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あの日の光景がいつか未来のBUMPに届いてほしい

aurora arkの魔法

今夜は月が大きく見えるらしいのでベランダで月見をした。
最近は夜に出歩くことがない。少し肌寒いが久しぶりに感じる夜の空気は心地良かった。この感じ、あれを思い出す。ライブに行って、熱くなって、終わって外に出て感じる涼しい心地良さ。
あの日も月が綺麗だった。
ボリュームを下げてシャッフル再生していたスピーカーから「流れ星の正体」が流れた。
「aurora arc」は魔法みたいなアルバムだ。曲が流れた途端、ツアーの光景を鮮明に思い出せる。
あれから書き留めてはいたがなんとなくそのままにしていたものを、やっぱり投稿しておこうと思う。
今宵は月が綺麗ですね。
 

2019年11月4日、東京に向かう新幹線の中で私は緊張していた。
BUMPのロゴが入ったリュックを開け、チケットを何度も見た。
チケットは確かにあるのだ。
私にツアーファイナルのチケットがやっと用意されたのは、ライブのわずか2日前だった。
イープラスから注釈付き指定席の当選を知らせるメールが届いても、チケットを発券した後も、私には実感が沸かないままだった。
本当に入場できるのか信じられず、緊張していた。

7月12日の初日を含め、私はツアー「aurora ark」に幸運にも何公演か参戦することができた。
だからこそどうしてもファイナルを見届けたかった。
7月12日、ボーカルの藤原基央はMCで「初日なのにファイナルの気分だ」と笑った。
それほど今回のツアーは、メンバーが後にラジオで「最高のツアーができた」と振り返った通り、私にとっても最高のツアーだったのだ。

それにしても、今年もツアーをやってくれるとは思っていなかった。
というのは、BUMPは2017年9月から2018年3月までツアー「PATHFINDER」で全国を回っていたし、その後も怒涛の新曲発表が続き、年末にはCOUNTDOWN JAPANにも出演した。
BUMP尽くしの1年だったのに、年が明けて3月、アルバムのリリースと共にツアー決定が発表されるとは、私は少しも予想していなかった。
 

予想していなかった私は、2018年12月28日、BUMPのライブはしばらく見納めになってしまうと思いながら、COUNTDOWN JAPANに参戦していた。
前日の夜には千葉に着き、ホテルに1泊して、私は当日朝から色んなアーティストのライブを楽しんだ。
体力の配分も考えず、見たいライブを見て、汗をかいたら着替えて、疲れたら休憩をして、各々好きなアーティストのグッズを身に着けた人たちを眺めた。
その時の私と同じように、BUMPのグッズで身を固めている人がたくさんいた。
「BUMP1回見てみたかったから今日出てくれてラッキー」といった会話も聞いた。
トリはBUMPを見るか、別のライブを見るかタイムテーブルを見ながら話している人もいた。
あの人たちは本日最後のライブに誰を選ぶのだろう。
少し気になりながらも、その場を離れて次の目当てのステージに向かった。

19時を過ぎた。
もうBUMPの出番は間もなくで、EARTH STAGEは身動きが取れないほど人で埋め尽くされていた。
きっとあの中は、BUMPを今日一番の楽しみにしていた人もいれば、一度見てみたかった人もいて、ライブへの期待値は様々だったと思う。
そう感じていた私はライブ中、勝手に誇らしかった。
客席は様々な熱気がぶつかり合って荒々しいほどだった。あの場はBUMPが一番の楽しみだった人だけが集まっていたのではない。
一度見てみたかったと(言葉は悪いが)軽い気持ちの人もいたはずだ。
しかしライブが始まってからのあの場の熱気はものすごかった。
あれだけの人数が、BUMPのライブに興奮し、熱狂しているのは明らかだった。
私は勝手に誇らしかった。
私の大好きなバンドは、こんなにかっこいいんだぞ、と、勝手に誇らしかった。

余韻冷めやらぬまま幕張メッセを後にし、駅で電車を待っていた。
7分ほど時間があったが、私はスマホを触る気にもならず、イヤホンを付ける気にもならず、ポケットに手を突っ込み、鼻をすすりながら電車を待った。
駅だからそれなりの人はいたが、ついさっきまでの人の圧が嘘のように、周囲はスカスカしていた。
電車を降り、ホテルまでの道を歩きながら、私は自分がまた鼻をすすっていることに気がついた。
寒いんだろうな、と思った。
寒いとは感じていなかったが、ライブの後で麻痺しているだけで、体は冷えているし、疲れているのだろう。藤君も「風邪を引かないように」と何度も言ってくれていた。

「冬が寒くて良かったなんて歌ってるけど、冬が寒くて良かったなんてことはないからね。あれは一緒に過ごす相手がいればそう思えるっていう、惚気の唄だよ」

「スノースマイル」を自虐的に交え、何度もあたたかくして寝るように言って、BUMPのライブは終わった。
冬が寒くて良かったなんてことはないと言われてしまえば元も子もないが、それでも「スノースマイル」のおかげで、冬がただ寒くて嫌なだけのものになっていないほど、私は冬に聴く「スノースマイル」が好きだ。

しかし、確かに風邪は引きたくない。
藤君の言うとおり、ホテルに着いたらすぐにあたたかいお風呂に入り、あたたかくして寝ようと思った。
鼻をすすりながらエレベーターに乗り、鍵を開けて部屋に入り、荷物を置いてベッドに座った途端、涙が止まらなかった。
自分がこらえていたのは寒さではなかったことはわかったが、その理由はわからなかった。
BUMPの音楽が寄り添ってくれているという感覚は、1人になった時ほどよくわかる。
さっきまで使っていたタオルを握りしめたまま、私はBUMPを好きでよかったと、本当によかったと、何度も何度も思った。
 
 

新幹線が東京に着いた。
電車を乗り継ぎ、初めて訪れた東京ドームはBUMPのためだけにフラッグやフォトブースやグッズ売り場が設置され、BUMPが好きな人たちばかりで溢れ返っていた。
入場の列に並び、無事に入場できても、私はまだ緊張していた。
目が合った係員の方に、席の場所というよりは、チケットに印字されたこの席は本当にありますかと聞きたい気分だった。
案内してもらった通りに進んで席を見つけた。まだ誰も座っていないその席を見て、涙が出そうになった。
 

用意された注釈付き指定席はステージをほぼ真横から見る席だった。
出演者や映像、演出が一部見えづらい場合があると注意書きがあったが、ライブ中一度もそう思うことはなかった。
ステージに立った彼らは東京ドームは広くないと言い、そんなもんかと客席を煽り、そんなもんじゃねぇだろと吠えた。
私はこのツアーの中でこの日一番意識して、ずっとpixmobとリストバンドをつけた腕を掲げ、声を上げて、メンバーに合わせて手拍子をした。
今日がファイナルだからじゃない。
BUMPに受け取ったと、届いたと伝えたかった。
腕を掲げないと、声を出さないとステージ上のBUMPに届かないと思った。特に藤君は目が悪いから。

「俺たちの音楽を見つけてくれてありがとう。」
このツアー中、藤君は何度もそう言った。
ある会場ではリスナーを洞窟の中の松明に例えてくれた。
この曲を書き上げられるのかと思った時、ライブでの光景を思い出し、未来で聴いてくれるリスナーの存在を思い、絶対に書き上げてやると思ったと言ってくれた。
ある会場では聴いてくれる人がいるとわかったから、曲を書くのが早くなったと言ってくれた。
曲に生きる意味をくれてありがとうと言ってくれた。
リスナーの存在をそうまで言ってくれる彼らに、私は、いつかまた、この日の光景が未来のBUMPに届いてほしいと、そして、BUMPにとってリスナーの存在がいつまでもそうであってほしいと願わずにはいられなかった。

これだけの人数を前にしても、彼らはその中から1人を見つけ、その1人に向けて曲を届けてくれる。
1人に向けて惜しむことなくずっとエネルギーが注がれていたが、BUMPからは何も減らなかった。
それどころか、ステージを真横から見ていた私には、客席から掲げられた手や、歓声やシンガロングの声を受けて、彼らの演奏はまた熱を帯びていくように見えた。

ステージからほんの数秒目を離して客席を見渡した。客席の視線や熱量はステージ上のBUMPに一直線に注がれている。
COUNTDOWN JAPANの時に感じたような荒々しい熱気ではなく、もっとやわらかい、じっと見ていたら見えそうな、弧を描いてステージまで伸びていくようなそれを何だろうと考え、あ、aurora arcだ。と思った。
私はあの日、東京ドームの天井にaurora arcを見たと思っている。
 

アンコールの3曲目は「スノースマイル」だった。
まだ雪が降るような気温でもなく、冬ともいえないその日に演奏された季節外れの「スノースマイル」を私は噛み締めて聴いた。
が、ふと、冬が寒くて良かったなんてことはないと話したステージ上の姿を思い出し、思わず少し笑った。

「俺のバンドかっこいいだろ!」

少しだけ気を取られていた昨年の年末の光景は、いきなり叫ばれたこの声に押しやられた。
いきなり聞こえたその言葉が、他の誰でもないBUMP OF CHICKEN(の1人)が言ったものだとわかった時、私はステージから見えるはずもないのに何度も頷いていた。
誇らしかった。
私の大好きなバンドは、こんなにもかっこいい。
 
 

初めて訪れた東京ドームはBUMPが好きな人たちばかりで溢れ返っていた。
駅への道を案内する声と看板を目印に、自分の現在地を確認しながら私はまだここにいたいような、早く1人になりたいようなどっちつかずの気持ちのまま、人の流れに身をまかせて歩いた。
ツアーが始まった頃はTシャツ1枚で平気だった夜は、この日はもうライブの後で麻痺していても肌寒かった。
またすぐに冬がやってきて、私は今年も「スノースマイル」を聴くのだろう。
BUMPと過ごした1年がまた繋がっていく。
 

私は今も、aurora arkの余韻から抜け出せない。

 

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