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不安に満ちた世の中に灯される光

「またみんな生きて会いましょう」米津玄師の言葉に込められた生きる力

 新型コロナウイルス感染症が拡大していくなか、唯一の楽しみが春からのドラマ『MIU404』だった。なぜなら主題歌が米津玄師だからだ。

 ツアーHYPE も延期や中止。延期公演すら難しいのではないかという不安。そうした闇の中に、灯された一本の蝋燭の火のように、大袈裟かもしれないけれどファンにとっては新曲は「生きる希望」だった。どんな曲だろう。テンポの速い曲らしい。『感電』。曲名を聞くだけでわくわくしてくる。早く聴きたい。きっと米津さんなら、私達の期待以上の、いや、期待や想像を遥かに超えた、驚くような感動する曲を聴かせてくれるだろう。だからその新曲を聴くまでは絶対に死ねない。毎日、頑張って感染予防に努める。そう意気込みながら、新曲を聴ける日が来ることを心待ちにしていた。
 
 

 けれども、その希望は先延ばしとなった。感染拡大を予防するため、ドラマの製作と公開が延期になったからだ。
 
  
 

 これから、何を楽しみに毎日を過ごしていけばいいのかわからなくなった。テレビをつければ感染者数と死者の報告。恐怖につけこんだ詐欺やデマ。国同士の責任の擦り付け合い。感染者が特定され差別される。真実も嘘も全てが不安でしかなかった。
 そして私自身は何がなんでも働かなければいけないという現実。自分が感染するかもしれない、大切な人を失うかもしれないという恐怖。でも自分を奮い立たせて働かなければいけない。そんな日常で音楽を聴く心の余裕すら無くなっていた。
 けれども、ようやく寝る前に、布団の中で音楽をそっと聴いてみる。その瞬間、日中のピンと張りつめた糸が緩んでいくのがわかる。米津さんの温かくて優しい歌声。穏やかなメロディも激しいリズムも、前向きな明るいポップなメロディも、どの曲を聴いても涙がホロッと枕に落ちた。
 
 
 

『どんな今も呑み込んでいけば過去に変わっていく 進む方はただひとつ いつだってさ この退屈をかみちぎり僕は 駆け抜けて会いにいくんだ あのトンネルの先へさ』(米津玄師 Undercoverより )
 
 

 新曲を聴くことも、HYPE で米津さんに会えることも、ずっとずっと先のことかもしれない。だけど、きっといつかは聴くことができるはずだ。堪え忍ぶしかない。今を呑み込んでいけば、過去に変わっていくんだ。進む方はただひとつ。私達は頑張って「生きていく」しかないんだ。
 
 そうして眠りにつき、朝が来たらまた頑張れた。
 
 
 
 

 前回のツアー『脊椎がオパールになる頃』で米津さんは言った。「死ぬまでずっと音楽をやり続けたい。みんな死ぬまでついてきてくれたらな…。だからみんなで楽しく生きていこうね。」と。米津さんのこういうところがとても好きだった。「死」なんて暗いワードは、他のアーティストはライブでは言わないだろう。でも米津さんはいつだって言っていた。「みんな死なないで生きていこうね」って。「いつか人は死ぬ。その時まで毎日を大切に生きていこう」って。それは雑誌のインタビューや、歌詞にも込められていた。
 
 
 そしてその言葉のあとに、『Nighthawks』を歌ってくれた。あの日、こんな未来が来るなんて誰もが想像していなかっただろう。自分が死ぬかもしれないとか、大切な人を失うかもしれないという、恐怖に怯える日が近いうちに来るなんて、誰も考えていなかったと思う。米津さんだってそうだっただろう。
 
 
 いや、米津さんは、本当はそんな日が来ることをどこか感じていたのかもしれない。それは米津さんの作る音楽から想像できる。
 
 
 
 

『何もないこの手で掴めるのが残りあと一つだけなら それが伸ばされた君の手であってほしいと思う』
『もしも このまんま明日が来ないならどうしようか? それなら笑って過ごしたい 君に会いに行くよ』(米津玄師 Nighthawks より)
 
 

 そう。このまま、明日という元気な明るい未来が来ないかもしれない。そしてこの手で掴めるのがあとひとつだけだとしたら。私は米津さんの音楽を聴きたいと思った。もし今回の感染で、もう二度と音楽を聴くことができなくなるのなら、音楽を聴く力すら奪われて怯えて過ごすくらい なら、美しい音楽を聴いて過ごしていきたいと思った。どうせ失くなるのなら、笑って過ごしたい。大切な人と大切に毎日を過ごしたい。そう前向きに考えることができた。
 
 
 

 そして先日、米津さんが久しぶりにツイートした。

「自分は日々小ぢんまりと音楽を作っています。みんなまた生きて会いましょう。」
 
 
 それはライブでよく言っている、いつも通りの言葉だった。けれども今この時、「生きて会いましょう」という言葉がいつも以上に重く深く心に刺さる。
 そして米津さんも今、ひとりで音楽を作っている。孤独だし、不安に怯える日もあるかもしれない。けれどもきっと、前向きに、音楽を私達に届けようとしてくれているに違いない。
 

『誰より独りでいるなら 誰より誰かに届く歌を』(米津玄師 TEENAGE RIOT より)
そう歌っているように。
  
 
 
 
 米津さんへ。
あなたの音楽が届くことをとても楽しみにしています。あなたの音楽を聴き続けるために、生き抜きます。この怖い世の中でも、光があることをいつもあなたの音楽から教わっています。いつだって、闇に光を灯すことを、暗さのなかにも明りがあることを、弱さを知ることで強くなれることを、死のなかに生きることを教えてくれています。今の不安に満ちた世の中にも、光は必ずあると希望を持つことができます。生きないと、ですね。生きてまた米津さんに会いに行きます。だから米津さんも、元気でいてくださいね。

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