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ヴァン・ヘイレン再ブレイクの予感

デイヴ・リー・ロスの大開脚ジャンプに見た輝ける未来

映画『ボヘミアン・ラプソディ』の大ヒットによるクイーンの何度目かの再ブレイクを目の当たりにした時、ふと頭に浮かんだのがヴァン・ヘイレンだった。ジャンル分けすれば異なるカテゴリーに属するバンドだと思うのだけれど、”日本人好みのハード・ロック”というくくりにすれば、ほぼイコールになるのではないだろうか。

実際に体験したわけではないのでどこまで本当かは定かではないが、クイーンの良さを最初に認めたのは本国イギリスではなく日本だったという話は有名で、そのエピソードが映画に反映されていないのは納得いかないといった熱狂的な批判が出るほどに、ロック好きの日本人にとってクイーンは特別な存在だと言える。ならばヴァン・ヘイレンはどうだろうか・・・残念ながらクイーンほどのポジションは獲得できていないように映る。しかし、今後何かきっかけさえあれば第二のクイーンとなれるポテンシャルは十分に兼ね備えたバンドじゃないかと僕は思っている。

今から36年前の1984年、洋楽を聴き始めたばかりの僕の耳に大いなるインパクトを伴って飛び込んできた曲がクイーンの「レディオ・ガガ」とヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」だった。特に「ジャンプ」のMVによる視覚イメージは鮮烈を極めた。ヴォーカルのデイヴ・リー・ロス(以下デイヴ)が大股を開いて高々とジャンプするスローモーション映像は無性に胸をドキドキさせた。そして、その向こう側には輝ける未来のようなものが見えた気がした。

シンセサイザーを大胆に使い無限の広がりを演出したサウンド・スケープ、人懐っこい満面の笑顔でギターやキーボードを操るエドワード・ヴァン・ヘイレン(以下エディ)、陽性のハスキー・ヴォイスで根っからのエンターテイナーぶりを発揮するデイヴ・・・こんなに明るくて華やかなハードロックはそれまで聴いたことがなかった。そんなブリリアント・ナンバー「ジャンプ」を収録したアルバム『1984』は、今もなおキラメキを失うことなく僕の耳を楽しませてくれる。そう、あの36年前に見た輝かしい未来は幻ではなかったのである。

後にも先にも、ヴァン・ヘイレンのようなハードロック・バンドは存在しない。抜群の声量を持ちながらも高音域を多用せず、どこかコミカルな雰囲気さえ漂うデイヴのヴォーカル、超絶テクニックを駆使しているにも関わらず、暑苦しい自己陶酔型とは異なるドライで超合金のようなエディのギター・プレイ・・・そういった両者の個性の融合によって生み出されるサウンド・カタルシス、典型的な様式美とは一線を画す、頭を空っぽにして浸れるハードロックな音、それこそがヴァン・ヘイレンの存在価値と言えるものだ。

しかし、デイヴが脱退した後にサミー・ヘイガーが加入した新生ヴァン・ヘイレンは、サウンド的なクオリティにおいても、ランキングやセールス面においてもデイヴ体制をしのぐ非常に優れたハードロック・バンドであったにも関わらず、僕にとっては特別な存在にはなり得なかった気がする。それは、デイヴが28年ぶりに復帰したアルバム『ア・ディファレント・カインド・オブ・トゥルース』のオープニング・ナンバー「タトゥー」のイントロ一発で「やっぱ、これだよ、これ!」と思ったことであっさりと証明されてしまった。

さて、デイヴ在籍時のヴァン・ヘイレンにはオリジナル・アルバムが7枚あるのだが、どれか一枚だけピックアップするとすれば、少し迷って4枚目の『戒厳令』を推したい。一般的にはキンクスの大名曲「ユー・リアリー・ガット・ミー」の決定的カヴァーを納めたファースト『炎の導火線』、もしくは、バカテクインストナンバー「スパニッシュ・フライ」を収録したセカンドの『伝説の爆撃機』が代表作として挙げられるのだけれども、彼ら特有の破天荒ぶりを表にさらけ出し始めるのは3枚目の『暗黒の掟』からのように僕には思える。ファーストとセカンドには、そつのない優良新人バンド然としたところがあり、まるで本性を隠して大人しくしている転校生のような雰囲気が漂っている。

そんな彼らの本性を最も体現しているナンバーが、『戒厳令』アナログ盤B面1曲目に収録されている「アンチェインド」なのではないかと思う。イントロで豪快に響き渡る、まるでバイクのエンジン音のようなギター・リフ、そこへ突如「ハーッハッハッハー!」と、人をおちょくるかのようなデイヴの甲高い笑い声がこだまする。この曲を大音量で聴いた時のゾクゾクするような快感を、わざわざ言葉で表現しようだなんて野暮、もう無駄、無駄、無駄である。

僕はこの曲が入っているB面から聴く癖が付いていたので、ずっとこっちがA面だと思い込んでいたくらいなのだけれど、ホントのA面を飾る1曲目「ミーン・ストリート」も相当にヤバい。イントロでフェイドインしてくる、どう弾いたらそうなっちゃうの?ってくらいのイカれたギターと、ドヤ顔で吠えまくるドスの効いたファンキーなヴォーカル・・・これぞデイヴ&エディだけが演出可能な、ヴァン・ヘイレン流ハードロック・エンターテイメント。ロック好きの人は勿論、普段ロックを聞かない人や子供まで理屈抜きで楽しめること請け合いだ。

というわけで、クイーンの次はヴァン・ヘイレン。1984年の「ジャンプ」以来の再ブレイクを僕は独りで勝手に予測している。テレビ、ラジオ、あらゆる媒体で重宝され、学校の運動会や文化祭でも定番となり、もはや日本人のDNAに組み込まれてしまっている感のあるクイーンの「ウィ・ウィル・ロック・ユー」や「伝説のチャンピオン」のように、ヴァン・ヘイレンの「アンチェインド」や「ミーン・ストリート」が豪快に流れる日もそう遠くはないはず・・・多分。

(曲のタイトルはアナログレコードの解説書によります)

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