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悔しさや妬ましさをバネに「個」を光らせる[Alexandros]

自分だけの「かっこよさ」を披露した18祭

新型コロナウイルス拡大に伴う自粛ムードの中、自宅でYouTubeのミュージックビデオ(MV)を観ることが多くなった。
お気に入りのアーティストに関連して、他のアーティストの曲も流れてくる。初めは特に思い入れはなかったのだが、いざ鑑賞してみると時間を忘れてのめり込むほど感動する曲に出会うこともあった。それが、[Alexandros]の曲たちだった。これまでは、おそらく最も有名な曲といわれる「ワタリドリ」くらいしか知らなかったのだが、日本語に英語のフレーズが混じった難解な歌詞、胸に響くハイトーンな歌声とサウンドに惹かれ、彼らの曲をどんどん聴いていった。

そして彼らの曲がたまたま画面で流れていた3月18日の夜、「緊急生配信![Alexandros]ライブ無くなったからSP」が始まった。この日に予定されていたライブ、彼らの母校である青山学院大学での公演が見合わせとなったことを受けての配信だという。メンバーが出演し、リアルタイムのリスナーの反応を楽しみながらほっこり心温まるトークを繰り広げる。過去のライブ映像の紹介、出演した番組の貴重映像の配信、新しいアーティスト写真の発表、ベストアルバム延期の発表もあった。そのような偶然もあって、[Alexandros]をよく聴くようになった。
 

さらに数日後の3月23日、昨年12月にNHKで放送された「18祭(フェス)」のライブ映像が公開された。
18祭とは、17歳から19歳の”18歳世代”の若者と、アーティストが共演して創り上げる企画である。一夜限りのステージだ。
18歳世代から応募する際のインタビューで、作詞作曲を担当する川上洋平(Vo. Gt)さんは、

”自分はかっこいいと思っているもの、世間や周りの近しい人が認めなくても、地味でも、自分ではかっこいいと思っているものを送って欲しい、かっこいいものを創りたい”

という旨を語った。
 

そして3月23日、数ヶ月経ってから公開された、18祭のライブ映像。
彼らが「0.5」と呼ぶInstrumentalと、応募動画を元につくった「Philosophy」の2曲。公開にあたり、川上さんは

“普段より希望が見えにくくなっているかもしれない今だからこそ
もしよかったら是非このパフォーマンスを観て欲しいと思います。
状況は全く違いますが、手探りの10代の若者達が希望を持ちしぶとく生きてやると叫んでいるパフォーマンスです。少しでもいつもの元気を取り戻してもらえたら幸いです。洋平”
-バンドの公式Twitterアカウントalexandroscrewのツイートより引用

とコメントを寄せている。

前半の「0.5」では、[Alexandros]の奏でるロックサウンドを背景に、18歳世代の若者たちが、文化芸術・スポーツにおける各々の特技を巧みに披露する。プロの目から見れば荒削りなところはあるかもしれないが、とても緊張するであろうこの大きなステージで、彼らが真剣に披露する姿に心を打たれた。夢を持って己の技術を磨き、懸命に取り組んできたということが想像できるのだ。そのような姿は、沈みがちな今のこの社会情勢に希望をもたらしてくれる。[Alexandros]と18歳世代の若者がそれぞれ0.5ずつ埋め1にする、見事なコラボレーションだ。
 

そして後半の「Philosophy」。夢を持っていても周りには無理だろうと言われたり、つまずくこともある、でも自分にしか見えていないものがあるから、見返してやる、悔しかったという気持ちを大切にしていいんじゃないか、そういう想いを込めた、と川上さんは語る。

“何もかもが光って 妬ましく思えた
あの夜 僕はどうしても
笑えずにいたんだよ”
-Philosophy

[Alexandros]は今年でデビュー10周年だが、デビュー当時、彼らは26,27歳。バンドにしては遅咲きなのだろう。大学在学中にはデビューできず、卒業後は4人ともサラリーマンをしていたそうだ。その間、社会の、そして大人の世界の厳しさを感じただろう。周りのアーティストと比べると、年齢は自分たちより下でも、自分たちよりもたくさんの観客を集めて盛り上がるステージを観て悔しい思いもしてきただろう。
このような、バンドマンとしては珍しくて苦い経験があるからこそ響く歌詞だと思う。

私も自分の経験を思い返してみると、私にとって身近な人が、何か難しい試験に合格した、スポーツで良い成績を収めた、などの喜ばしい報告を受けても、笑えなかった。むしろ、悔しさや焦り、自分に対する劣等感といった、喜びとはほど遠い感情を抱くことが多く、心から喜べなかったのだ。

I am NOT afraid
I am NOT afraid to say
I got my soul I’m ready today
-Philosophy

最初に出てきたこのフレーズでは低い声で、力をためるように歌う。それが後半になると1オクターブ上げ、高らかに爆発するように歌い上げる。日が当たらず、周りに認められない時でも陰ながら努力を続ける。いつか見返せることを信じているから、そういう心を持っているから、今日という日を恐れなく迎えられるのだ。

何もかもが光って 妬ましいと思ったら
その想い 忘れないで それ以上に光ればいい
マイナスの感情は
マイナスだけじゃないよ
-Philosophy

勉強でもスポーツでも、上から何番目と順位をつけられることはあるし、よりレベルの高い世界に上り詰めて結果を出す人はいる。仕事においても、周りがばりばりこなしていると、数値に現れなくても自分の出来なさを痛感することもある。美術や音楽といった芸術の分野は勝負するものではないと思うが、他の誰かがつくったものにスポットが当たり観客を取られてしまうようで、悔しく、妬ましい。周りの活躍を横目で見ていると、その人を羨ましく思い、その輝きに自分が埋もれてしまうことを憎む時すらある。

一緒に笑って喜べるのがプラスの感情だとしたら、こういった悔しさや妬ましさそれ自体は、マイナスの感情なのかもしれない。
しかしそのマイナスの感情は、それだけ強いバネとなって高いところにいける可能性を秘めている。悔しさや妬みがあるからこそ生まれる闘争心、己の技術を研鑽しより高い技術を身につけ、光らせる。それは決して、マイナスなことではない。そこでへこたれるのではなく、その上を行く、それ以上に光るという強い気持ちを奮い立たせてくれるのだ。

誰もが束になって 僕をどう批判したって
何事もない顔して 見返せばいいのさ
-Philosophy

他人は、失敗ばかりの自分をかっこいいとは思わないだろう。そんなの無理だと馬鹿にされ、見向きもされないことだってある。それでも自分がかっこいいと思うなら貫けば良いし、いつかその人があっと目を見張らせるような輝きを見せればいい。

僕は僕でしかない
Yes I know I’m right
-Philosophy

自分が正しいということは、他の誰でもない自分自身が一番よく知っている。悔しさや妬ましさをバネにさらに光ること。批判されても、自分がかっこいいと信じて打ち込む姿は、自分だけのかっこよさだと思う。
これは、18歳世代に限らず何かに打ち込んでいる全ての人に向けて歌われたメッセージであり、[Alexandros]自身が数多くの傷や困難を乗り越えて生まれた曲だと思う。彼ら自身が世界一になることを見据え、本気でナンバーワンを目指しているからこそ伝わってくる熱さだ。「個」を大切にする、自分だけのかっこよさというと「オンリーワン」という言葉が思い浮かぶのだが、それは各個人の世界における一番、単に勝ち負けではない「ナンバーワン」ではないだろうか。

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