストは他にはそういないと思う。

彼らの徹底したエンターテイナー精神もライブの楽しさを増す一因である。
今や彼らの代名詞と言っても過言ではない「Paradise Has No Border」も、発表当時のライブでは9人それぞれがソロを演奏し、言うなればメンバー紹介曲という感じだった。それがその年の後半のツアーでは、ゲストを迎え入れる登場曲になり、その後もフェスやテレビでこの曲が演奏されると”今日はどんなゲストが登場するんだろう?”とドキドキしたものだ。
さらに、数年前からはテナーサックスのGAMOが「どこが1番盛り上がってるんだー?」とメンバーを引き連れ会場中を盛り上げる姿がフェス会場やテレビでも印象的だ。(この演出は観客のいないテレビ収録などでも「どのカメラが1番盛り上がってるんだー?」とセリフを替えて行われるから驚いてしまう。)

このように同じ曲でも数年の間に演出を変え、進化させているのがスカパラの飽くなきエンターテイナー精神を表していると思う。

「世界中がもっともっと僕たちの音楽で今までよりハッピーになるんじゃないか、もっと笑顔が増えるんじゃないかっていう気持ちがすごくあるので、国内海外問わず、色んなところでスカパラの音を鳴り響かせたいんだ」

これは25周年記念アルバム『The Last』の特典映像の中でドラムの茂木が語っていた言葉だ。
最初にこの言葉を聞いた時、正直、私は”いい歳した大人が夢みたいなことを語ってるなー”と思ってしまった。何故なら、まだその当時はスカパラのライブを体感したことが無かったから。しかし、スカパラのライブに足を運ぶにつれ「この人たち本気だ…!」とこの言葉の意味を噛み締めるようになった。そしてその気概はファンならずとも伝わるのだと思う。

インタビュー等で「印象に残っているライブは?」と聞かれたメンバーがよく挙げているのが2003年にフランスで開催されたLes Eurockéennes(ユーロキーンズ)だ。スカパラのことを知らない外国人が集まるアウェーでの演奏で最初は100人くらいだった観客が、曲が進むにつれて増えていき、最終的には数万人集まったという。

状況は異なるが、私も似たような光景を目にしたことがある。
それは2018年に日本武道館で行われたHot Stuff Promotionの40周年のイベントで、共演はTHE BACK HONE、King Gnu、ポルカドットスティングレイだった。
スカパラはトリでの出演だったが、ライブが始まった当初は空席がちらほら。席を立たずに見ている観客もいた。
そんな状況に、ライブ冒頭のMCではバリトンサックスの谷中が空席があることを本気で悔しがり、茂木は「まさかこんなに楽しい夜になるとはって思うようなライブをします」と宣言。その宣言通り、中盤に演奏された「Paradise Has No Border」の盛り上がりも凄まじく、徐々に踊る人が増えていき、アンコールでは座って見ていた観客も総立ちになって踊っていた。
まさに有言実行のパフォーマンスをするスカパラを見て、こうして目の前の1つ1つのライブに全力で取り組む姿で観客を魅了し続けてきたのだと感動したことをよく覚えている。

観客を踊らせるのはスカパラの楽曲と演奏と、そして何より「自分たちの演奏で目の前の人をハッピーにしたい」という思いが客席の一人ひとりに伝わってくるからだと思う。

2019年4月から本年3月31日まで、スカパラは”東京スカパラダイスオーケストラ 30th Anniversary Year”と題して、メンバー曰く、30年間で1番忙しいという怒涛のスケジュールを走り抜けてきた。
彼らのファンクラブサイトで毎日更新されるTODAY’S SCHEDULEに”OFF”という文字が現れることはほとんど無かった。5〜6月にはライブハウスツアー、夏フェスへも過去最多出演し、11月からは全国ホールツアーを開催。その最中に楽曲制作もしっかりと行い、11月には最新のスカパラの魅力が詰まった歌モノ盤とインスト盤の2枚組アルバム『ツギハギカラフル』をリリースした。また、この30周年イヤーの間に桜井和寿、aikoと日本が誇る大物アーティストとのコラボも実現させている。

5月から6月にかけて行われたライブハウスツアー”Traveling Ska JAMboree”では、総勢16組のアーティストと一夜限りのJAMセッションを行った。通常の対バンとは形式が異なり、スカパラとゲストが入り混じってお互いの曲をセッションするというファンにとっては夢のような企画だったが、ゲストアーティストの楽曲をアレンジ、演奏するにあたって、メンバーは「受験勉強してるみたい」と語っていた。30周年イヤーにこのような新たな挑戦をするところがさすがスカパラである。

こうした彼らのアグレッシブな挑戦は、彼らの平均年齢(53歳)を考えるとマインド的にも体力的にも当たり前じゃない、奇跡を見ていると常々思わされる。

先日、3月20日には30周年イヤーの締めくくりとして代々木第一体育館でのツアーファイナルが予定されていたが、新型コロナウイルス感染拡大防止の為に中止となってしまった。
30周年イヤーを共に駆け抜けてきたファンとして残念な気持ちでいっぱいだったが、中止が発表された翌日13日に生中継されたSPACE SHOWER MUSIC AWARDSでスカパラはBEST RESPECT ARTISTを受賞、当日のパフォーマンスで会場は無観客ながらも中継を見ている観客に向けて手を振るメンバーの姿にとても励まされた。
その際、谷中が「今、むちゃくちゃ大変な時代だと思いますけど、色んな作戦で、色んな企画で、楽しませていきたい」と語っていたが、その言葉通り、翌週、代々木第一体育館でのライブが行われる予定だった3月20日には生配信ライブTOKYO SKA JAM”8″を開催し、まさに我々ファンとスカパラが[ワイヤレスで繋がっている]という実感を与えてくれた。

どんな状況にあっても圧倒的なポジティブパワーと行動力で観客を笑顔にしてくれるスカパラ。さまざまな困難に遭いながらも30年間歩みを止めなかったスカパラの強さを、30周年イヤーの最後にあらためて見せつけられた気がしている。

東京スカパラダイスオーケストラ 30th Anniversary Yearの締めくくりに、最大の祝意と感謝を込めてこの文章を投稿させて頂きたい。
そして1日も早くこの事態が収束し、また”この世で1番楽しい時間”を過ごせることを祈っている。

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